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【400字小説】聴いたことあるナイフ

メタリカのメロディアスな演奏に酔っていたら、刺された。
ベースがごりごり、ドラムがドンドン。
シュガードーナツ食べたい。
電車のなかで満員。
立って松本駅に向かっていた、最中。
ズブズブと入刀。
鈍い痛みだった。
でも声も出ないくらいの鋭い痛みでもあった。
アドレナリンか何かが脳から放出されたみたい、
原発処理水を垂れ流したあの海のようだ。
わたしは当然のことながら
その場にうずくまってしまって、
そんな隙間もなかったはずなのに不思議で。
キャーという悲鳴は聞こえなかった、
意識が遠退いていたからだ、そうだからか。
メタリカが激しい演奏を鳴らし始める。
計算されて緻密で繊細なメタルミュージック。
ギターソロが懐かしさを感じさせて、
ツインで轟くギターに関してはお涙頂戴ものだ。
痛すぎて涙が出ない。
痛すぎなくて鼻血が出た。
腹に包丁のようなものが刺さっているのが見えた。
でも隣にいた女性の腹にだった。
刺したのはわたしでしたと急*覚醒。

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