ネコ科のなにか

短編小説、短文ばかり書いてます。通勤電車での私の妄想をつづったものばかりですが、楽しん…

ネコ科のなにか

短編小説、短文ばかり書いてます。通勤電車での私の妄想をつづったものばかりですが、楽しんでいただけたら幸いです。たまーにえっちぃことやグロテスクなことを書くこともありますが、タイトルの横に()付きで注意書きしておきますね。

最近の記事

「廊下に立ってなさい!!」

「廊下に立ってなさい!!」  私が担任教師にそう命令されてから、幾年経っただろうか。 今まであった大きなことといえば、インフルエンザの絶滅、国としてのb国の分裂、c国による東南アジア経済圏への核ミサイル発射。 校舎は廃校となり、窓ガラスは全部割れて、壁や床にはところどころ穴が空いている。 目の前には梅雨の雨がしとしと降っている。

    • 【書きかけの設定】還元されつつある白と黒の世界のディストピア、その2

      その生物は地球が黒い雲に覆われる以前から存在していたらしい。 古い文献に書いてある。 私は"甲冑"に乗り込み、地上に出る。 彼らを観察しにいく。 暗闇のなか、ライトに照らされた白い肉塊がぼんやりあらわれる。 ライトを水平に動かすとその白い肉塊が広範囲に無秩序に連なっているのがわかる。 まるで巨大な穴あきチーズが大地を覆っているようにも見える。 また大きくなっている。 私は以前観察したときに撮影した画像と見比べた。 地表を覆いつくしている毒ガスを餌としている嫌気性のバクテリアが

      • 【書きかけの設定】還元されつつある白と黒の世界のディストピア、その1

        "雪"が降り続ける。なぜか積もることはない。大昔、空は青かったという。今は常に黒い雲に覆われている。昼や夜という概念もあったようだ。僕らは常に暗闇のなかで生きている。僕は"甲冑"の中に入り、"地上"へ出る。"地上"は有害な毒ガスが発生しているため、僕らは"甲冑"なしでは活動できない。僕がこうして地上で"雪"を眺めていられるのは"甲冑"のおかげだ。真っ暗闇に"雪"の白さが映えるのは、ディスプレイ越しでもきれいだと思う。 "甲冑"はかつて古い人類が戦争に使っていたものだという。

        • 私は外来種

          遠き過去の友人たちへ。 もしくは少し過去のあなたへ。 数歩、数万歩先の未来から私は手紙を書いている。 私は外来種だ。 この国ではとりあえず、そうなる。 私はこの国の人間ではない。 数年前からこの国に住み、外来種の認定を国から受けている。 人間外来種指定法。 この国だけではない。 世界中のどの国でもやっていることだ。 生き物の絶滅は絶えることがなく、さらにその勢いを増しつつある中、固有種を守り外来種を駆逐するもしくは管理しようとする動きも活発化してきた。 そのなかで人間も生

        「廊下に立ってなさい!!」

          文化を滅ぼしたのは誰か

          インターネット上で数十万作もの漫画全巻をタダ読みできる「マンガ共和国」のサイト管理者たちが逮捕された。 国際的に著作権保護の意識が高まり、違法ダウンロードを取り締まる、極めて拘束力の強い国際法が制定された。 これにより他国のサーバを使っての脱法が無意味となり逮捕者が続出、著作権を侵す違法サイトは激減していった。 ただ「マンガ共和国」は技術者がサーバを分散、かつ絶えずデータの移動を繰り返していたため、数十年も大本がつかめずにいた。 その技術者が老衰で死亡したときに隙が生

          文化を滅ぼしたのは誰か

          格闘家たち~ブラジリアン柔術から得たもの~

          ブラジリアン柔術をはじめて6年になる。 はじめた理由はブラジリアン柔術がITエンジニアの間で流行ってるというWebの記事を読んだことからはじまる。 アラサーになったあたりで健康が気になり出してスポーツを始めようと思っていたのだが、ただ機械の上で走ったり筋トレして逞しくなった自慢をすることが虚しいようにしか思えなかった。 身体に苦痛を与えて得られる充足感が息切れしないとかボディラインだけというのは俺には耐えられそうになかった。 そこで格闘技だ。 勝ち負けがある。 体力だけでなく

          格闘家たち~ブラジリアン柔術から得たもの~

          あの娘、どこまでいったんだろう?

          今思えば、片思いだったのだろう。 フルスイングでメンヘラな女の子。 いつも彼女は自分を探していた。 バンド活動をやってみたり、漫画やイラストを描いてみたり、動画配信をやってみたり、どれも中途半端に終わった。 今は小説を書いているが、どこかに持ち込むわけでもネットで公開するわけでもない、書いているといってるだけなのだろう。 生まれつきのルックスと化粧と衣服のセンスだけはよく、男が尽きたことにない。 四ヶ月持てばいい方で、長続きはしない。 「自分には女しか価値がないのかもしれな

          あの娘、どこまでいったんだろう?

          格闘家たち~我突くゆえに我あり~

          私は降旗順一郎、45歳。 昼間は印刷所勤務、夜は空手家です。 空手はフルコンタクト、顔面突き以外は直接打撃制の空手です。 得意技は中段前回し蹴りですね。 相手の腹を脛で蹴ります。 間合いが遠いと、中足で蹴ることもあります。 特に試合に出るわけではなく、大きな怪我をすることもなく、28年間、淡々と続けて参りました。 ときに思うことなのですが、顔面突き無し、パンチで顔を殴らないルールはプロではないプレイヤーからするとよくできています。 まずは顔への攻撃の頻度が下がって、一般人も

          格闘家たち~我突くゆえに我あり~

          やさしくなりたい~格闘家たち~

          もううんざりだ。 どこを見ても悪く言われてる。 主にネットでだけど。 あの試合とは関係もない、ありもしない憶測なんかも、本当のことのように出回ってる。 魔女狩りかよ。 心底、うんざりする。 つい十日前、総合格闘技の試合に出て、対戦相手の腕を折って勝利した。 試合前と試合中にいろいろあって、対戦相手とレフェリーに対する怒りをリング上でぶちまけた。 その結果、なぜか俺だけが非難され、この世の理不尽を思い知らされた。 上四方固めからの腕絡み。 キムラロックとも言われている、肘と

          やさしくなりたい~格闘家たち~

          スクラッチャー&スクラッチャー ~格闘家たち~

          強さには多くの方針がある。 勝ってほしいものを力ずくで手に入れる強さ、決して負けず奪われない強さ、何があったとしても揺るがない強さ。 それぞれが尊い。 だからこそ、人は強さに憧れる。 すべての格闘技選手、格闘技ファンのほぼすべてがそうだろう。 そしてその強さを見たい、見せつけたい、教えたい、普通はそう考えるだろう。 僕はまったくそう思わない。 僕はキックボクサーをしている。 某キックボクシング興行、フェザー級ランキング六位。 そのことを恥じたりはしない、むし

          スクラッチャー&スクラッチャー ~格闘家たち~

          部屋と揚げ餃子となにか

          一日目、最初は気づかなかった。何もないが思ったより清潔なところだった。部屋の隅にブラウン管テレビが置いてあった。 二日目、夕食の揚げ餃子が少なかった気がしたが、外にいる男がつまみ食いしたんだということで納得した。 三日目、テレビにはじめて電源をいれた。なにも映らない。ここにはアンテナもコンセントもない。 四日目、シャワーを浴びているときに背中で気配がした。振り返ったがシャンプーが目に入ってイラついた。 五日目、揚げ餃子がなかった。 六日目、犯人を見つけた。特定した。

          部屋と揚げ餃子となにか

          僕とお父さん(グロテスク)

          僕が二歳のとき、お父さんがお母さんとお兄ちゃんを殺しました。お母さんは髪をつかまれて何度も床に頭を叩きつられ、血まみれになって死にました。お兄ちゃんは水の張った浴槽に沈められて死んでいきました。お父さんはよくわからないことを怒鳴り散らしていました。 僕が五歳のとき、お父さんがお母さんとお姉ちゃんを殺しました。お母さんは包丁で滅多刺しにされました。お姉ちゃんはタオルで首を絞められてどんどん赤黒くなって、最後に青黒くなって死にました。お父さんはニタニタと笑顔でした。 僕が十歳

          僕とお父さん(グロテスク)

          こんにちは、さようなら。(宇宙さんからみなさまへ)

          こんにちは。 私は宇宙。 突然で申し訳ないが私はそろそろ破裂する。 君たちがその説を語ってきたように私は膨張を続けてきた。 風船に限界以上に空気を入れるのと同様だ。 私は破裂する。 仮説だろうが根拠のある科学的実証があろうが、それはやがてもうすぐ起こるだろう。 破裂したらどうなるのだろうか? それは私にもわからない。 そもそも私は君たち人間が現れるまで、私が宇宙だということを知らなかったのだ。 君たちという客観がないと私は私を認知できない。 君たちが言葉

          こんにちは、さようなら。(宇宙さんからみなさまへ)

          駅のホームと地縛霊

          いつからこうしてたのかは、もうわからない。 忘れた。 僕はとある駅のホームにいる幽霊だ。 いわゆる地縛霊さまさまだ。 もう当時のことはあんまり覚えてはいないんだけど、徹夜明けでフラフラしてるところで駅の階段から落ちて死んだ。 当たりどころが悪かったんだろね。 気がつけば担架に運ばれていく自分の体においてけぼりにされていた。 おかげで今は、ホラ、透け透けボディのご覧の通り。 普段は四番線から八番線の間をフラフラしてる。 一番線から三番線へはなぜかいけない。

          駅のホームと地縛霊