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「あのとき、ああなってよかったな」と思える状況を自分自身が作る。

そう言った和紙デザイナー・堀木エリ子さんの思考法は、
まさに常識破りの連続だった
(先日の『コシノジュンコ MASAKA』)。

■[常識への挑戦(1)]寄らば大樹ではなく

堀木さんは「人生勉強のつもりで4年くらい」と決めて
入行した銀行を、ちょうど4年で転職するのだが、それが
ディスコで知り合った“おじいさん”が社長の
社員4名の手漉き和紙の会社というのだから、
恐れ入る。堀木さんは、
まずここで安定路線という常識からあえて外れてみせる。

ところがこの会社、2年間で閉鎖になってしまう。
機械漉きや洋紙に価格競争で勝てなかったのが原因だったが、
堀木さん、ここで社を救おうと考えるのだ。

しかし、100人の友達に相談したら
120人から「やめとけ」と言われる始末
(相談してない人からも電話がかかってきた)。
「堀木は大学でデザインを勉強していない」、
「専門学校でアートを勉強していない」、
「ビジネスも勉強していない」、
「職人さんのところで修業していない」、
「できるわけがないからやめとけ」。
これらが世間の常識というものなのだろう。

■[常識への挑戦(2)]経験にとらわれることなく

でも、ここで堀木さんは
「縄文時代や弥生時代に作られた埴輪や土偶は、
大学や専門学校に行って勉強した人じゃなくて、
普通の人がつくったんだから、私にもできる」と
常識の破れ目を見つける。
何トンもある重い扉をこじ開けるようなこんな発想、初めて。

■[常識への挑戦(3)]弱さを強さに変える

手漉きの和紙の強みは、使えば使うほど質感が増し、
使っても使っても強度が衰えないところ。
これに対し、会社でつくっていたのは、
ラッピング用紙や祝儀袋など、
1回で役目を終えるアイテムばかりだった。
堀木さんは、ここでさらに、燃えやすい紙の
弱さをくつがえす研究を始めるのだ。
それが結実したのが、
「紙=SHI」と「結=MUS」を組み合わせた
「SHIMUS」というインテリア向けの紙のブランド。
燃えない、汚れない、破れない、
退色しない、精度がよいなどの機能を備え、
手漉きの和紙の弱さを克服し、強みを増幅させる挑戦の成果だった。

■[常識への挑戦(4)]死ではなく生に

堀木さんは、自らの病を通して医学の常識にも挑む。

それは、39歳から40歳の誕生日を過ぎるあたりまで患った
子宮がんとの闘い。

医師に「覚悟してください」と言われる最悪の状況のなかで、
「人間は、死に様は選べないが生き様は選べる」と気付く。
そして堀木さんはこのとき、その生き様とは結局、
「人の役に立つことじゃないか」という思いにたどり着く。
そして
「和紙を通じて人の役に立つことが生き様に通じる」と
決心して、見事、死の烙印を押した医学の常識をくつがえすのだ。
堀木さんは、この子宮がんでさえ「なってよかった」と感じたと語る。

後になって「あのとき、ああなってよかったな」と
思える状況を自分自身が作る。
それは、常識や固定概念にとらわれず、
物事を冷静に分析してマイナスをプラスに考えるほどの
心の強さ、それが生み出す行動が可能にする、と感じ入った。
堀木さんの心のパワーって、スゴい。

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