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無口な歌詞

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あの日から、やめられない作詞。 歌い出してくれたら嬉しいのに。
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2020年8月の記事一覧

さらばならば

さらば青春時代
ここで待っているとは
言い切れないけれど
憶えているから
.
.
書きかけのままで
ほっぽってきた
いつかの課題だけが
ほんの少し心残り
.
スローモーションのダイジェスト
まだまだ薄い走馬灯
.
アイアム最高傑作
そう信じること
それが今できる恩返し
間違えてなどいなかったと
言うは易く行うは難し
だからこそ
さらば青春時代
ずっと待っているとは
言い切れないけれど
憶えているか

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花嫁と遺灰とピストル

吹き消しそこなった
ロウソクの炎のように
しぶとく留まる
確かな存在感の正体
.
明るみに出るのが怖かった
触れられないと知っているから
.
残る温度だけが
正しさを肯定してくれる
口数の少ない優しさも
今は傍に居てくれる
仲間外れになることを
判っていながら
こんな別れを選ぶなんて
今夜はありえない
.
.
掴まえそこなった
風に舞う木の葉のように
ひとしお恥じらう
静かな放物線の公式
.
終末

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テイク2

更生します
更生します
猛省しつつ
更生します
.
.
ハッピーバースデイ
新しいマイネームイズ
あいにく天候は曇り
隙間から覗く欠けた月
.
目が合って微笑んで
初めてのような
テイク2
.
更生します
更生します
猛省しつつ
更生します
付き合ってくれて
ありがとう
.
.
歯磨きしたあとに
試されるチョコレートパフェ
左のポケットに隠し
指輪まで落とす溶けた星
.
手が鳴って呼びかけて
初め

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hug

名前をくれたから
始まった今日
物々しい雰囲気になる前に
ハグを一回させてほしい
.
.
ワイプアウト
波は形じゃないのに
想像で作り上げた
幻から目を逸らした
.
崩れた飛沫の先に
同じ色の空
.
探しものは苦手でも
見つけることは好きだった
また黙って名づけるのは
忘れないでいるためというよりは
忘れないでいてほしいから
こんな気持ちとか
こんな天気とか
とにかく何もかもと僕も
.
.
スリー

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wonder laundry

季節を盗んだ泥棒へ
返してほしいと
代理で手紙を送る
総意なんて殆ど相違で
だからこれも形式上
.
ここにはないものだけが
価値のあるものだって
.
.
奇跡をせがんだ隣人へ
信じてほしいと
代理で意見を述べる
好意なんて殆ど厚意で
だからこれもイミテーション
.
ここにはないものだけを
思い描かれたって
.
.
全く以て勝手だなんて
他人事も空々しく
ここは世界の外れで
ここは世界の中心
.

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停電

停電して知った静けさ
それは初めて一人きりで
過ごした夜に似ていて
隣り合わせでぞっとした
.
沈黙とは違う
逆に耳を塞ぎたくなる
深い恐ろしさ
.
見つけられないのは
捜しながらもどこかで
見つけてしまいたくないと
そう思っているから
だからこんな突然の出来事に
図らずも目が合おうものならば
どうすればいいのだろうか
.
.
停電して知った静けさ
それはしれっと居なくなった
あの日の夜に似ていて

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残ったドッグフード

特に意味はなく
深さも厚さもない
卑下や謙遜すら違う
もっとフラットに
もっとブラックに
みにくい笑顔を見せて
.
.
風が吹いたから
今日はもう終わり
洗濯物は生乾き
明後日までの暇つぶし
.
体温計はかさぶたに
結露したコップの底に
敷かれた千円札
.
特に意味はなく
深さも厚さもない
卑下や謙遜すら違う
もっとフラットに
もっとブラックに
みにくい笑顔を見せて
汚い涙を落として
.
.
猫が

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つたない

言葉から根が生えて
芽が出て伸びて
やがて花が咲くまで
まだ判らないから
.
まだ判らないから
時間を見つめて
.
花が全てではないと
知りながらも
.
知りながらも
それでもそれしかなくて
.
ああ
ああ
ああ
.
.
毛布から手が生えて
もぞもぞ探り
やがて元の場所まで
ただ帰るだけなら
.
ただ帰るだけなら
時間を忘れて
.
これが最後ではないと
待ちながらも
.
待ちながらも
それでもそれ

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Jingle Fib

嘘が雪のようだと
積もり積もったとしても
春には溶けてなくなるのに
.
嘘はまるでプラスチック
岸辺を汚すだけ
.
「メリークリスマス」
真夏にそう呟けば
滲んでぼやけた
視界がイルミネーション
Tシャツを着たエキストラ
マスクで踊っている
.
.
嘘が雪のようだと
白く染まったとしても
触れたら溶けてなくなるのに
.
嘘はまるでプラスチック
空しく拾うだけ
.
「メリークリスマス」
真夏にそう呟

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誰にも何も
言われない世界
背中合わせで
息をする
.
深い森に棲む鳥の番い
美しい朝を知ってはいても
星空のぞめきは知らない
.
だから囁くように
教え合っては
欠けた余白を埋めてゆく
やがて出来上がった
それが同じではなくても
むしろその方が
嬉しかった
.
.
高い塔に棲む鳥の番い
新しい風を知ってはいても
懐かしい寝息は知らない
.
だから囁くように
教え合っては
消した気配を染めてゆく

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ニュー

所詮ただの独り言
少しばかり大きな独り言
そこに居なくてもいいから
咎めたりだけはしないで
.
どうしたって
やっぱり淋しいんだ
仕方がない
.
.
わざとらしく独り言
変に芝居がかった独り言
ここに来なくてもいいから
隔てたりだけはしないで
.
信じたって
それでも淋しいんだ
終わりはない
.
終わらせ方はあるけれど
.
.
新しく枯れる
新しく暮れる
新しく遂げる
新しく堕ちる
選び放題にされ

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だから なのに

青い空のせいで
笑ってしまったじゃないか
もう二度とそんなことは
ないとばかり思っていたのに
.
青い空のせいで
想ってしまったじゃないか
もう二度とそんなことは
ないとばかり願っていたのに
.
誰が描いたでもないから
その気持ちの遣り場のなさに
こうして茫然とする
.
何でもない一日でした
だからうれしい
何でもない一日でした
なのにうれしい
燦然たる眩しい粒に
目を細めながらそう囁く
明日にで

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そんなところ

雨が止んだだけ
まだ空は曇り
撫でる風は
いつもと変わらない
.
きっと世界もそんなところ
気分一つ心一つ
.
誰かより
まずはあなた
他意はなく
機嫌の取り扱い方を知る
心地のいいままで
長く居られるように
.
.
影を踏んだだけ
まだ星は動き
なぞる風は
いつもと変わらない
.
きっと時代もそんなところ
気分一つ言葉一つ
.
何かより
まずは何故か
意味もなく
手紙の書き間違え方を知る
時間が

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summer blue

こんな夏だってきっと
文句を言っている間にそっと
居なくなってしまうから
もっとちゃんと感じたいの
.
やいのやいのと
言われたところで
昨日と同じ
先週と同じ
先月、去年と同じ
.
失くなって初めて気づくような
痛みの類いならば
何度と呑み込んできたか
苦みや甘みは慣れても
それはただいつも痛くて
でもだからこそ
忘れることもできなくて
綺麗だったのとても
.
.
どんな時だってずっと
叛旗を翻

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