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131.いじめるのも、いじめられるのも、もう嫌だ! オレは〈いじめぬっこ〉になりたい!

ある青年の涙


オレは子どもの頃から、人をいじめてきた・・・。

その理由は、オレ自身が長い間いじめられてきたからだ。

オレは、勉強が嫌いだった・・。
運動も苦手だった・・。
得意なものは何もない・・。
何よりも、食べる事が遅かった。
それだけの理由で親にも怒られ、兄弟からも馬鹿にされてきた。

学校へ行けば、先生からもよく怒鳴られた。
授業中に先生から質問されても答える事ができず、そのたびにみんなに笑われた・・。

オレは、いつの日か、その笑った連中に仕返ししたい、見返してやりたいと思い続けてきた。だが、オレに対するいじめはエスカレートしていった。誰も助けてはくれない、かばう事もない。まわりはみんな笑っている。
俺の唯一残されていた武器は、我慢し続ける事、そして必ず復讐をすることだった。
オレはこの事を生涯忘れる事ができないくらい、悲しく暗い子ども時代だった。

そして、身を守る方法を学んだ。

それが、いじめ側に回ることだった。

いじめる側につく事だった・・。


オレは、みんなをいじめる側に回り、さらに力をつけて行った。
喧嘩に強くなるために空手の町道場に通い、体力と自信をつけて、身体はひとまわりも、ふたまわりも大きくなった。やがて、みなオレを恐れるようになり、オレの言う事を聞くようになった。
それでも、オレはみなをいじめ続け、傷つけるようになった。

だが、やがてオレの周りからは信頼できる友だちも、心を許しあえる友だちが誰もいなくなっていった・・。

とても寂しい・・。

その寂しさを紛らわせるために、中学校、高校でもいじめは繰り返して来た。警察に何度も世話になった・・。

オレは人生そのもののすべてに諦めを感じていた。

社会に出てもなかなか働く場所、オレを受け入れてくれる所もなく、ただバイトと喧嘩に明け暮れ、さらに諦めきった人生を迎えていた。

人間って一体何者だろう?

何のために生きているのだろう?

人生ってこんなにもつまらないものなのだろうか?

今のオレには何もない・・。

友だちもいない、声さえも誰もかけてはくれない・・。
もちろん女友だちだっていない・・。
オレの姿、形はハンサムではない。
どちらかというと人相も悪く、不細工だ・・。

もちろん、結婚生活やあたたかな家庭を願ったときもあったが、現実はそんな生活はありえない・・。

この姿形さえ、親を恨んだ。

待ちゆく人々を遠くから羨ましく眺めるときがたまにはあるが、オレとはまったく無縁の世界に感じている・・。

オレは、人生そのものを諦めた・・。

オレは、いつのまにか三〇代後半となった。

オレの本当の夢は、子どもがいて、「お父さん」と呼ばれること。
仕事が終わり、妻が夕飯を作り、家族で食事をすること。
妻の手料理で、二人でビールを飲み、子どもたちとテレビを見ながら、笑顔で話をすること・・。子どもと一緒にお風呂に入ること、キャッボールをすること、動物園や遊園地に弁当を持って出かけること。
そして、記念写真を撮ること・・。

そして、年老いていくこと、そんな当たり前の生活がオレの最大で最高の夢だった・・。
オレの家族、両親ができなかった、してもらえなかった当たり前の生活だった・・。

オレには、そのような想い出が何もなかった・・。

だから、すべて無理、すべてを諦めた・・。

すべて捨ててきたはず・・。

どうしてこんな人生になってしまったのだろう・・。

わからない・・。

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©NPО japan copyright association Hiroaki


今日、オレは不思議な体験をした・・。

「あのう・・。すみません・・」
「はい・・」

見知らぬ、女性から突然話しかけられた・・。

「お願いがあります・・。この子を・・」


その女性には小さな三人の女の子がいた。乳母車に双子の二歳くらいの子どもと、胸にはまだ生まれて半年ぐらいの女の子の赤ちゃんがいた・・。
「ごめんなさい。この子を見ていてもらえませんか・・」
「えっ・・」
「すみません、そこのトイレに子どもたちを連れて行く間、見ていただけませんでしょうか・・」

信じられない、ありえない話だ。

オレはただ驚いた・・。

見知らぬオレに赤ちゃんを預けるだと、考えられない。この女性は頭がおかしいのか?なぜ?オレはあまりにも突然な出来事に頭の中が真っ白となり、どうしたらいいのか慌てていた。

「・・はい・・」

オレは、どう対応したら良いのかわからぬまま生返事で答えた。その女性が慌てていたことと、とても困っていたようだったからだ。それにしても、こんなことはありえない話だ。

もし、オレが悪さをしたらどうなのだろうか?

そのような心配はないのだろうか・・。

人が人をこんなにも簡単に信用していいのだろうか?

女性は躊躇せず、その赤ちゃんを抱きかかえ、オレに預けた・・。
オレは、困った・・。困り果てていた・・。
もし、泣いたらどうしょう・・。
落として怪我をさせてしまったらどうしょう・・。

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目の前が真っ暗になった・・。

しかし、その赤ちゃんは泣くこともなく、オレの腕の中で笑っている・・。
オレは笑っていたのか、引きつていた顔をしていたのか思い出せない・・。

オレは、人生で初めて、生まれて初めて赤ちゃんを間近で見た。もちろん抱くなんてことも初めてだ・・。オレは、その子を見つめていたら、突然涙が止まらなくなった・・。


ポロポロと零れ落ちる涙が赤ちゃんの頬にあたる。そのたびに赤ちゃんが笑う・・。

とても、小さく、軽く、動物ではなく人間だった・・。

赤ちゃんが笑い続ける。

オレは、作り笑いや、人を嘲笑うことは知っているが、この自然な笑顔と澄んだ瞳、小さな手、足、わずかな髪の毛、小さな頭、その一つひとつを見ていたら、さらに涙が止まらなくなった・・。

これは、悲しさなのか?嬉しさなのか?何かの感動なのか?

オレにはわからない・・。

声が出そうになった・・。

だが、声を出せば赤ちゃんが驚いてしまう。
オレは今まで泣いたことがない。
いじめられても、苦しくても泣いたことはない・・・。
泣いたら終わりだと考えていたからだ。

もう、止める事ができない。

その涙は、あかちゃんの手のひらにあたる。

その掌が動く。オレの涙に触れようとしているのだろうか。
オレの頬に触ろうとする、それとも撫ぜようとしたのだろうか?
それともオレを慰めようとしているのか・・。
あたたかく、やわらかな肌・・。

この子を守りたい!

オレはふと思った・・。

オレは、この子を守ってやりたい、この子の為ならオレの生命をあげてもいい、と感じた。一体この感情は何なのだろう?

なんて、可愛いのだろう!
 
オレのことを恐れない、オレに優しく、オレにあたたかく。オレの人生で今までこのような時があったのだろうか・・。
もう少し、もう少しだけこのままでいい、永遠にこのままでもいい・・。
離れたくない、と思った・・。


「ごめんなさい・・。ありがとうございます、突然のお願い・・」
オレは、引きつった笑顔で、お母さんに赤ちゃんを手渡した。
「オレみたいな変な男によく預けたね・・」

「えっ、何が変なのですか?とても優しそうに見えたから安心していましたよ!」

「・・・」

信じられない言葉だ・・。

オレが優しそう?

安心していた?

見知らぬ男だよ、オレは・・。

「ありがとう・・。抱かせてくれて。とても可愛い女の子ですね・・」
「うわー、ありがとうございます。嬉しいね!きいちゃん、良かったね、褒めてもらって・・」

オレは涙を堪えた・・。

ここでも泣いたら変質者に思われてしまう・・。
「・・じゃあ、きいちゃん。お兄さんにサヨナラしてね・・」
すると、その赤ちゃんは急に泣きだした・・。


オレは、その泣き声が聞こえなくなるまで手を振った。

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この不思議な出来事は一体何だったのだろう?

オレには理解できない・・。

オレは、ふと考えた。
もしかすると、思い出せないが、オレもこのような時があったのではないだろうか・・。
オレを今までいじめてきた人も、オレがいじめてきた人も、みな同じ、この子のような赤ちゃんの時があったはずだ・・。

みな、同じような生命があった・・。

オレはこの子を守りたいと思った・・。

絶対にいじめなど許されるものではない・・。
オレは、随分と酷いことをされてきたが、酷いことをばかりもしてきた・・。オレの人生って一体何なのだろう・・。

でも、オレはなぜ泣いたのだろう・・。

オレの人生の反省でもなく、恨みでもなく、後悔でもない。
人間の生命に、人のいのちに感動して泣いた。

あの赤ちゃんの笑顔はオレに希望を与えてくれた気がする。
もしかすると、こんなオレだけど、人生をやり直せそうな気がした。
もしかすると、オレの願い、夢も作れるかもしれない・・。

オレは、〈いじめぬっこ〉になりたい。

人を傷つけたり、傷つきたくはない。
人の生命(いのち)を大切にしたい。
友だちを作り、たいせつにしたい・・。

オレの人生、何ができるのかなあ・・。

いじめるのも、いじめられるのも、もう嫌だ!

オレは〈いじめぬっこ〉になる!


※電子書籍「涙の物語~muyderyいじめぬっこ」より抜粋

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coucouです、みなさんごきげんよう!

とても寒くなりましたね。

世の中も少しばかり笑顔が出るようになりました。しかし、失われた2年間、これからが大切なときかもしれませんね。

567が世の中に与えた影響はとても大きく、ある意味、人間の本性がむき出しとなった気がします。567は人々から思いやりや優しさを奪い、何よりも自由を失い、残ったものは区別や差別がクローズアップされ、打った者と打たぬ者、打てぬ者もいる中で、区別や差別が始まります。

それも、ある意味、社会全体の圧力がいじめとなっているような気がします。私たちはその中で年内最後に大きなイベントを開催します。まだまだ残火がくすぶり続ける中で反対者や反発者も数多くいる中で約20万人以上観客を集めるイベントです。coucouさんが43年間継続している「YES活動」でもあります。

時代遅れの自粛警察なるものたちは私たちの団体を通報します。そのたびに警察も役所も通報連絡を受けて警告してきます。でも私たちは万全な567対策のもとで行うイベントです。せめて、子どもたちやお年寄りの引きこもりの方々に年内最後に、青空を見上げて歩いてほしい、という願いと祈りにも似たイベントです。

最高女性スタッフ4人と私とわずか5名で街を動かそうと日々、当日準備に追われています。みなさまはみんな奥様たちで家のことが何もできないくらいの年中無休、時間制限なしという過酷な準備期間の中での開催します。


さて、終わったあと始末はどうなるのでしょう…。

不安と怖れの中での出発となりました。

もう、誰もいじめないでくださいね!


では、またあしたね。



※電子書籍〈涙の物語~muydery〈いじめぬっこ〉~「虐人(いじめびと)」好評発売中!note記事には書ききれない物語満載。お時間がありましたらお読みくださいね。下記↓YRLで目次内容等を見てください。

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本のURL
https://www.amazon.co.jp/s?i=digital-text&rh=p_27%3ACou+cou&s=relevancerank&text=Cou+cou&ref=dp_byline_sr_ebooks_1


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