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#エッセイ 記事まとめ

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noteに投稿されたエッセイをまとめていきます。
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2023年4月の記事一覧

ピアスと父と…父のピアスの穴は、わたしが開けました。

「一緒に、あけるぞ!」 そう言って、バツンとわたしの耳に穴を開けたのは、他ならぬ実の父でした。 もともとファンキーでアクティブな父。 自分が、明るい色に自宅で髪を染めたとき、 染粉が余ったからと 「なぁ、塗ってやるって!」 と言って、 今で言うインナーカラーにされたのは、 わたしが中3のときでした。 受験なんておかまいなし。 「余ってるのに勿体無いだろ?」 と笑顔で言い切り、受験を考慮して、ハーフアップの下のところを 有無を言わさずに、染め上げました。 (今で言う裾カラー

言うほどでもない自分なりの習慣の末路。

「人に言うほどでもない自分なりの習慣」として、「辛ラーメンを食べる日々」というものがありました。はい。本当に言うほどのことではありません。でもちょっとだけ書きます。 振り返れば、上京後から家に常備しておくインスタントラーメンは常に辛ラーメンでした。ほぼ20年も前のことです。きっかけは「東京生まれのオシャレな先輩に教わったから」というのが大きかったかもしれません。上京してすぐ、まるで知らない真っ赤な袋麺に心躍り、「深夜のドンキホーテに辛ラーメンを買いに行く」「鍋のまま食べる」

つらいときに思い出せるシーンがありますか?

つらいときに思い出せるシーン つらいときに、思い出せるシーンがあるかどうか。  これはかなり大きなことだと思う。  私にも幸い、そういうシーンがいくつかある。  どれも、たわいのないものばかりだが。  当人だけがしみじみできる昔の写真のようなものだ。 宮古島の台風は十代の暴力 そのうちのひとつは、宮古島で台風を体験した、ある一夜のことだ。  宮古島の台風はすさまじい。話には聞いていたものの、実際に体験してみると、想像をはるかに超えていた。  東京に来る台風はまだ分別がある

たまには停電もいいもんだ。

数日前の夜、オフィスが停電になった。 東京電力さんの問題ではなく、建物の問題である。オフィスの入っている建物でそこそこ大規模な工事をやるらしく、夜9時以降は全館停電となったのである。停電であれば、できる仕事もない。パソコンはバッテリーで稼働するものの、照明がない。ロウソクを立てて仕事するわけにもいかんだろう。ひさしぶりに、夜9時を過ぎる前に帰宅した。 休むのがうまくないぼくは、放っておくと夜の遅い時間まで働いてしまう癖がある。でも、このようにして強制的な停電に見舞われると

神さまのいきすぎる計らい

ライブの合間、みんなでご飯を食べた直後の話です。 田辺さん「酒寄さんって実は食い意地すごいわよね」 私「さっきは悪かったよ」 はるちゃん「何かあったんですか?」 田辺さん「いや、さっきね」 私たちはご飯を買いに、四人でセブンイレブンへ行きました。セブンイレブンではちょうどカレーフェスをしていて、カレーが大好きな私は、 私「決めた。私はフェスに参加するよ」 と、参戦を表明しました。しかし、いざ選ぼうとすると美味しそうなカレーが沢山あって迷ってしまいました。 私(

値段を聞くたび笑う外国人のお客様

お知らせ cakes時代からの本連載をまとめた、林伸次さんの新刊が発売しました! 日本一発信力のあるバーの店主が、人と交わる「わずらわしさ」と「幸せ」、「うまく生きるヒント」をつづった人間関係考察エッセイ。ぜひお買い求めください! 前回の記事はこちら 反省しなければいけない過去の日本人いらっしゃいませ。 bar bossaへようこそ。 先日、海外からのお客さまが、「フルボディの赤ワインをボトルで何か」と注文されました。お席に数本もっていき、「こちらがボルドーのオーメドッ

よくある質問がアツい

よくある質問は、いろいろなサービスや製品に用意されている、意外と便利なもののひとつである。小分けにされた七味くらい、いらないと思っていてもあったら意外と便利なものである。 よくある質問は、一般ユーザーを対象にするものであればどこでもあるといっても過言ではない。それは今回紹介するカルビーも同様で、各製品ごとに、かなり細かくよくある質問がまとめられているのである。 「遺伝子組み換え食品は使っていますか?」や「何歳から食べられますか?」など健康面での質問が多い中、一つの質問が目

ドイツ閉店法 寝坊した日のこと

先日、久しぶりに寝坊をしてしまった。 仕事には間に合ったけれど、ヒヤッとした。 寝坊をすると、ある一日のことを思い出す。 今日は、ドイツの閉店法について。Ladenschlussgesetz 私が学生だった頃、私の住んでいる街の商店街は、土曜日は14時までしか営業していなかった。 因みに、日曜日は営業していない。 学生寮は、街から少し離れたところにあったのでバスを利用していたが、そのバスは土日は一時間に一本しか走っていなかった。 私はある時、予定より大幅に寝坊をしてし

あの値段が気になるから、もう1杯だけ。

私のよく行くバーにはプロジェクターが置いてある。 ワールドカップなどの試合があるとそこに写してみんなで観戦したりするのだ。 スポーツバーというわけではなく、使っていない時もあれば「フジロック流してます!」だったり、BGMは他にかかっているけどアニメや映画などが無音で流れていることもある。 要するにみんなでお酒を飲みながら楽しめるものであればなんでもよいのだ。 先日はWBCを流していた。 そして試合が終わった後、普段は消すことが多いのだがその日はなぜか消音にしてテレビの映像だ

恐れてることの8割くらいは自動ドア説

「はじめてのおつかい」が好きで、みるたびにボロボロと泣いていた。『STAND BY ME ドラえもん』とか、御涙頂戴系の映画をみても瞳カラッカラな僕が、である。 そんな僕が、数あるおつかいのなかでも、ひときわ印象に残っている回がある。 それは、ある女の子と、自動ドアの話だ。 ****** ある女の子が、おつかいにでかける。なにを買ってくることになってたのかは忘れてしまったけど、四苦八苦しながらお店の扉の前まできた。 が、女の子は一歩がふみだせない。とにかく不安でたま

スリーシャンはしたくない

たまに浴室から叫び声が聞こえることがある。 怒りと嘆きが入り交じった息子の声だ。 「なんでこうなるんだよ!」 一体何に対して文句を言っているのか、毎回聞くのを忘れ、長い月日が経っていた。   入浴時、私はとある事が気になっていた。 洗髪にツーシャンを心がけている私は、丁寧に頭皮マッサージを行い、すすぎをし、さあコンディショナーで仕上げようと髪に塗布すると、また頭が泡立ち始めるじゃないか。 我が家の暗黙のルールとして、左にシャンプー、右にコンディショナーが定位置になって

缶コーヒーと私

缶コーヒーを飲むのは決まってランチの後。 これは私が缶コーヒーを飲み始めてからずっと変わっていない。 ルーティンになっている。 きっかけは高校生のころ。 購買の隣にあった自動販売機をなんとなく眺めて 少年Ganmoはふと、 (高校生にもなって缶コーヒーぐらい飲めなきゃだめだよな) という思考にたどり着いた。 今考えると、何を大人ぶっていたんだろうと 若干中二病入ってんじゃないかと笑ってしまうのだが、 当時の自分は真剣にそう思っていたのだから仕方ない。 それまでただの一度

フリーランス主婦、大興奮する。

最近なんだか日常が物足りず、かといって海外旅行に行くような余裕や気力はなく、狭い家の中でひとり、もんもんとしていた。 非日常が味わいたい。ぜいたくっぽいことをしたい。自分を労いたい。だけど不妊治療が常に頭にちらついて散財する気にならない…そのあたりの思考を周回して二週間くらい。「そうだ ホテルのレストランのオーダービュッフェ、行こう。」というキャッチコピーが舞い降りてきた(コピーのコピー)。 調べてみるといろいろあるけど、住んでいる近くにない。車を走らせ、とある高級老舗ホ

エッセイ 脇役の本懐(#この街がすき)

 いつも行くスーパーマーケットへの通り道に、猫を飼っている家がある。みっしりとした毛並みのとらねこで、よく太っている。いかにも幸せそうだ。  大抵その家の玄関周りで紐もつけずに日向ぼっこをしている。触られるのが嫌なのか、近づくとさっと逃げてしまう。  嫌われてはいない、と思う。多分。日向ぼっこに近づかないで、「ねこ、ねこ」と言いながら片手でわしわし宙を掴むと嬉しそうに目をつむる。ちょっと撫でているような気持ちになる。猫からしたら『愚かな人間がまた来たな』と見物しているだけかも