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守屋 大輔/守屋農園 moriya farm

法人名/農園名:株式会社 MORIYA /守屋農園moriya farm
農園所在地:北海道旭川市
就農年数:17年
生産品目:多品目野菜(寒締めほうれん草、雪の下ニンジン、ミニトマト、大玉トマト、青梗菜)
Facebook:https://www.facebook.com/people/%E5%AE%88%E5%B1%8B%E5%A4%A7%E8%BC%94/100014853788966/

no.163

「プロなら1年中、農業をするべきじゃないか?」自分に問いかけ、冬の旭川でハウス稼働率100%実現

■プロフィール

 高校卒業後、北海道ハイテクノロジー専門学校/北海道メディカル・スポーツ専門学校メディカルスポーツ学科健康福祉コースに進学。スポーツインストラクターを目指していたが、就職氷河期だったこともあり、建築関係の企業に入社。

 会社勤めが性に合わず、自然の中で働ける農業への憧れが募って24歳で鷹栖町の農業生産法人に転職。1年にわたって米や野菜の生産を担当したのち、2005年〜2006年にかけて旭川市の新規就農者向け研修に参加。東旭川の農園で栽培技術を学び、2007年に26歳でハウス4棟からスタート。

 2014年、冬季の寒締めほうれん草の栽培を開始し、ハウスを12棟に拡大。 2015年には「雪の下ニンジン」の栽培も始め、年間売上2,000万円に達する。

 2016年には借入金の返済がひと段落したこともあって経営が安定。この頃からシーズン中の出荷量が最大4万パックまで増加。2022年、株式会社MORIYAを設立、2023年2月現在、8人の従業員を抱える。

 旭川青果物生産出荷協議会東旭川支部会長、JA上川地区青年部協議会第44代会長のほか、農産物の直売に取り組む新規就農者の活動団体「旭川農業新参者」の会長を務める。新規就農を希望する若者の相談会に参加するなど、東旭川地域の農業をリードする頼れるアニキ的存在だ。

■農業を職業にした理由

 子供の頃から建築関係の父親の背中を見て育ち、建築関係に就職。3年間働くうちに会社勤めより、自然のなかで伸び伸び働ける農業の方が自分に向いているかもしれないと憧れるようになった。

 鷹栖(たかす)町の農業生産法人に転職して、1年間、米や野菜の栽培にたずさわるうちに、「自分だったらもう少し上手くできるのではないか」と就農を決意。旭川市の新規就農者向け研修に参加して、東旭川の農園で1年間トマト栽培を学んだのち、26歳の時に東旭川町の家付きの農地50アールを借り受けてスタート。

 当初はビニールハウス4棟で、夏はミニトマトや大玉トマトを作り、冬の半年間は精米工場でアルバイトに励んでいたが、「プロとは1年中、農業をするものではないか?」という思いを強めて、冬でも栽培できる作物や技術を調べるようになった。

 その結果、寒さで成長が止まる初冬まで育てたほうれん草に、冷たい外気をあてることで糖度を高める「寒締め栽培」の技術に出会う。2014年にハウスを12棟に拡大した翌年には、雪の下で越冬させることで甘みを増やす「雪の下ニンジン」も始めた。

 借入金の返済が落ちついた頃から、シーズン中のほうれん草の出荷量が4万パックまで増え、北海道・東北エリア最大のスーパー「アークス」で全量定額で出荷するようになった。

 2017年にはハウスを18棟に増やして年間売上も3,000万円を超える。現在は年商4,000万を達成し、2022年には株式会社MORIYAを設立し、法人化を果たした。

■農業の魅力とは

 就農前は農業のことを何もわかっていないのに、「自然のなかで働ける農業はいいなあ」「俺だったらもっとうまくやれるのになぁ」なんて考えていました。今、考えると恐れ多いですね(笑)。

 旭川出身ですが、市街地で育ったので、東旭川には誰も知り合いがいませんでしたし、就農当時は、周囲はあとつぎの農家ばかりだったので、「アウェイに来てしまったな」と違和感を感じていました。

 当時は26〜27歳だったこともあり、まわりの先輩農家からすれば「おかしな若いヤツがやってきたぞ」と珍しく思われたのだと思いますが、要らなくなった道具を譲ってくれたり、困ったことがあれば助けてもらえますし、農家になってからの方が、人と密接に関わるようになったと思います。

 時には「古くさいなあ」なんて思うこともありましたが、こちらから積極的に働きかけていれば、地域の人たちはあたたかく受け入れてくれるので、農産物を作るだけでなく、農業を通じてつながった人を大事にしていきたいと思っています。

 北海道では冬の間は農業できないと思われていますが、「プロなら1年中、農業をするべきじゃないのか?」という思いから寒締めほうれん草の栽培を始めました。

 トマトの収穫を終えたら、寒締めほうれん草を作付けしているので連作障害の予防にもなってハウスの回転率は100%。味にもこだわっていて、えぐみの原因になる硝酸イオン値をリアルタイムで分析するなど、追肥管理も適期適量を徹底していますし、冬のビニールハウスは害虫や菌の増殖もないので、農薬散布の回数も基準の3分の1以下と効率も良いのです。

 2023年で就農してから17年目を迎えますが、いまだによくわからない、奥の深さが農業の魅力だと思います。去年と同じように作っていても、天気や気温、湿度は毎日違いますから、どう対応していくか毎日がチャレンジ。

 でもそこが面白いし、何より食べものを作る仕事は、生きることの根幹に関わる強みだと思うのです。農業をやっている仲間は、変わった人も多いけれど良い人ばかり…。一生の仕事だと思っています。

■今後の展望

 農家は体力仕事なので年齢を重ねたら、現在の生産規模を維持するのは難しくなります。地域の高齢化も進んでいますが、東旭川地域全体の生産規模を維持するためにも、自分のような新規就農者を増やしていきたいし、「寒締めほうれん草」が地域のブランドになるように、栽培にチャレンジする農家を増やしていきたいと思っています。

 かつて東旭川では私を含む3軒しか作っていませんでしたが、2019年以降は寒締めほうれん草にチャレンジする農家が7〜8軒に増えています。 そして55〜60歳くらいを目標に、守屋農園や地元の作物を使った飲食店を開いて、観光客が宿泊できる場所も作りたいと思っています。

 2023年は夢の第一歩として、雪の下ニンジンの規格外品を使って、ジュースの製造委託と販売事業を始めます。 また農福連携にも力を入れていきたいと考えています。今年は、パック詰めを手伝ってもらっている足が不自由な人たち向けに、車椅子でも使用できる障がい者専用のトイレを新設する予定です。

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