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独禁法 抱き合わせ販売に関する独禁法上の規定と成立要件

1.抱き合わせ販売に関する独禁法の規定

 独禁法19条は、事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない旨、規定する。不公正な取引方法には、(i)独禁法2条9項1号~5号に定められた類型と、(ii)独禁法2条9項6号の規定に基づいて公正取引委員会が告示(独禁法72条)により具体的に指定する類型と、がある。抱き合わせ販売は、不当な取引制限の具体例として、公正取引委員会が告示した一般指定10項に規定されている。具体的には、一般指定10項では、相手方に不当に商品等の供給に合わせて他の商品等を自己等から購入等させるように強制することが不公正な取引方法とされている。

2.抱き合わせ販売の成立要件等

(1)成立要件
 一般指定10項に該当する場合には、独禁法19条にも違反して、抱き合わせ販売とされる。一般指定10項に該当する要件は、①主たる商品・役務と、主たる商品・役務とは別の従たる商品・役務が存在すること、②従たる商品・役務を購入させる取引の強制、③不当性(公正競争阻害性)があること、である。

ア 要件①には、主たる商品と従たる商品の2種類の商品が含まれる。このことを二商品性という。

イ 要件②の従たる商品・役務を購入させる取引の強制であるが、強制されたか否かは、顧客の主観によってけっていされるものではなく、客観的にみて少なからぬ顧客が従たる商品等の購入を余儀なくされているか否かによって判断される。したがって、喜んで従たる商品等を購入している場合でも、強制性が否定されるわけではない。したがって、強制性が認定されるハードルはさほど高いものではなく、多くのセット販売やパック販売等は強制性が認定される。なお、従たる商品は、自己から購入させる場合だけではなく、自己の指定する事業者から購入させても良い。

ウ 要件③の不当性(公正競争阻害性)であるが、公正競争阻害性を示す文言は「不当に」であることから、行為要件を充足しても例外的にのみ違法となる。例えば、セット販売やパック販売であっても、顧客にとって好ましい組み合わせや価格で販売される場合もある。このような態様での販売は、顧客にとっても好ましく、事業者の競争を促進するものであるため、違法ではない。例外的に公正競争阻害性が生じるのは、競争手段の不公正性がある場合と、自由競争の減殺(競争排除型)がされる場合、である。

(2)事例
 事例1(公取委審判審決平成4年1月20日)では、人気ソフトと不人気ソフトとの抱き合わせ販売が、競争手段の不公正としての公正競争阻害性が認定された。また、事例2(公取委勧告審決平成10年12月14日)では、被抱き合わせ商品の市場における競争者排除に着目してソフトウェアの抱き合わせ販売が、自由競争の減殺(競争排除型)としての公正競争阻害性が認定された。特に、事例2では、顧客にとって価格や機能で好ましいといえるセット販売やパック販売であっても、公正競争阻害性が認定されている。つまり、競争手段の不公正性がある場合、自由競争の減殺(競争排除型)がされる場合のうちの少なくとも一方に該当すれば、公正競争阻害性があるとされる。

 事例3(大阪高裁平成5年7月30日、平成2年(ネ)1660号)では、エレベーターメーカー系列の保守業者が、(i)エレベーターメーカー系列外の保守業者と保守契約を締結しているユーザーに対して、交換部品だけの販売はしないとしたこと、(ii)部品取り替え工事等と合わせて発注しなければ注文に応じないとしたこと、が独占禁止法で規制される抱き合わせ販売(一般指定10項)に該当するとされている。

●参考文献
・鈴木孝之・河谷清文『事例で学ぶ独占禁止法』(有斐閣,2017年)

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