マガジン

  • 生きていること

    心にうつりゆくよしなしごと

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    自分と誰かを大切に想うこと

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    いつかこれを読む私がきっと、これを書いた私を救ってくれるから

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    それってちょっとどうなんだろう

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    生から死までのプロセス

最近の記事

5月7日(日)

 大人になると身体は固くなりやすい。幼い頃は立ったまま簡単に地面に届いていたはずの両手が、膝のあたりからもう伸びていかない。無理に伸ばそうと頑張ると、筋肉が切れるんじゃないかと思うくらい痛い。すっかり凝り固まった筋肉と、悪いほうに丸くなった姿勢を正そうと、最近ストレッチをするようになったけれど、いつの間にこんなに固くなっていたんだろうと不思議に思う。自分の身体がこれ程までに固くなって動かなくなっていることすら、今まで私は気が付かなかったのだと理解するのと同時に、この頃の私はそ

    • 4月21日(金)

       この頃、こわい夢をみる。逃げ隠れた末に見つかって殺されたり、仕事ぶりの悪さから惨めな思いをしたり、灯りもない暗い夜道を歩いたりして、心臓がばくばくしながら現実の布団の上へ戻ってくる。なんだ夢かとまた眠ってしまえばいいのだろうが、なかなかできずにスマホを手に取る。時間を確認すると、今日はもう4時を過ぎていて、朝が近いことに少し安堵した。  ついさっきまで見ていたのが、どんな夢だったかを思い出しながら、夢占いを調べるのが習慣になってきている。占いのような非科学的なものへの抵抗が

      • 4月20日(木)

         最後に孤独を感じたのはいつだろう。ひとり暮らしをしていた頃は、うっすらとした孤独が常に氷の膜のように張っていたのに、最近めっきり見なくなってしまった。結婚してからというもの、雪解けを迎えた春のように感情は豊かになって、笑ったり怒ったりするのに毎日忙しい。それをとても幸せなことだと思う反面、孤独というひとつの感情を失ってしまったような気もする。  そういえば、実家にいた時もこんな得体の知れない不安感を抱いていた。孤独を感じる隙もないほどに賑やかで、ありきたりな幸福に満ち満ちて

        • 水やり

           乾いた土に水が染みていくとき、みしみしと音がするのを今日はじめて聞いた。きっと私が聞いていなかっただけで、今までもずっと鳴っていたのかもしれない。ジョウロを片手に不思議な音だなあと思いながら色濃くなった土を眺める。このひと時はなんだか、コーヒーを淹れる時の蒸らしの時間に似ている気がする。次はもう少し早めに水やりにくるね、こころの中で小さく謝る。  数日前まで続いていた雨のおかげで、玄関先の鉢植えの水やりをすっかり忘れていた。今日のテレビは真夏日のような暑さだと話していて、ふ

        5月7日(日)

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        • 生きていること
          11本
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        記事

          結婚と生活

           四半世紀を生きた頃から、結婚する知人が増えてきた。なかには子育てをしている子もいて、学生時代にふざけ合っていた人たちが、母の顔をしているのを見ると、時の流れをしみじみと感じる。周りは結婚しているのに自分には出会いがないと話す子もいるが、それなりにひとりを楽しんでいるようだし、それはそれで素敵に見える。学生という型にはまって生きていた若者たちが、解き放たれて多様な道を歩みつつあるのだと思うと、私たちの人生もいよいよこれからだという感じがしてくる。  27歳。30を目前に控えて

          結婚と生活

          犯罪者

           犯罪者と呼ばれる人の心理に興味がある。そのなかには、偶発的に犯罪を犯してしまった"一般人だった人"と、計画的に犯行に及んだ"犯罪者になった人"がいるのだろうと思う。毎日のように報道される犯罪の数々は、客観的な事実と第三者の声で構成されている。「おとなしい人だった」「まさかそんなことをするとは」ーー特に親しくもなさそうな人たちは、マイクを向けられるとそんなことを口々に話す。  計画的な犯行であればある程、そこに至るまでには強い動機と長い助走が必要だろう。彼らがどんな孤独を味わ

          犯罪者

          機械化と労働

           朝にゴミをまとめて出したはいいが、ゴミの日は明日だったことに昼過ぎになって気付く。食器洗いで手が荒れたのでハンドクリームを塗ったはいいが、少しベタつくので乾くまであまり手が使えなくなる。家事というのは生きるうえで必要なことだが、まだ好きになれない部分が多い。私が2、3回ボタンを押すと、ロボット掃除機は走り出し、洗濯機はまわり始める。なんて便利な時代なんだろうと眺めながらふと、このなかで自分がいちばん無能なのではないかと考える。  与えられた役割を淡々とこなす機械ほど、私は効

          機械化と労働

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           ずびずびと鼻をすすりながら、真っ赤になった目からぼろぼろと涙を流す姿は、どれだけ滑稽だろうと思いながら、私は嗚咽を止めることができなかった。これが今生の別れならばまだしも、数日会えなくなるというだけで、どうしてそこまで泣けるのか。これではまるで御涙頂戴と言わんばかりのドキュメンタリー番組ではないか。馬鹿らしい。頭のなかでそう吐き捨てる偉ぶった自分の理性などお構いなしに、私の涙は止まらない。これから施設療養へと向かう夫は、私を抱きしめる訳にもいかず、冷えた私の足にそっと触れる

          すぐに死にたくなるわたし

           自分の人生を客観的に見て、不幸だと思ったことはあまりない。大きな病気に苦しむこともなく、あたりまえのように両親がいて、ひもじい思いをするような貧しさや、妬まれるような富とも縁のない暮らしをしてきた。多くはないけれど気心の知れた友人にも恵まれて、それなりに恋愛というものも経験したと思う。人に自慢できる程の青春ではないけれど、コンプレックスになる程の経験の欠如もなく、いろんな思い出や失敗が、今の自分をそれなりに形成していると感じている。つらい思いをすることもあったけど、振り返っ

          すぐに死にたくなるわたし

          コロナ禍の社会性

          誰にも会えない日々のなかで、ひたすらに自分と向き合いながら過ごしています。家の外は、コロナ禍でいろいろなことがぎすぎすとしてしまっているなあと思いながら、そのことについても少し考えてみました。 とりあえず、体調を崩すのが今まで以上に怖いので、体調管理に気を遣うようになりました。「こんなに必死に体調管理をしたって、どうせ仕事にしか行けないのに」と虚しくなってしまった時期もあったけれど、自分に必要なカロリーや栄養のバランスを考えて食事を摂るようにしたら、今までしばしば感じていた

          コロナ禍の社会性

          好きなぶんだけ

          食べきれない訳ではないけれど、ここで食べるのをやめておきたい、と思うタイミングがある。大抵のこり、ふたくち、みくち。残してしまうのはもったいないから、えいや、と食べる大人になったけれど、ほんとは食べない方が、身体にとっては気持ちが良いから、なんとなく、苦しくてかなしい気持ちになる。こんな時に、君がいればなあ、といつも思う。わたしの残す、ふたくち、みくちを、誤差の範疇とでもいうように、にこにこで、ぺろりと平らげてしまう。そんな懐の深さがとてもすきだ。大きな胃袋にはやさしさが詰ま

          好きなぶんだけ

          冬の寒さを知る人よ

          布団の外は厳しい世界だ。 朝の寒さが身体に残る温もりさえも奪っていくのを肌で感じる。季節は確実に冬へと向かっていて、もう肌着だけで歩き回っていた頃のように呑気には過ごせないのだ。空気も水も、トイレの便座さえも冷たくて、触れた途端にみるみると身体の熱は失われてゆく。暖房や温水器が動きはじめるまでの時間は、おそらく冬の1日のなかで最も過酷だ。 まだ暗いうちから寝床を出たら、暖房をつけて冷たい水で顔を洗う。お湯を沸かして、温かいコーヒーを淹れる。卵焼きを焼いて、お弁当に詰めたら

          冬の寒さを知る人よ

          夜更かしによる夢想

          眠れない。あんなに幸せだった昼寝を今になって忌々しく思うなんて。 あんなに長かった梅雨が明けたのは突然で、ここ数日で本格的に夏の暑さが猛威を振るうようになった。洗濯物がよく乾くようになったのは嬉しいことだが、太陽の光というものは想像以上に生物の体力を消耗させるものらしい。昼食を食べ終わる頃には身体が酷く怠くなってしまって、いつの間にか午睡していたのだった。 夜になると幾分気温は下がって過ごしやすくなるが、コンビニでアイスを買うぐらいしか出来る楽しみがないのがとても残念だ。

          夜更かしによる夢想

          缶チューハイ

          失敗した。少し考えればこうなることは予想できたはずなのに、それが出来なかったのはやはり疲れていたせいなのだろう。耳の奥の方で拍動が聞こえる。血の気が多くて脈ははやい。血行が良すぎるせいで手足は火照り、走ってもいないのに荒々しく動く心臓のせいで息が苦しい。 もともと酒に弱い体質のくせに、疲れた空きっ腹にゴクゴクと缶チューハイを流し込んだのは馬鹿だった。身体のことを考えて酒を控えていたのも今思うと良くなかった。酒は飲み続けなければどんどん飲めなくなる。もちろん休息はなくてはなら

          缶チューハイ

          何が辛いかについての考察

          私の職場は他の部署と比べると恵まれた環境だと思う。基本的に定時で帰れるし、理不尽に怒るようなお局もいない。そこまで忙しい日も多くないので、教育もそれなりに手厚く行われていると思う。他の部署の人からみたらゆとりと言われそうなこの環境に身を置きながら、私は今の仕事を辛いと思っている。 特に怖い人と思う人はいないし、定時で帰ってプライベートな時間もちゃんとある。経験年数を重ねてそれなりに任される仕事が増えてきたのが負担に感じることもあるけれど、そこまで重責な訳ではない。何が自分を

          何が辛いかについての考察

          優しさに救われている話

          買い物に向かう途中で雨が降ってきた。こまめに通うには少し遠い距離にあるスーパーでは、買い物袋に入るギリギリの量の食料をいつもまとめて買って帰る。勢いの弱いシャワーのような雨のなかを、傘もささずに濡れながら、重い荷物に振り回されないよう必死になって歩いていると、なんだか急に、自分が惨めに思えて悲しくなってきた。 もし今の私の姿を見つけたら、あの人はどうするだろうか。きっと、どこからともなく傘を買ってきて、私から軽々と荷物を取り上げると、真新しい傘を惜しげもなく差し出してくれる

          優しさに救われている話