駅のホームと地縛霊

いつからこうしてたのかは、もうわからない。

忘れた。

僕はとある駅のホームにいる幽霊だ。

いわゆる地縛霊さまさまだ。

もう当時のことはあんまり覚えてはいないんだけど、徹夜明けでフラフラしてるところで駅の階段から落ちて死んだ。

当たりどころが悪かったんだろね。

気がつけば担架に運ばれていく自分の体においてけぼりにされていた。

おかげで今は、ホラ、透け透けボディのご覧の通り。

普段は四番線から八番線の間をフラフラしてる。

一番線から三番線へはなぜかいけない。

地面以外をすり抜けられるこのスマートな幽霊ボディも三番ホームの見えない壁に阻まれる。

また駅のホームからもなぜか出られない。

見えない壁がある。

成仏させてください、と思うことはなく、意外と退屈していない。

ただでさえ人通りの多い駅だ、 つまりは美人やかわいい女の子を見かけることが多い。

スーツをキッチリ着こなす綺麗な人、ミニスカの女子大生、チェックのスカートの女子高生、たまに和服美人もオタサーの姫やってそうな娘も。

しかも日本には四季がある。

同じ人でも季節ごとに装いが異なるのだ、こんなに目が楽しいことはない。

肌を露出する春夏もいいが、つつましい秋冬も最高だ。

日本という国の素晴らしさを語るならば、かわいい女性が多い……というよりかはほとんどの女性が自分を演出する余裕がある、ということを僕は声を大にして言いたい。

死んでることを悔やむとしたら、たとえ声を大にしても僕の声がまったく誰にも届かないことなんだけどね。

そんなこんなで女性をウォッチングするだけで1日終わってしまう。

生きてるときにはできなかった楽しさだ。

眺めるだけならば問題ないし、変態と言われようがもう死んでるから痛くも痒くもない。

そういえば……死ぬまでできなかったなあ、彼女。

まー、おかげであと腐れないんだけどね。

ポジティブすぎる地縛霊ってどうなんだろ。

答えの出ない問題だな。

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