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感想

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映画や小説、漫画や記事の感想です。 Photo by Christopher Sardegna on Unsplash
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#感想

いつまでも浸っていたい。全身で。『モーヴ色のあめふる(佐藤弓生)』感想

いつまでも浸っていたい。全身で。『モーヴ色のあめふる(佐藤弓生)』感想

2022年8月、熱帯夜。
体温と同じくらい熱がこもった寝室で、冷房が利くのを待ちながら。
Twitterで奇書が読みたいアライさん(https://note.com/kisyo_arai/)のおすすめを拝見し、勢いよく本書を買いました。
Kindleだけれど、確かに勢いはあったように思う。

現代短歌の歌集を読むのは、ほとんど初めてと言って良いかもしれません。
なので、常識から外れた感想を書いてい

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死の気配の中、ひとつの光がともる。『煌夜祭(多崎礼)』感想

死の気配の中、ひとつの光がともる。『煌夜祭(多崎礼)』感想

深い青の表紙と、綺麗な表題に惹かれて購入しました。
紹介文からジャンルを想像する程度で、特に前知識もなく読みだす時の、わくわくする感覚が好きです。
やがて読者の想像の世界にあらわれ始める風景は、人々は、どんな風に絡まりあってどんな物語を織りなすのか。

渦を描くような見た目となっている地図「十八諸島臨海図」が、最初に掲げられています。中心には王島イズー。その島を中心として、三つの同心円が描かれ、そ

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美は想像しても、しなくてもいい。

美は想像しても、しなくてもいい。

サモトラケのニケが、好きです。
初めて見たのは、美術の教科書の裏表紙にあった写真でした。

「ニケ」とは、ギリシャ神話における勝利の女神の名前です。

大理石でできたその彫像は、首から上、両肩より腕を損失し、おおきく広げた翼を持つ女神の姿をあらわしたものです。やわらかな身体の輪郭を強調するように、衣服は肌へ貼りつき、つよい風が吹いていることを見る者に想起させます。
私はこの像が、ずっとずっと好きで

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わたしのおくすり。つらい時の処方箋。たらればさんの記事を読んで思ったこと

わたしのおくすり。つらい時の処方箋。たらればさんの記事を読んで思ったこと

謹直にして篤実、さらに頭脳明晰なおかつユーモアもあるたらればさん。
Twitterにて遠くから勝手に応援させて頂いています。

私は記事タイトルのうち「管理職が苦手なきみ」の側の人間ですが、それは私の職場にいる管理職の人柄から感じるのであって、実際は人間関係の軋轢に悩む、精神的にもきつい職業なのだろうと……想像しています。

大変だなあ……、と記事を読みながら(ごめんなさい)、自分の身につまされる

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吉本ばななさんの本を久々に読んで救われた話

吉本ばななさんの本を久々に読んで救われた話

久しぶりに、吉本ばななさん著「体は全部知っている」所収の「みどりのゆび」を読んだ。

私はかつて吉本ばななさんの文庫本を買いあさり、特に好きな本は何度も何度も読んでいたほど、ハマっていた。

お気に入りの本を挙げたら枚挙にいとまがない。
「キッチン」はもちろん、「デッドエンドの思い出」「チエちゃんと私」「High and dry(はつ恋)」「海のふた」「ハチ公の最後の恋人」「みずうみ」「王国」シリ

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『私のジャンルに「神」がいます』で「神」のいない話について

『私のジャンルに「神」がいます』で「神」のいない話について

二次創作界隈をグルングルンギャリンギャリンと席巻した本を、買った。

この作品がTwitterで公開開始された当初、ほぼロム専でのんびりとTLを追っていた私は、文字通り驚愕した。

一次創作でも二次創作でも絵描きをしている、Aさん。
別ジャンルで二次創作の小説を書いている、Bさん。
もちろん二人に何ら接点はなく、その他にも多種多様な人々が、TL上でなんだかよく分からない同一の単語を使っている……

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