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#現代アート好きな人と繋がりたい
【400字小説】@塾々
沼の浅瀬で半魚人が待ってて。
わたしは抱き締めたかったけれど、
魚臭くならないか期待して、手が出なかった。
「ぎょぎょぎょ」としか
逝ってなかった半魚人の
言葉がなぜかわかった。
「人生二度きりだよ」と言ってたので、
人間の次は半魚人で
生きることを覚悟できなかった。
講師を辞めることは易々と越えられたのに。
寺があった沼の池で
蓮の上に仁王立ちできない。
仏様なんてきっといる。
イルな人
【400字小説】微妙に通じ合えない
はちみつではなく、水だった。
キッスを朝死んだら聴きたい。
ニュ~トラルに生きてえええって長渕剛とは
真逆で、やさしいあなた。
わたしのすべてを伝えたら、あの人とは疎遠になった。
キーボードを叩く音がうるさくて、
隣のお姉さんに睨まれている。
Winkするほど寂しい熱帯魚ではない。
金が必要で最低な男。
借りた金は返さない友永、
パチンコで勝った時だけおごってくれた田川、
貸したギターをメルカリ
【400字小説】熊谷で会いたくない
アフロディーテギャングになりたいって、
一行のLINEを送りつけてきた
雲の彼方のお前に返す言葉はない。
犯罪者であることに間違いない。
一ヶ月、ずっと舐達麻を聴いてるくらいだから
沼ったと言っていいけれど、
だからって移住するには早すぎないかい?
ありがとうの数だけ別れはある。
お前には世話になりっぱなしで、
礼のひとつも返せてない。
俺も俺なりにお前に尽くした。
スタバしょっちゅうおごってや
【400字小説】性癖不足
足の甲を踏んでほしいという性癖。
行為の最中は、そういう気持ちにならないけれど、
終わった途端、無性に踏んでほしいと思っちゃうんだよね。
歴代の彼氏はベッドから出て、
立ったわたしの足の甲を裸足のそれで
踏んでくれる人たちばかりだった、やさしみ。
でも、オーノくんはしてくれない。
彼の性癖は終わった後、そのまま寝落ちすることで、
果てるとスイッチが入ったかのようにカチッと眠り出す。
寝顔を見て
【400字小説】犯罪に足を染める
「駅前で強盗だって。白昼堂々入店して
乱暴に金目のものを奪っていったみたいだよ、
たったの105秒でさ」
「そんなの捕まるだけじゃん」
「捕まりたいんだよ。舐達麻になりたいんだよ」
「なに、なめだるま?」
午後2時のわたしたちの2LDKでの会話。
ゴウくんはやはり舐達麻を知らなかった、
善良な市民だからな。
わたしはどちらかといえば悪い女なので、知ってた。
てゆうか大好き。
そのまっすぐ
【400字小説】ポテンヒットも狙えない
ヒットは偶然。
わたしは計算して作品を仕上げるタイプではない。
バズった小説は偶然によって書けてしまった。
だが、それが芸術ってものだし、
人間の深みがあるというもの。
緻密に考えられて作る小説は
AIに任せておけばいいと思っていた。
ラッキーだった、一発屋と揶揄されても構わない。
それで満足。
でも業界人は違った。
次作もヒットさせてくれと懇願。
それまで楽しく書いていただけの小説は
瞬く間に
【400字小説】聴いたことあるナイフ
メタリカのメロディアスな演奏に酔っていたら、刺された。
ベースがごりごり、ドラムがドンドン。
シュガードーナツ食べたい。
電車のなかで満員。
立って松本駅に向かっていた、最中。
ズブズブと入刀。
鈍い痛みだった。
でも声も出ないくらいの鋭い痛みでもあった。
アドレナリンか何かが脳から放出されたみたい、
原発処理水を垂れ流したあの海のようだ。
わたしは当然のことながら
その場にうずくまってしまって、
【400字小説】なんとなく感想文
舐めてた、ジューダス・プリース卜『ペインキラー』に
ド*頭をカチ割られて。
古着屋のバイトの同僚Sさんから借りた
4枚のCDのなかではダークホース的存在。
高校野球部時代の最後の夏の新聞に、
我がチームはダークホースと書かれていて悔しかったなあ。
だからジューダス・プリーストに申し訳なくて。
アルバムが発売されたのは1990年。
ちょうど最後の高3の野球部だった年、9月発売。
もっと驚いたのは
【400字小説】そろそろ夕日も
ド*平日の午後3時過ぎに車の点検でzoomzoomに。
この間、あの人とこの店の前をトボトボ歩いていた。
夜だった閉店間際で、
担当の顔見知り・ディーラーさんの姿はなかった。
見られても別にやましい関係ではないから、あの人と。
なので、堂々と手を繋がずに歩いた、あの夜。
雨が降りそうで、実際、県民文化会館に
集合したときはひどい雨だった。
今日は青い空が広がっている。
目の前にお山が見える、緑
【400字小説】フラメンコ・ジャスティス
ビセンテ・アミーゴのギターが郷愁を誘ってる店内。
洋食屋『Hola!』はヨーロピアン・テイストのカレーが人気で、
でも、あえてわたしはシーフードパスタを注文。
ビセンテのそれは情熱を増して演奏され、
そこへ人間のものとは思えないほど、
悲しみを帯びた熱い歌声が割り込んできた。
わたしはかなり上機嫌で今日を過ごしていたけれど、
懐かしい思い出に浸ってしまうような
ポジティブでもネガティブでもない気