見出し画像

独禁法3条 不当な取引制限

1.不当な取引制限の概要

(1)独禁法3条は、不当な取引制限を禁止する。不当な取引制限とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう(独禁法2条6項)。

(2)不当な取引制限は、主に、競争を回避することによって競争の機能が実質的に制限されてしまうことを理由として規制されている。不当な取引制限の具体例が、価格カルテルや入札談合である。

2.不当な取引制限の成立要件

(1)不当な取引制限の成立要件は、①複数の事業者が(要件①)、②他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、もしくは引き上げ、または数量、技術、製品、設備もしくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、または遂行し(要件②)、③公共の利益に反して(要件③)、④一定の取引分野における競争を実質的に制限すること(要件④)、である(独禁法2条6項)。以下、これらの①~④の要件について具体的に説明する。

(2)複数の事業者(要件①)
 要件①は、複数の事業者である。このため、一つの事業者だけで行った場合は、不当な取引制限(独禁法2条6項)に該当しない。また、要件①の複数の事業者は、事業者団体も含まれる(独禁法8条1号)。

(3)他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、もしくは引き上げ、または数量、技術、製品、設備もしくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、または遂行し(要件②)

ア 要件②では、他の事業者と共同していることが必要である。典型的な他の事業者と共同する場合とは、会合や会議を行って合意した内容を行う場合である。この他の事業者と共同する場合には、意志の連絡と相互拘束が必要とされている。

イ 意志の連絡とは、複数事業者間で相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認識ないし予測し、これと歩調をそろえる意思があることをいう(東京高判平成7年9月25日 審決集42巻393頁)。意志の連絡があるというためには、一方の価格引き上げを他方が単に認識するだけでは足りないが、事業者間相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要でなく、相互の他の事業者の対価の引上げ行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足りる。

ウ 相互拘束とは、少なくとも、競争者間に何らかの協定が存在し、それを相手が守るなら自分も守るという関係をいう(最判昭和59年2月24日 刑集38巻4号1287頁)。

(4)公共の利益に反して(要件③)
 要件③は、公共の利益に反してという要件である。要件③は、要件④の競争の実質的制限を行うカルテル等と認定されれば、自動的に満たされる。

(5)一定の取引分野における競争を実質的に制限すること(要件④)
ア 要件④の、競争の実質的制限とは、競争自体が減少して、特定の事業者または事業者集団が、その意思で、ある程度自由に、価格、品質、数量、その他各般の条件を左右することによって、市場を支配することができる形態が現われているか、または少くとも現われようとする程度に至っている状態をいう(東京高判昭和26年9月19日判決・高民集4巻14号497頁)。また、一定の取引分野は、共同行為が対象としている取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討して、一定の取引分野を確定すれば足りるとされている(公取委審判審決平成28年2月24日)。

イ 価格カルテル、数量カルテル、入札談合などは、価格あるいは数量を直接的に左右するものであり、競争の実質的制限が生じる。また、競争者間の水平的な市場分割カルテルは、分割された市場内における競争が生じなくなるため、市場支配力を形成する。生産設備削減カルテルや操業時間短縮カルテルは、実質的には数量カルテルとして機能する事になる。

●参考文献
・鈴木孝之・河谷清文『事例で学ぶ独占禁止法』(有斐閣,2017年)46-49, 102-126頁

#法学部 #経済法 #独禁法 #独占禁止法 #企業結合規制 #不当な取引制限
#毎日note #コラム #毎日更新 #note #毎日投稿 #note毎日更新 #毎日 #最近の学び #毎日更新倶楽部 #考察コラム #クリエイティブ #士業

この記事が参加している募集

#最近の学び

181,931件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?