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奇譚

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奇譚、怪談
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#実話怪談

奇談短編 紙

奇談短編 紙

古紙
突然の御連絡失礼致します。この間はどうもありがとう御座いました。お陰様で私達一同無事に過ごすことが出来ました。つきましては後日、御自宅の方へお邪魔させて頂く所存でございます。
貴殿様の慈愛に満ちた所作に心奪われてしまったことを深くお詫び申し上げたく存じます。何卒今後ともご愛顧宜しくお願い申し上げます。鍵を開けてお待ち頂けると色々と幸甚に存じます。すぐに参ります。

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この変な文

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奇譚 映り

奇譚 映り

Kさんはある時期から写真や映像に映ることを嫌がり、自身が写った映像、写真は絶対に見ないようにしている。

「写真や映像に映った自分を見ていて、何だか違和感を覚えるようになったんです。最初はその違和感に全く気付きませんでしたが、時が立つにつれてハッキリと分かるようになりました。」

写真や映像に残るKさんは少しづつ首が伸び、顔がグシャグシャになっており、最後に映った自身をみた時には首から上がもう人な

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怪談 冷たい手

怪談 冷たい手

「幼少期はとにかく寂しかった記憶しかないです」

Nさんは物心がついた頃には母を亡くしており、父と二人で暮らしていた。

「常に体調が悪くて、学校にも満足に通えずに色白で痩せていて、見た目から相当に貧弱でした。」

産まれたときから身体の弱かった新垣さんを男手一つで育てる為に、父は毎日働き詰めだったが常に笑顔を絶やさない優しい人だった。

ある雪の降る日、Nさんは熱を出して寝込んでしまっていた。

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奇譚 救済

奇譚 救済

とあるビル、屋上で転落防止の金網を乗り越え、彼は飛び降りようとしている。私は熟練の警備員として見逃すわけにはいかない。
不審な動きをしているので、何か企んでいることは感じていたが、まさか命を絶とうとしていたとは。

「まて!はやまるな!君が命を落とす必要はない!」

「…もう疲れたんだ、学校でも家でも…僕は必要とされてない…もう疲れたんだ!」

「…正直、今の君が感じている苦しさは私には分からない

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奇譚 回想

奇譚 回想

とある冬の日、Eさんは家の掃除をしている最中に学生時代のアルバムを数冊発見した。

懐かしさのあまり掃除の手を止め、
次々にアルバムを開きながら想い出に浸っていると、ある1冊のアルバムに違和感を覚えた。

そのアルバムには全く記憶にも無いような写真が収められており、どの写真にも人物が写っておらず、どこか田舎を思わせるような風景ばかりであった。

最後のページをめくると、
目と口を異常なほどに大きく

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