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【小説】連綿と続け(50話まで無料)

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富山県を舞台にした小説。 1話〜50話までの無料分はこちら。 51話以降は有料マガジンへ
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#ラブストーリー

連綿と続け・あらすじと登場人物

連綿と続け・あらすじと登場人物

題名: 連綿と続け

(あらすじ)
東京都八王子市で生まれ育った一ノ瀬侑芽は
大学を卒業し、富山県の南砺市役所に就職が決まった。
南砺市では人口と観光客が年々減少し、その回復が急務となっていた。
その為には地域の人々の協力が必要となり、その間に入る担当者として新人の侑芽が選ばれる。様々なことに苦戦する侑芽であったが、足を運ぶうちに地域の人々の暮らしぶりやそれぞれの思いを知り、観光だけに頼らず地域の

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【小説】連綿と続けNo.5

【小説】連綿と続けNo.5

航は生粋の職人で、
仕事においては実直な性格だ。

しかしそれが災いしてか、
武史や先輩職人である山崎洋平から
紹介された女の子と付き合った時期もあったが、
どれも長続きはしなかった。

何よりも仕事を優先して生きてきたから、
それを理解してくれる恋人はいなかったのだ。

そう思っていた。

武史)お前、そろそろ彼女作ったら?

航)はぁ?そういうの面倒やて前に言うたがに。それにお前やて彼女おらん

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【小説】連綿と続け No.10

【小説】連綿と続け No.10

祭りの準備が進む中、富樫から電話で思いもよらぬ知らせを受ける。

富樫)急で悪いがやけど…上からの提案で連休中に市内で"街コン“することになったさかい、その準備も宜しゅうね〜

侑芽)街コン!?

街コンとは
街ぐるみで行われる大型コンパイベントである。

イベント会社と地域がタックを組み、男女の出会いの場を設けるもので、参加者は開催地区の定められた複数の飲食店を廻るため、地域振興にも役立てられて

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【小説】連綿と続け No.11

【小説】連綿と続け No.11

侑芽は早退したが、結局家で仕事をしている。
そこへインターホンが鳴り、部屋着のまま出ていくと西川が心配そうにして立っていた。

西川)急に来てしもてかんにん!倒れたて聞いて…ちょっこし心配になってしもてな。あっ、良かったらこれ食べて?

そう言って侑芽に何かを渡してくる。
それは富山県産イチゴ「かおり野」であった。
その名の通り、ふわっとイチゴの香りが漂ってくる。

侑芽)わぁ…いい香り!でも、わ

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【小説】連綿と続け No.12

【小説】連綿と続け No.12

市役所に到着した航は、
意を決した様子で歌子から渡された差し入れを持って中に入っていく。

ところが侑芽が在籍している観光推進課の場所がわからずキョロキョロとあたりを見回していると、たまたま通りかかった高岡が駆け寄ってくる。

高岡)あれ?確か昨日お会いしましたよね?どうされたんですか〜?まさか私に会いに来てくれたんですかぁ!?

勘違い甚だしい高岡はいつもより声のトーンが高い。

航)いや、ちょ

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【小説】連綿と続け No.13

【小説】連綿と続け No.13

航)あの…

侑芽)え…どうかされましたか?

侑芽は驚きつつも首を傾げている。
航は掴んだ手を慌てて引き

航)か、かんにん!あんな、この前もろた飴…あれ、けっこう美味かったさかい…その…

侑芽)あぁ。飴ならまだありますよ?

そう言ってバックの中から飴玉を取り出している。
航はあの時のように片手を広げ
深呼吸をしてから

航)こんな手で落ち着くんやったら…、その…いつでも貸すさかい

侑芽)

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【小説】連綿と続け No.15

【小説】連綿と続け No.15

目前に迫った街コンの参加女性に欠員が出たと言う。
男女の数を合わせる規定であるから、
今から参加者を探さなくてはならない。

富樫の声が大きすぎて
電話での会話が丸聞こえだった。
電話を切り途方に暮れている侑芽に航が声をかける。

航)そんなん出んでええ

侑芽)でも…

2人の様子がおかしい事に気がついた歌子と正也は
夕飯を食べながら事情を聞き出した。

侑芽)…というわけで、このままだと私、街

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【小説】連綿と続け No.16

【小説】連綿と続け No.16

航)街コン、行かんでくれ

2人は発ったまま向かい合い、互いを見つめている。

侑芽)でも私が出ないと春ちゃんが出てくれないので…

航)そんなん2人とも出にゃええ話ちゃ

侑芽)でも誰かが出ないといけないから…やっぱり私が出ます。それに…大丈夫だと思います。大丈夫な気がしてきました

航)なにが?何が大丈夫なが?

侑芽)それは…春ちゃんが言っていたように、飲んで食べて喋って、ちょっと我慢すれば

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【小説】連綿と続け No.19

【小説】連綿と続け No.19

『会いに来てくれて嬉しかったです』

侑芽からのLINEを何度も見返す航
自然と顔がほころんで

『また会いに行くちゃ』

そう返信した。
侑芽はそれを見て嬉しそうに微笑んでいる。
だが、感じた事のない胸の高鳴りの後、
春子への後ろめたさが襲ってきて
胸が苦しくなった。

「春ちゃんに言わなきゃ…」

侑芽は春子の行動が作戦という事をまだ知らない。だから春子との仲が壊れてしまう事に怯えていた。

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【小説】連綿と続け No.20

【小説】連綿と続け No.20

航が侑芽の両親と初対面を果たしている頃
侑芽は井波八幡宮に来ていた。

いよいよ神輿が出発し、八日町通りの御旅所に向かう。そのために担ぎ手達が境内に集合し活気に満ちていた。

普段は静かなこの街が、この時ばかりは大勢の人々で賑わい、すでに祭りが始まっているかのような掛け声が飛び交っている。

今日は富樫や高岡も手伝いに来ている。祭りと並行して明日は街コンの開催も控えているからだ。

侑芽は春子と共

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【小説】連綿と続け No.21

【小説】連綿と続け No.21

『仕事終わったら、ちょっこし会わん?』

航が侑芽にLINEを送ると
すぐに返信がくる。

『はい!喜んで!』

航はそれを見て
1人ニヤけた顔を手で抑えた。

その頃、宿に着いた侑芽の両親は
ひと息つきながら話をしていた。

由紀)なんだか心配してたのがバカバカしくなっちゃったわね?

健太郎)そうだな。侑芽も少しずつ、この街で根を張ろうとしているんだな

由紀)あれ〜?なんか寂しそうだね?

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【小説】連綿と続け No.22

【小説】連綿と続け No.22

航)侑芽の事、女として好きや

航の顔が侑芽の顔に近づいてゆく。
すると侑芽は胸が高鳴り
抑えていた航への思いが溢れ出した。

侑芽)私も、航さんが…好きです

航)それは、お兄ちゃんとして?それとも男として?

侑芽)お兄ちゃんじゃなくて…男の人として…好き…

「好きです」と言い終わる前に
2人の唇が重なった。

時が止まったように静まりかえる部屋で
2人は初めて口づけを交わす。

最初は触れ

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【小説】連綿と続けNo. 23

【小説】連綿と続けNo. 23

いよいよ本祭がスタートする。
その瞬間、一斉に男衆が立ちあがり、
先頭の神輿が担ぎ上げられた。

航と武史も気合いを入れ、
「行くぞー!せーのっ!」と神輿を担ぎ上げた。

皆が大声で「ヨイヤサー!ヨイヤサー!」と
掛け声をあげながら街へ繰り出してゆく。

見物にやって来た侑芽の両親も航の姿を見つけ

由紀)航く〜ん!カッコいいぞ〜!

健太郎)頑張れ〜!

そう叫んで手を振る。
航はそれに気づき、

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【小説】連綿と続け No.25

【小説】連綿と続け No.25

航)このまま、一緒におってくれん?

侑芽)一緒にいたいけど…

航)俺ちゃあかんが?

侑芽)そうじゃなくて。私、恋愛経験乏しくて…

侑芽が俯いきながらそう答えると
航はその体を引き寄せた。

航)俺はその方がええ

侑芽)そうじゃなくて。こういうのも初めてで…

航)え…?

侑芽は学生の頃、勉強に明け暮れていたから、
ほとんど恋愛をしてこなかった

合コンや紹介などで知り合った相手と何度か

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