結婚と生活

 四半世紀を生きた頃から、結婚する知人が増えてきた。なかには子育てをしている子もいて、学生時代にふざけ合っていた人たちが、母の顔をしているのを見ると、時の流れをしみじみと感じる。周りは結婚しているのに自分には出会いがないと話す子もいるが、それなりにひとりを楽しんでいるようだし、それはそれで素敵に見える。学生という型にはまって生きていた若者たちが、解き放たれて多様な道を歩みつつあるのだと思うと、私たちの人生もいよいよこれからだという感じがしてくる。
 27歳。30を目前に控えて入籍報告はさらに増え、結婚式に呼ばれたり、祝いの品を贈ったりと、幸せムードに包まれている。それらを素直に喜ぶことができるのは、ひとりのままだったら難しかったのだろうか。少なくとも、人の幸せを妬まないで済む程度には、自分は今幸せであるのだと思うと、私のした結婚も有難いものである。
 しかし、結婚とはみな一様に幸福であって、私はそれをこわいと思う。多くの人に祝福されて華々しく挙げた式が、人生最幸の日で終わる人たちはどれだけいるだろう。美しい思い出に浸りながら穏やかに生きることも悪くないかもしれないが、つい思い出に縋って生きたくなるのが人間の性(さが)である。そんな惨めなことはしたくない。
 多くの他者が結婚を"点"で祝ってくれるが、結婚生活はふたりの長い"線"であり、その実線こそが結婚の本質である。デカい点より太く長い線を描く、それが私の結婚の理想だ。みなさんもどうか各々、末長くお幸せに。そしてたまに会いましょう。

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