母のお弁当リプレイ。
私は高校生の頃、毎日お弁当だった。
母手作りのお弁当。
自慢ではないが、当時は自分でお弁当を作ったことなんて
一度もなかった。
甘えまくり〜。
「いやいや、やりなさいよ。」
という声が聞こえてきそうですが今は昔。
あぁお母さんのお弁当は美味しかったなぁ(笑)
でも、母は毎日大変だったろうな…
今更ですが、本当にありがとうございます。
あ、後で電話で直接言おう。
でも高校を卒業してからは私が上京したこともあり
離れて暮らしていた為、
母のお弁当を食べることもなくなった。
そしてそれに関して、特に淋しいという感情もなく
すっかり忘れていた。
突然話は変わるが、私は20代後半になるまで
車の運転免許を持っていなかった。
その後色々あり、免許をとろうということになった。
そしてその舞台は、地元の自動車教習所に決まった。
教習所へは、ほぼ毎日通った。
そして、ここで久しぶりに母のお弁当が再登場することになる。
毎日お昼休憩を挟み、ほぼ一日中教習所にいる私。
お昼は適当にパンなどで簡単に済ませようと思っていた。
しかし、母からお弁当の提案があったのだ。
「お弁当作るよ〜」
お弁当の提案は私のことなのでもちろん受けたが、
そのあと珍しく私は少し悩んだ。
もともとは自分が教習所行くために
その間たまたま実家に帰ってきているだけ。
しかも母親はまだ現役で仕事をしている。
あまり迷惑をかけないようにしようと思っていたのに。
しかし母はこう言った。
「久しぶりにお弁当作ってあげたい」
そんなこと言ってもらえたらもう決まりだ。
甘えまくりな私にとってはそれはもちろん有り難い提案だし、
正直に言えば、また久しぶりに母のお弁当が食べたくなったのだ。
つまり、交渉成立。
私はバンザイである。やった〜。
期待していなかった分、なんだかものすごく嬉しかった。
それからは毎日私は母手作りのお弁当を持って教習所に通った。
お昼ご飯には母お手製の美味しいお弁当を食べ、
また午後から講習に励む。
私は懐かしさと美味しさで、顔がほころんでいた。
母のお弁当はやはり懐かしい感じがした。
お弁当のおかずが「昔のまま」なのだ。
大体前日の残りものがお弁当箱の半分を占めるが、
私は母の料理が美味しくて大好きなので、正直何でもいいのだ。
ただ、いつもの残り物たちもお弁当箱に入ると
さっきまでとは違う顔をしているのが
なんだか妙に面白かった。
時々、お昼に学生さんの集団に出会うこともあった。
そんな自分よりも全然若い学生さん達のいつものお昼ご飯は、
菓子パンやカップラーメンなどが多かった。
その中で私だけが、家から持参のお弁当。
しかも、母親の手作り弁当である。
それを一人で想像していたら、なんだか少しくすぐったい感じがした。
まぁその場で私はかなり浮いていたかもしれないが、
私としてはそれよりも
この環境で自分だけが手作りのお弁当を食べているということに
ちょっと感動していた。
手作りのお弁当を食べている私って、
実はすごく幸せなんじゃないか…
この時の気持ちは今でもよく覚えている。
このことを思い出す度に私はいつもあったかい気持ちになるのだ。
そしてそれと同時に、母に心の底から感謝した。
こんな風に母のお弁当を食べられる機会は
もうこれからはあまりないかもしれない。
家の料理とはまた違う、母のお弁当。
中身はいつもの母の料理と一緒なのだが、
お弁当箱に入ることで
また特別なものに変身を遂げる。
こんな形でまた母のお弁当に再会できるとは。
すごくすごく嬉しかった。
提案してくれてありがとう。
ちゃっかりその提案に乗らせていただきました。
久し振りに食べた母のお弁当は
私の中での母の存在をまたさらに
大きくしたのだった。
ただいま〜。
今日のお弁当も美味しかったよ。
いつも本当にありがとうね。
また明日もお母さんのお弁当
よろしくお願いします。
その時の記憶を思い出す度に
母のお弁当を
これから何度も思い出すのだろう。
ではまた。
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