【書きかけの設定】還元されつつある白と黒の世界のディストピア、その1

"雪"が降り続ける。なぜか積もることはない。大昔、空は青かったという。今は常に黒い雲に覆われている。昼や夜という概念もあったようだ。僕らは常に暗闇のなかで生きている。僕は"甲冑"の中に入り、"地上"へ出る。"地上"は有害な毒ガスが発生しているため、僕らは"甲冑"なしでは活動できない。僕がこうして地上で"雪"を眺めていられるのは"甲冑"のおかげだ。真っ暗闇に"雪"の白さが映えるのは、ディスプレイ越しでもきれいだと思う。

"甲冑"はかつて古い人類が戦争に使っていたものだという。どんな弾丸も貫くことができず、核兵器の熱量にも耐えられる金属で覆われた"甲冑"はさぞや有用だったことだろう。電気抵抗も密封性も高く、内部駆動系も厳重に守られている。欠点は人が搭乗して操作せねばならないこと。"甲冑"と戦闘をする際、最も効率的な制圧手段は甲冑を傷つけるのではなく、中にいる人間を衝撃を与えて行動不能にすることとなる。つまりはぶん殴るか、高いところから落とすか。自動運転ではなく、人間が搭乗して運転せねばならない理由は未だなぞのままだ。

地球でできた最も新しいルールはずばり、火気厳禁。
古い世代のやつらが使っていた銃器やミサイルはあるが使えない。
地上は可燃性のガスが発生している。
運が悪ければ、発射した途端に発火してボンっだ。
まあ地上に出るときは"甲冑"の中だから俺たちは痛くも痒くもない。
ただ貴重な火薬が無駄になるだけだ。
火が使えるのは地下の人間が生活している空間だけだ。
可燃性ガスは比重が軽いのかどうかわからないが、地下五百メートルまでは来ないようだ。
地上で戦争をするときは"甲冑"での殴り合いになる。
"甲冑"が優れていて、火が使えないがゆえに、なかなか死人が出ない。
それゆえに終わらない戦争。
でも戦い続けないといけない戦争。
過去の人類史を読むと、限られた資源を巡って人々は争っていたという。
土地、地下資源、水、金、市場、それと正義とかいう自尊心。
俺たちも似たようなものだ。
人類史では人間がたくさん死んでいた。
現状の日常と化している戦争と比べると、なんと華々しいのだろうか。
今の均衡をよしとする者が多い。
しかし俺たちの生活の糧を奪おうとしている輩を、俺はブチ殺したい。
俺自身がより良い"甲冑"を作れればよいのだが、今の技術力は過去の人類のそれには到底及ばない。
そして俺は不恰好な"甲冑"を駆って遺跡を巡り、より強い"甲冑"探しに明け暮れている。

植物を植え続けて何世紀経ったのかはもう定かではない。地上が嫌気的な環境になり、多少の抵抗を試みているがやはり日光を遮られているのが最も堪える。光合成は日光がなければ働かない。酸素のない原始の地球を変えてきたのは葉緑素を持った植物たちだが、地上に光が届かない現状では地球の歴史の再現は難しい。今は忌まわしいあのガスを使った発電で作った光で植物たちを活かしている。あの地下爆発災害から数百年、いや、千年か?地上で満足な酸素を吸うことは不可能だ。今まで通りの努力ではもうどうにもならないだろう。せめてあの黒雲を払えればいいのだが。

(引き続き、文献を収集中)

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