見出し画像

独禁法 販売先地域制限

1.販売先地域制限に関する独禁法上の規定

 市場における有力なメーカーが流通業者や代理店に対し一定の地域を割り当て、割り当てた地域外での販売を制限する場合がある。

例えば、市区町村等の範囲でのみ特定の商品の販売を許可し、その他の地域での特定の商品を禁止する場合である。このような地域制限によって、当該特定の商品の価格が維持されるおそれがある場合には、拘束条件付取引(一般指定12項)に該当し、不公正な取引方法として独禁法上違法となりうる(独禁法19条)。

2.独禁法上行う分析

(1) 市場における有力な事業者が流通業者に対し地域制限を行うことにより価格維持効果が生じる場合、不公正な取引方法に該当して独禁法上違法となる(一般指定12項)。価格維持効果が生じる場合に当たるかどうかは、垂直的制限行為に係る違法性判断基準と、価格維持効果が生じる場合の判断基準に基づいて判断される。つまり、一般指定12項での判断は、地域制限が行われているかと、垂直的制限行為に該当するかと、価格維持効果が生じるかの基準に基づいて判断される。

(2) 地域制限が行われている場合の類型は、①事業者が流通業者に対して一定の地域を主たる責任地域として定めて当該地域内において、積極的な販売活動を行うことを義務付けること(責任地域制)、②事業者が流通業者に対して,店舗等の販売拠点の設置場所を一定地域内に限定したり,販売拠点の設置場所を指定すること(販売拠点制)、③事業者が流通業者に対して一定の地域を割り当て、地域外での販売を制限すること(厳格な地域制限)、④事業者が流通業者に対して一定の地域を割り当て、地域外の顧客からの求めに応じた販売を制限すること(地域外顧客への受動的販売の制限)、である。なお、新商品のテスト販売や地域土産品の販売に当たり販売地域を限定する場合は、この限定によって価格維持効果が生じることはないため、独禁法上違法とはならない。

(3) 垂直的制限行為に係る違法性判断基準では、①ブランド間競争の状況、②ブランド内競争の状況、③垂直的制限行為を行う事業者の市場における地位、④垂直的制限行為の対象となる取引先事業者の事業活動に及ぼす影響、⑤垂直的制限行為の対象となる取引先事業者の数及び市場における地位、が考慮される。例えば、市場が寡占的な場合、又は、ブランドごとの製品差別化が進んでおり、ブランド間競争が十分に機能しにくい状況では、市場における有力な事業者によって厳格な地域制限が行われると、当該ブランドの商品を巡る価格競争が阻害されて価格維持効果が生じうる。また、複数の事業者がそれぞれ並行的にこのような制限を行う場合には、一事業者のみが行う場合と比べ市場全体として価格維持効果が生じる可能性が高くなる。

(4) 価格維持効果が生じる場合の判断基準では、基本的に、垂直的制限行為に係る違法性判断基準に該当すれば、価格維持効果が生じる場合と判断する。価格維持効果が生じる場合とは、非価格制限行為により、当該行為の相手方とその競争者間の競争が妨げられ、当該行為の相手方がその意思で価格をある程度自由に左右し、当該商品の価格を維持し又は引き上げることができるような状態をもたらすおそれが生じる場合をいう。なお、価格維持効果が生じる場合に当たるかどうかの判断においては、非価格制限行為により、実際に価格維持効果が生じたことまでは要しない。

3.具体的事例

 メーカーが販売代理店に対して一定の販売地域を割り当て、地域外における、特定の商品の販売を禁止する厳格な地域制限を行った。しかし、割り当てられた地域では、①特定の商品に対する有力な競合製品の販売事業者が存在していること、及び、②ブランドごとの製品差別化が進んていないこと、から、特定の商品の販売価格が維持されるおそれはなく,独占禁止法上問題となるものではないとされた(独占禁止法に関する相談事例集(平成25年度)事例2)。

●参考文献
・鈴木孝之・河谷清文『事例で学ぶ独占禁止法』(有斐閣,2017年)

#法学部 #経済法 #独禁法 #独占禁止法 #企業結合規制 #流通業者の販売先地域制限
#毎日note #コラム #毎日更新 #note #毎日投稿 #note毎日更新 #毎日 #最近の学び #毎日更新倶楽部 #考察コラム #クリエイティブ #士業

この記事が参加している募集

#最近の学び

181,931件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?