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インドで絶対にインド人を信用するなってインド人が言ってた~インド旅行記3:洗礼いろいろ

2010年11月6日 5:30

携帯のアラームで目が覚める。眠りの浅瀬でパチャパチャしただけで引き返してきたようで休んだ心地はしない。一切。けれど頭は冴えていた。
しばらくはリラックスできそうにないよ…という反面、夜が明けたからどんどん動き出せるぞというわくわくで、静かに興奮していた。
とりあえずはぼったくられる率の低い、定額制のプリペイドタクシーのカウンターに向かい目的地「バンドラ・ターミナス」までのチケットを買う。
290ルピー(およそ550円?)高いのか安いのかわからないが、ここでの値段は一応公的なところらしい。
お金と引き換えに一枚の紙切れを渡される。
私の乗るタクシーのナンバーが書いてあるのだが、走り書きのようなそれが読みにくい。
「むう・・・」確信のかけらもない足取りで歩いていたのだろう、ふいに現れた若者インド人に「こっちだよ!」と声をかけられた。
「こっち」を見るとなるほど無数のタクシーが待機していた。
若者インド人は私の持っていた紙きれをパスっと取り
「あなたのナンバーはXXXXだからあの車だよ」と教えてくれる。
この時点でとても自然に彼を雇われのタクシー乗り場での案内人のようなものだと思い込んでいた。
自分の乗るべきタクシーを見つけほっとして歩きだす私、ついてくる若者インド人。
もうわかってるから案内はいいのに甲斐甲斐しい。
「ありがとう」礼を言いタクシーに乗り込むと半開きの窓からにゅっと腕が伸びてきた。
「マネー」
「あ!」
思わず声が出た。そうか!これが色々で読んだ「勝手にサービス人」だ!
勝手にサービス人とは、一方的に観光客にあれこれ世話をやいて後にそのサービス料をせがむ輩の事だ。
が、正直助かったのも本当なのでチップとして二ルピー渡した。
私は真面目で優しい人間なのだ。
「ノー!ジャパニーズマネー!」
しかし2ルピーはバレーのアタックのように叩き返された。
日本円て。もう持ってへんちゅうねん。
どうしよう、というよりも真面目で優しい私は、差し出したチップを馬糞を見るような目つきで拒否された事に大変傷ついていた。
彼にとって現在私の手にあるものは馬糞なのだ、私は馬糞を握っているというのだ。
真面目で優しい私には耐えられない。
しかも彼はどうやら「日本の、札でよこせ」と言っているようだ。千円からのお値段だそうだ。
やだインド人のジョークってスパイス効いてないけどちょうウケルーと虫の死骸を見るような目の私を乗せたままタクシーは発車しタイミングよく彼とは永遠の別れとなった。
インド人が何かをしてくれると些細なことでもお金を要求されるのだ、と脳にメモをする。
日本でサービスを受け慣れすぎた自分は「して貰う」事を疑問なく受け入れすぎると思おう。

空港の敷地からいざ出ようとした時に信号待ちとなり停車すると、老婆に物乞いを受けた。サム・ライミの映画「スペル」に出てくる老婆にそっくりだった。 いかにも魔術を使いそうで清潔感が無く皺々なのに鋭くてとにかく怖いのだ。
真っ暗な車内の後部座席の真ん中で、前方からのそりのそりと人影が近寄ってくるのを嫌な予感と共に身を硬くして座っていた。
コツ、コツ、と前の座席の窓にへばりつき、叩き、しゃがれた声で「マダ〜ム…プリーズ…」と繰り返す老婆。
帽子を深くかぶり老婆を見る事を禁じた私、見ると呪われる、だが視線を感じる、感じまくる。
なにも反応せずできず、無視しているとクォ〜ツ…と窓の叩きかたが粘着質なものになった。
老婆の気配が私の真横の窓に張り付いている。
近い。サファリパークじゃないんだから。
タクシーが動き出すまで、繰り返される呪文をひたすらうつむいて耐えた。
高速道路を走りだすと「こわいよ!」と呟かずにはいられなかった。

ムンバイの空港から市街へと向かう光景は、これがスラム街というものなのか、普通なのかわからないけどとにかく汚いな、というものだった。

基本的に雰囲気は繁華街の路地裏のそれに近い。
所々に散らばり山のように積まれたゴミ。無数に連なったボロボロの小屋。どろ水。
絵描くなら茶色と黒と灰色だけで事足りそうな色彩。
窓が振動してんじゃないかってくらい鳴り響くクラクションの音は、窓をあけるとよりいっそう酷くなる。何人かはストレス発散で鳴らしてやいないか。
匂いもひどい。
次から次へと五感まんべんなく衝撃を受ける。
そんな風景の中で、ボロ屋から裸の子供が飛び出してきたり女性が洗濯をしていたりと人が生活している。
そうだここはゴミ捨て場ではないのだ。
ゴミ捨て場でゴミの匂いがするのは当り前なのだがそうじゃない。誰かに何かを問いたくてたまらない。
次元が違う。
牛が道路にふつうにいる。道路に糞を落として寝ている。牛とはいってももちろん見知ったあの白黒の乳牛なんかではなく泥や糞で汚れくすんで茶色っぽい牛だ。
いや牛なのか?下手すれば人語を話すんじゃないかって位に顔つきも体つきも日本の牛と全く違って「外人牛」という感じ。濃い目の。アラブ系の。
すぐ傍を車が通っても前方から車が来ても微動だにしない。
インドじゃ牛は神様のなにかありがたいものらしいが・・・これが。堂々としているといえばそうなる。
例に漏れず私の乗ったタクシーも牛を避けていった。

2010年11月6日7:00頃

インドに到着して7時間が経過。初タクシーは無事に乗り終え、バンドラ・ターミナスに着く。
お目当ての砂漠都市「ジャイサルメール」に辿りつくにはまず「ジョードプル」に行かねばならずその列車がこの駅から出ているのだ。
この日の14時には私は列車の中。の、はずだった。

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