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小デュマ「椿姫」

サンテグジュペリの「星の王子さま」以来、読んだことのなかったフランス作品を読んだ。原題を訳すと「椿の花の貴婦人:裏社交界」というらしい。

時代が違うのに「自由」を得るために考えることがほとんど変わっていないのではと考えさせられた。今の役職や職業を近いものに当てはめて読んでみると、何の違和感もない。1848年に書かれたお話、しかも実話に基づいて。今から約180年も前なのに。戯曲や映画にもなっているけど、それが多少の脚色をのぞいたら「ほぼ」ノンフィクション。すごい。
あとは裕福と贅沢の違い、お金をとにかく浪費しなくてはいけないこと、マルグリットの思慮深さ、いろいろのめりこまされた。

使っても減らないお金をもっていること、好きなことに好きなだけ好きな時に使いまくれる余力があるのがハッピーと聞くことがある。そういう人もいるんだろう。けれども、マルグリットの贅沢ぶりを見ているとむしろ居た堪れないやら、苦しいやらと思った。言い方が悪いが、マルグリットは高級娼婦で、絶対にお金に困らない、飢えない階級の婦人。そしたら、安定が見込まれると思うものだと思った。けれど、その贅沢の「強制」のせいでものすごく寿命をすり減らしてしまうのだから悲しすぎる。悲しい出来事はこれだけではすまないが。あと、あまり馴染みのない階級や爵位の力もわかるので、面白い。欲望と病についての説得力が「ほぼ」ノンフィクションだからこそ強い。
ちなみに欲望に溺れていくとどうなるかは、オスカーワイルドの「ドリアングレイの肖像」でこれでもかというくらい快楽にのめりこんでいった結末が見られる。

それにしても、この作者のお父さんが「三銃士」「モンテクリスト伯」を書いた人とあとがきで知った時にめちゃくちゃびっくりした。父は大デュマと呼ばれるらしい。ギリシャの哲学者セネカの作品を読んだ際も、解説に父親と息子を区別するのに大小を頭につけていた。恐るべし親子。

多くの出版社さんから発行されていますので、お好みの一冊が見つかれば幸いです。中でも私はこちらの光文社古典新訳文庫さんが好きです。持ちやすくて、表紙もシンプルです。中に当時についての補注などが解りやすいところに書いてあるので、ありがたい。本当に読みやすいので助けられてる。


よりダイレクトに欲望ということについて、こちらのnoteで書いています。もしご興味があったらお読みいただければ幸いです。


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