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誰が国家を殺すのか 日本人へV (塩野 七生)

(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)

 いつも利用している図書館の新着本リストで目に付いた本です。

 塩野七生さんの著作は、代表作「ローマ人の物語」をはじめ、この「日本人へ」と副題がつけられているシリーズも「リーダー篇」「国家と歴史篇」「危機からの脱出篇」「逆襲される文明」と読み続けています。

 ということで当然のごとく本書も手に取ったというわけです。
 タイトルは編集者のセンスでもあるのでかなり刺激的なものですが、内容は塩野さんの感性で綴ったエッセイです。

 予想どおり興味を惹いたところは数多くありましたが、その中から特に印象に残ったところをひとつ書き留めておきます。

 “衆愚政” に陥りつつある今日の政治。これはイタリアもそうですし日本もそうですが、この状況に対し「女性や若者を制度的に一定割合登用せよ」という処方箋を示している塩野さんが、とはいえこの点には注意せよと指摘しているくだりです。

(p81より引用) ただし、次の二つは忘れないでもらいたい。
 第一は、全員のためを考えていては一人のためにもならないという、人間性の真実
 第二は、全員平等という立派な理念を守りたい一心こそがかえって、民主政の危機という名で、民主政からポピュリズムに堕す主因になっているという歴史の真実である。

 このあたりの言い回しは、いかにも “塩野さん流” ですね。

 さて、本書を読んでの感想ですが、エッセイで扱っている材料のかなりの部分が「現在のイタリアの政治状況」であることもあり、今ひとつ馴染めないところがありました。
 「誰が国家を殺すのか」という本書のタイトルからすると、確かに相応しい内容なのだとは思いますが、私としては、正直なところかなりの物足りなさが残りましたね。塩野さんの本にしては珍しいことです・・・。




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