教養としての「世界史」の読み方 (本村 凌二)
(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)
ありがちなタイトルですが、素直に釣られて手に取ってみました。
時系列を辿るのではなく、「文明の誕生」「ローマの興亡」「民族の大移動」といったテーマごとに俯瞰的にトピック的史実の連関を論じていきます。
さて、各論の中での気づきを紹介する前に、まずは著者本村凌二東京大学名誉教授の「歴史の捉え方」の基本スタンスについて開陳しているくだりを書き留めておきましょう。
続いて、トピック的な解説の中からの覚えをひとつ。
「第4章 なぜ人は大移動するのか」の章から、「大規模な民族移動のインパクト」について解説しているくだりです。
この難民・移民への対応は、現在の新型コロナ禍が収まった今後の日本においても、対峙すべき課題として間違いなく顕在化してきますね。
そのとき、私たちは過去の歴史からの知見を活かすことができるか、これは私たちの将来の社会形態を形作るうえで極めてクリティカルな分水嶺になるでしょう。
さて、本書を読み通しての感想です。
著者の本村教授はベテラン歴史学者の方ではありますが、教養学部の教授経験もあってか、説明の記述ぶりはとても分かりやすいものでした。
ただその内容の質感はというと、はるか昔私が高校の「世界史」の授業で習ったものとそれほどの差がなかったように感じました。著者が説く史実の読み解きには、もう少し踏み込んだ背景の紹介や根拠の説明が欲しかったですね。
たとえば、ギリシアの民主政をテーマにした章には、
という記述がありましたが、こういう結論に至るまでの解説もかなり淡泊かつ表層的なのです。
さすがに、プラトンは「哲人王による独裁制」、アリストテレスは「貴族政(寡頭政)」を推奨していたとの説明はされていましたが、なぜ二人の哲人はそういう政体を求めたのか、その理由について、それぞれの思想の特徴に触れるとか、著作の主張を引用するとか、といったもう少し丁寧な説明があってもよかったと思います。
正直なところ、“大学の教養課程” の講義レベルをイメージすると、残念ながらもの足りなさを感じる内容と言わざるを得ませんね。
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