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優しさに救われている話

買い物に向かう途中で雨が降ってきた。こまめに通うには少し遠い距離にあるスーパーでは、買い物袋に入るギリギリの量の食料をいつもまとめて買って帰る。勢いの弱いシャワーのような雨のなかを、傘もささずに濡れながら、重い荷物に振り回されないよう必死になって歩いていると、なんだか急に、自分が惨めに思えて悲しくなってきた。

もし今の私の姿を見つけたら、あの人はどうするだろうか。きっと、どこからともなく傘を買ってきて、私から軽々と荷物を取り上げると、真新しい傘を惜しげもなく差し出してくれるだろう。そう思うと、胸の奥があったまるような、きゅうと締め付けられるような恋しさがこみ上げてくる。想えば想うほどに、会えない距離にいることを思い知らされる。

あの優しい手が私に届かない距離にいるうちは、頼らずに生きていくしかないのだと、頭ではきちんと理解している。心にも、これまでに与えられた優しさがちゃんと残っていて、私の今を支えてくれている。だから、どんなに惨めで悲しくたって、生き抜いて、また会いに行かなければいけない。もらった沢山の優しさと、少しの涙で、私の心は保たれている。

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