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韓国クィア文学「娘について」・「大都会の愛し方」

今回は、韓国クィア文学の代表的な作品である「娘について」キム・ヘジン、古川綾子訳(亜紀書房)と「大都会の愛し方」パク・サンヨン、オ・ヨンア訳(亜紀書房)の二つをご紹介したいと思います!


「娘について」キム・ヘジン、古川綾子訳

本作は、主人公の母が、娘がレズビアンであること、そして連れて帰ってきた娘のパートナーを受け入れられない。その内面を描いています。
正直、読んでいて、かなり苦しくなりました。母が娘と娘のパートナーにかける鋭利的な言葉・態度に、深く心がえぐられました。「普通」の幸せを願う母と、デモに参加し「普通」から逸れていく娘。特に、二人の会話の場面の熱量には、圧倒されました。

言葉を選びますが、母が娘の「普通」を願う気持ちは、わからなくもないんです。それは、なぜ、うちの娘がこんなに苦しまなきゃいけないのか、という娘を思う気持ちが、うっすらと透けて見えるからだと思います。
でも、その矛先が娘のセクシュアリティ、パートナーの否定につながるからこそ、辛かったです。母の内面を通して、自分の中にある差別感情にも気付かされ、向き合うきっかけとなりました。

暗く重い物語ではありますが、考えるところが多く、心を揺さぶられる作品です。おすすめの一冊です。

「大都会の愛し方」パク・サンヨン、オ・ヨンア訳

つづいて紹介するこちらの作品は、ゲイが主人公の4つの短編で構成されています。どの作品も、ヨンという人物が主人公ではあるものの、重なる部分も、微妙な違いもあり、必ずしも同じ人物ではないようです。

LGBTQの物語が「愛の物語」と括られることがあると思うんですが、その暴力性みたいなものを感じました。社会が今のままである以上、いわゆる「普通」とは違うんです。母に「精神病」と言われて病院に入れられたり、HIVの影が見えたり。主人公たちの中を過ぎ去っていく人々。
なんだか切なくて、苦しくて、心がじんとしました。

あとがきも、素敵な言葉に溢れているので、興味のある方、ぜひ一度読んでみてください。


ここまで、お読みいただきありがとうございました!

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