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【400字小説】フラメンコ・ジャスティス

ビセンテ・アミーゴのギターが郷愁を誘ってる店内。
洋食屋『Hola!』はヨーロピアン・テイストのカレーが人気で、
でも、あえてわたしはシーフードパスタを注文。
ビセンテのそれは情熱を増して演奏され、
そこへ人間のものとは思えないほど、
悲しみを帯びた熱い歌声が割り込んできた。

わたしはかなり上機嫌で今日を過ごしていたけれど、
懐かしい思い出に浸ってしまうような
ポジティブでもネガティブでもない気分に。
なのでシーフードパスタに期待、2200円(税込み)。

あの子と来たのは3週間前で、
彼女はとても彼女自身を肯定して
生きられるようになったなあと思ってたら、自殺。
まだ不在を受け入れられず、
今でもここに立ち現れそうだと予感している。

ビセンテにはそれを知るよしもなく、BGMとして流れている。
あの子はビセンテの演奏を「魂の拠り所みたい」と評した。
この店のカレーも絶賛。
しかし届いたシーフードパスタはおいしくない。

わたしはようやく泣いた。

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