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夏目ジウ 掌編・短編小説集

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これまでnoteに掲載した小説をまとめてみました。
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2023年6月の記事一覧

父殿にならなかった阿修羅【掌編小説】

父殿にならなかった阿修羅【掌編小説】

※1944字数。
 本作品は二人称小説です。

 茂男、あなたが亡くなって四十九日が過ぎた。昨日その法要は無事に終わっている。私は、毎夜襲いくる寂寥感を紛らわしている。その時の気分によって日記にしたり、言葉にしたり。くよくよするのはやめてほしい、だの、早く新しい恋を見つけろ、だの、突き放すようなセリフが天国から降ってきそうだけど、まだあなたが忘れられない。私にとって、あなたは人生そのものだから。死

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創作小説「宇宙をラーメンと呼ぶ男」前編

創作小説「宇宙をラーメンと呼ぶ男」前編

 男は、突然、宇宙を「ラーメン」と呼ぶようになった。しかし、不幸にも男はラーメンの存在を知らない。食べ物なのか、何なのか、もしかすると人間なのかもしれないと19年間を過ごしてきた。ラーメンが「らーめん」かもしれないし、イタリア風に「La men」かもしれない。一つ言えることは、男が苦労をし過ぎて、あまりにも厭世的になっていること。宇宙みたいな、遥か恒久へ逃げ出したくなったことは確かなようだ。

 

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オリジナルの中のオリジナルの男【掌編小説】

オリジナルの中のオリジナルの男【掌編小説】

 ※本作品2,519字数。

 勇侍(ゆうじ)は極度に女性に弱い。
 なぜか。
 赤面症で、あがり症で、緊張しいだ。 
 一見すると、好青年風なのに非常にもったいないこと他ならない。もっとグイグイ積極的に行けば、運命が変わるし、毎日が楽しくなるはず。同じバイト仲間の爽介(そうすけ)はイケメンでモテる。自分から何のアクションが無くても、女性が声を掛けてくる。勇侍は素直に羨ましいと思っている。

 勇

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