【400字小説】ポテンヒットも狙えない
ヒットは偶然。
わたしは計算して作品を仕上げるタイプではない。
バズった小説は偶然によって書けてしまった。
だが、それが芸術ってものだし、
人間の深みがあるというもの。
緻密に考えられて作る小説は
AIに任せておけばいいと思っていた。
ラッキーだった、一発屋と揶揄されても構わない。
それで満足。
でも業界人は違った。
次作もヒットさせてくれと懇願。
それまで楽しく書いていただけの小説は
瞬く間に苦痛に。
吾峠呼世晴先生のそれに比べたら屁みたいなものだが、
それでもプレッシャーが。
村上宗隆にとっての2022年レギュラーシーズン、
ターミネーターシリーズにとっての第2作目のように
足枷となって苦しませられた。
執筆期間中、キーボードを叩く両腕が
切り落とされて血が滴るという悪夢に悩まされた。
渾身の一作とはこのこと。
売れなくても後悔はなかった。
結果は、古本屋に売られることもないくらいに売れなかった。
わたしは初めての絶望に狂って、歓喜。
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