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散文〜思いのままに

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そのとき、そのとき、思ったことを。 間違いを恐れず、感情のままに。
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九相図

九相図

 春の桜、夏の海、秋の紅葉、冬の雪。

 日本人は海外へ四季を自慢するけれど、海外にだって四季は普通にあるし、それぞれ美しいものだ。日本人がなぜこんなに四季を海外へ自慢するのか透にはよく分からなかった。

 一度、灯に聞いてみたことがあったが、灯の答えは難しくてよく分からなかった。

 「九相図って知ってる?日本人は変化と、その時々を点で捉えて、そこに美しさとか意味とかを見出すのが得意なのよ。」

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アルコール消毒

アルコール消毒

 ファンタジー系の小説やアニメなんかだとよくあることなんだけれど、ある日突然、自分たちの環境がガラッと変わる。
 主人公になる人やメンバーたちは、そのガラッと変わった環境に戸惑いながらも、割と早い段階から順応していく。

 2020年、こんな小説やアニメでしか無いような自分たちの環境がガラッと変わる出来事が起きた。新型コロナウイルス感染症の拡大。

 パンデミックに分類される広範囲(世界的)流行。

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紅葉狩

紅葉狩

「知ってる?もみじもかえでも同じなんだよ。」
彼女は得意げにそう言った。

 僕と彼女が出会ったのは大学に入ってしばらくしてからだった。当時、僕には彼女がいた。そんなことお構いなしに「一回、付き合ってみる?」なんて軽口をたたく僕に「ないし。」と真顔で返す彼女がとても新鮮だった。
 僕は割とモテる方だったし、「いい人そう。」という僕から滲み出るイメージみたいなものが、まさか二股、まさか浮気と思わせる

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赤い秋

赤い秋

 銀杏並木がとても綺麗な季節になった。そういえば銀杏並木ってのはとても人工的で、不自然なものだ。
 桜並木もそうか。
 並木とつくもののほとんどは人工的なものなのかな。それでも吉野の山の桜のように不自然ではなく、山一面が桜という場所もあるが、不自然ではなく銀杏が一面に広がる景色を僕は知らない。

 そこまで考えて、やっぱり銀杏並木は不自然で人工的なものだと思った。

「街の秋は黄色くて、山の秋は赤

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代替え品

代替え品

 いったい、何に置き換わっていくのだろうか?

 何度も、何度も読み返し、大好きなページは、それこそ暗唱できるのではないだろうか?今は亡き(亡き?)アンジャッシュの渡部のように簡潔にスラスラとスピーディーにストーリーを説明できる小説たち。

 友達の細工でペアになるように仕組まれた肝試しのくじ引き。

 ドキドキ!しながら「香織さんいますか?」と彼女のお母さんに伝えた電話。「はい」という低い声に驚

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【小説】彼女と僕〜あと100日で新型コロナウイルスは終わります〜

【小説】彼女と僕〜あと100日で新型コロナウイルスは終わります〜

 大人になっても少年の心を持っている人がタイプ。なんて言葉を昔はよく聞いた。結局それは嘘で、男前でお金がある前提の中においては、少年っぽい人が更にモテ要素を持っているということだ。

 自分で言うのも変な話だけれど、幸いにも僕はこの最低条件をクリアしている。ただし、「そこそこ」がついてくる。
 そこそこ男前で、そこそこお金持ちである。けれどモテない。なんて話をしていると「限度あるし。」とツッコミを

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【小説】高校時代の彼女

【小説】高校時代の彼女

 僕はたぶんリア充だった。今更、リア充という言葉を使うことは恥ずかしさを感じるが、リア充だったと思う。
 高校1年生の秋くらいから高校を卒業して数ヶ月、実質3年ほど同じ女性と付き合っていた。毎日学校であい、休み時間も一緒に過ごし、バスの時刻まで話し、休日の多くも一緒にいたと思う。

 しかしながら一切思い出せない。なぜ付き合い始めたのか?なぜ別れたのか?

 付き合い始めた理由、いわゆる馴れ初め。

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3次元と4次元の間

3次元と4次元の間

 もちろん僕もそうなのだけれど、3次元と4次元の間の溝を数多くの浪漫が埋め尽くしていると感じる。つまり、3次元から4次元へ1つ高次元へ移動する瞬間、妄想や空想が多くの浪漫を排出し続けていることを感じる。
 実際には現時点において、高次元へ移動するという行為自体が不可能であり、それ自体が妄想、空想であるため、3次元と4次元の間に数多くの浪漫が存在することを確認することは不可能だと思う。

 そもそも

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