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なんで慕ってくれているのか分からないけれど、私はあなたに救われている。

新卒採用で入った会社には、
高校のクラスのサイズくらいの、ちょうどいい人数の同期がいた。
男女比もほぼ半々。

でも同期の女子でつるむ、という付き合い方には、あまり馴染めず、
特に女子校ぽい、べったり仲良し女子的なノリにはついていけず、
職場で心を開く友人を持てたと思えたことは少なかった。

彼女と出会うまでは。



四大文明の発祥地の一つである某赴任国に、わたしより1年遅れで着任してきた後輩女子。

性格、雰囲気、仕事の仕方・・・わたしと真逆もいいところ。
とにかく違いすぎる。

わたしが「穏やか」「どんくさい」「感覚系」「Mキャラ」なら、
彼女は「サバサバ」「直球」「論理系」「Sキャラ」だ。

わたしが「怒っていても怒っているように見えない」威厳の無さに悩む間に、彼女は「このまま管理職になると後輩や部下に怖がられてパワハラで訴えられるんじゃないか」とか「せめてプロフィール写真くらいフワ猫にした方がいいですかね」とか、キツく見られがちな第一印象に悩んでいたりする。

上司の家にいって、水が飲みたいことも言えずに我慢する長女タイプのわたしの横で「まだ来てない人いますけど、もう飲みたいんで、ワインあけちゃっていいすか?」と言える次女タイプの彼女。

前例踏襲になりがちな小役人業の中で、無駄を主体的に省く姿勢があって、とにかく仕事も超速でさばくし、メールボックスには常に未処理が溜まっていない状態。ADHDと自認しているわたしにとっては、彼女の処理能力は神がかっている。
そして上司にも重鎮にも、ずばずば物申す、デキる系の後輩。

私の眼には、自分ができないことをやってのける、すがすがしさしか映らない(笑)

こういうシャキシャキ系の後輩には、どんくさいわたしは見ていてイライラするんじゃないかな、と気になっていたのだけど、なぜかこのシャキシャキ系の後輩は、私にぐいぐい近づいて懐いてきて、どうやら慕ってくれている気配すらあった。

一見冷たそうに見られがちな彼女だけど、人あたりがよさそうで滅多に心を開かないわたしよりも、すごく人懐っこい。
距離の詰め方がまたなんかすごく近いのだけど、それで私が穏やかな雰囲気の中に隠している、固い心の殻の中にもぐいぐい入り込んできた。

誰が何が得意で突き抜けているのかを知っていて、誰に何を聞けばいいのかわかっている彼女だった。

だから「○○と△△と◇◇は、むぎさんに聞きます」と断言し、わたし自身が得意で夢中でやっていた特定の仕事についても、気づけばよく観察されていた。

私の隣の席は空いていて、そこによく座りに来た。
現場に裨益する意味ある事業を、私たちはできているのか。
いつも本質を問うてくる。
現場や競合他社に近い仕事をしているわたしに、ソクラテスのような問答をしにやって来る。

「ああ、この人は本当に意味のある事業をやっていきたいんだな」
と、本質を問い続ける彼女のことを、好きになるのに時間はかからなかった。

四大文明の発祥地の一つである某赴任国は、治安理由であまり国内旅行に行けないことと、娯楽の少なさも相まって、シャキシャキ後輩の彼女とは公私共に仲良くしてもらった。

そんな彼女と離れて勤務することになり1年弱が経とうとしていた。



彼女は現場から離れた本部に戻っても、いい意味で変わっていなかった。

今のわたしは、チャレンジの最中にいるけど、体調も絶賛崩しているし、とにかくイケてない。(と自分で思っている)

わたしが(けっこう常に)鬱にやられかけていることは知りつつも「〇〇について事業を立ち上げるから、むぎさんと色々話したいです」と、いつもと変わらないフラットな感じでメッセージが来て、仕事について久しぶりにおしゃべりした。

「本当の意味でいい事業をするには」をディスカッションするためだけに、わたしに連絡をしてきている。(だってその話題で2時間終わらない・・)
「心配しているから」連絡する、のではないことも、彼女らしくてうれしかったし、ありがたかった。

あまりに変わらない彼女の様子に「いいな」「こういう熱意も頭脳もある人が、希望をなくして辞めないですむような会社にしたいな」と思った。

そして、一番驚いたのは、

「むぎさん、前に○○の壮大な図みたいな資料を色々つくってたじゃないですか。あれ見たいです」

自分も忘れていた仕事の断片を、彼女が覚えていて掘り起こされたこと。

私が過去に、関係部の管理職や担当者、某大〇館の偉い人とかを説得するために作っていた数々の企画書やプレゼン資料、関係部の誰にも相手にされず放置された壮大なブレストペーパー・・

四大文明遺跡の在る国においてきた、
遺跡的な遺書的なSomething

について、彼女は私よりよく覚えていた。

いろいろと静かに攻めの仕事をしているのをこっそり見られていた。
あれを見たいと言われ、1年ぶりに掘り返すこととなった。

離任する4日前に作り上げたとは思えないような力作を含む、3年間につくった企画書やら説得資料の数々を掘り起こすこととなり、当時のわたしが、自分の脳内にあった、実現したい妄想・構想を関係者に見える化できるよう試みていたことが分かった。

誰も見ていなかった仕事を覚えてくれていたばかりか、掘り起こして使う気満々で意気揚々と?オンライン会議を終える後輩にも励まされてしまったし、過去の自分が残した仕事の足跡にも励まされた。

私は、基本アグレッシブに生きてるか、鬱に病んでいるかジェットコースターのように(でも見た目穏やかに)暮らしているのだけど、彼女はそんなことは知っていて、でもお構いなしに常温で接してくる。

わたしから見たら、彼女はわたしにないものばかり持っている。

彼女からみたら、わたしは、やりたいことやキャリアの軸がはっきりしていて、自信があって、好きなことをやっているようにみえるのだそうだ。
(「自信がある」ように見えるのは、常に彼女のほうなのに)

また娘への接し方が、子どもじゃなくて一人の人間として接しているように見えて、それも好きなのだそうだ。

リスペクトと好意を、飾り立ててはこない。
だけど隠しもしない。

甘え下手で、他人に心をあまり開かない私に、ぐいぐい近づいてきて、心の殻をこじ開けてきた彼女。

そんな彼女に私の方がいつも救われている。
ありがとう。