The Basement Texts

拙ブログ(現在は日記を毎日更新) http://penguin-pete.cocolo…

The Basement Texts

拙ブログ(現在は日記を毎日更新) http://penguin-pete.cocolog-nifty.com/blog/ にアップした過去のテキストからの幾つかを加筆・修正してここに再録。時々、新しい記事もここにアップする予定です。

マガジン

  • 【詩集】The Letter

  • 【小説】七つのラーメン・『旗』その他の短編

    拙ブログ「ペンギンビート急行」に2006~2007年頃、アップした短編小説集。尚、本文と写真のラーメンは関係ありません。These all novels dedicate for memory of Makoto Shimomura.

  • 【旅行記・散策記】終わりのない散歩

    ボブ・ディランの自伝は章立てになってはいても時系列ではない。こういうのもありなのかと思い、これも拙ブログからランダムに転載。

最近の記事

My Humberger Stomp

一つとして同じ顔はなく そのうえ ニヤリと笑って見える トマトの赤が はみ出ていると 舌を出しているようで なあんだ ストーンズのロゴかと思ったぜ 口のデカさを競うみたいに 齧りついたら 口の周りに付いたケチャップが 血に見えて 噛みつかれたのは こっちかと マジ、ビビったよ ハンバーガー チーズバーガー ベーコンレタスバーガー 美味けりゃ床で踵を鳴らせ トマト ピクルス レッドオニオン 窓の外は 土曜の午後のジャムセッションと アメリカまで続く空の青 ニューオリンズ

    • 2024.4.6 ジェイムス・テイラーのコンサートを見に行った。

       有明の東京ガーデンシアターにジェイムス・テイラー(以下、J・T)のコンサートを見に行った。こうして外タレ(という言葉はもう死語か?)のコンサートを見に行くのは誰の、何時ぶりだろうか?思いだせない。初めての会場は音が良く、席も思ったより見やすい場所で控えめに言って最高だった。J・Tも御年76歳。声が衰えたというような記事を何かで読んだが、あれは衰えたというのではなく深みが増したと言うのだよ。 バンドメンバーはジミー・ジョンソン(b)、ディーン・パークス(g)、スティーブ・ガ

      • The Subterraneans デビューアルバム『All Doors are Open』のために~"再生"のうた

         ワイヤレスヘッドホーンで世界と自分を遮断するかのようにストリーミングの音楽を耳でがぶ飲みする姿は美しくない。そう思っていたら昨今はまたカセットテープがブームなのだとか。それで先日、中目黒の『Walz』へ行った。世界中のアナログ音楽マニアの聖地と言われるカセットテープの専門店。だがそこでテープは郷愁など微塵も感じさせずに最新のメディアorアートフォームとして『宝石箱』の輝きを放っていた。世界への愛と直接性を取り戻そうとすることの暗喩。初めてマテリアルとしてのカセットテープを美

        • 缶チューハイのブッダ

          十一月 空は雲一つない快晴 窓から富士山がキレイに見える 昨日、部屋干ししたままの洗濯物を全部外に出し なおかつ今日の分の洗濯をする それと食器洗いと掃除 9時半頃、朝のこの気分をもっと 満喫したくて散歩に出かけた 最近はなんでもスマホでばかり写真を撮っているが 久しぶりに野鳥でも撮れればと デジカメを持って川沿いを歩く ハクセキレイ セグロセキレイ キセキレイ 鷺 カワセミ そして 取り込んだ音楽と FM局のラジオが聞けるウォークマンを聴きながら 歩いているうちに10

        My Humberger Stomp

        マガジン

        • 【詩集】The Letter
          44本
        • 【小説】七つのラーメン・『旗』その他の短編
          7本
        • 【旅行記・散策記】終わりのない散歩
          2本

        記事

          To Vodka

          秋 途絶えた日記帳の 白いページの中から 突如 神の化身の如き数頭の馬たちが駆け出して ぼくの空に 馬蹄形の足跡を残して走り去る 外れた気象予報士や 海図を読み違えた 航海士の気持ちを知りたければ 君も馬券を買うこと 突然の稲妻と予期せぬ潮の流れが あの5歳牝馬の 血の中にもあるから 暮れるに早い11月のメイン・レース 第四コーナーから最後の直線で ついに明らかになるミステリーの結末に 群集は叫び、驚愕し やがて誰もが 巨大な寂寥に散乱する 一個の漂流物になる 「長らく

          エデンの夏

          水しぶきや歓声がそこら中でしていたのに 鉛色の雲に雷鳴が響くと  ぼくらは二人きりになった 水からは上がらずに 立ち泳ぎで顔だけ出して 魚眼(フィッシュ・アイ)であの日見たのは 丸い空に稲妻ー 入江に風が吹き、空に海が映っていた 沖を行く船が雲に浮かび 水着の君が空を泳いだ 仰向けでゆらゆらと 水を蹴る長い脚を 不思議な生き物のようにずっと見ていた 得も知れぬ狂暴な感情に 叫びたくなるたび 空が光った 罪もないのに罰を受けるなら このままがいいと 君が笑ったのは エデ

          八月の菓子

          誰も食べたことのない菓子の味を知るためには 食べたことのある人から聞くしかなくて でも近ごろでは食べたことのある人は段々に減って その味がどんなものであるかはようとして知れない   思えば自分が子どもの頃は 食べたことのある大人が周りに沢山いて 麦酒<ビール>なんぞを飲んだ折りなど こちらから聞かずとも語ってくれたもの ある叔父は口をすぼめて目を固く閉じ あれはすっぱいものだと言い  ある叔父は顔を真っ赤にして あれは辛かったと涙目に語った 何故だが中には鼻息荒く 何をそん

          Ground

          月光の海の その無音の群青に いつまでも身を浸していると 魂はいつしか 降り注ぐ光の矢から スローに逸れて クラゲのように 水没した古(いにしえ)の神殿を あても無く 漂い始める 魚群は銀色の腹を見せて翻り 命は嬉々として 肉体を抜け出ようとする この水の惑星の 圧倒的な美に犯されて 鯨よ 僕は この甘美な死のミステリーに もっと深くダイブしたい 頭上ではゆらゆらと 光が 出口へと手招く 浮上を試みると 海底で鳴る 鍵盤の一つ欠けた 19世紀の 古いピアノ

          Skypeを待つあいだ

          Skypeを待つあいだ 火山が噴火した 遠い国にいる君も この国にいる僕も その音を聞かなかった Skypeを待つあいだ ウィリアム・ブレイクを読んだ 正確には ブレイクについて書かれた 本を読んだ 「想像は吾が世界である」と 神秘的な詩人は言った Skypeを待つあいだ 時差について考えた ディスプレイに映った君は ほんとうに君だろうか? あの光を放つ星さえ 遥か昔に 消滅している かもしれないのに Skypeを待つあいだ 「イマジン」を聞いた 通信技術の進歩で 世界

          Skypeを待つあいだ

          五月の詩~To EL

          何が 春に終わりを告げたのかは 誰も知らない ただ 初夏の風が 手紙のように届けられ       僕らは また 街路樹の緑を読む 嗤う花  その蜜を探り当てる蜂の羽音 白いシャツを着た休みの国の 誰もが美しい詩句になる街角で 見ろ 泡立つビールの向こう 郵便配達夫に成り済ました天使が       蕎麦屋の暖簾を ハイタッチしていくぞ 濃い影が 全世界を 足下で支えているという真昼の幻想             「メキシコ湾流と偏西風の影響で 緯度ほどに寒くはないの

          五月の詩~To EL

          いつもよあけにもどってくるきみ

          そんなところにすわっていないで このふとんにおはいりよ へんなことはしないよ ただもういないきみの たましいのかたちをたしかめたいんだよ いないけど いるきみよ なのにきみはまた まどをとおりぬけ きょういちにちにとけてしまう べらんだのぜらにゅうむや きぎでなくひよどりや あさの  あのうつくしいひざしのなかへと わたしのなかにもとけているね しょなのかのあさ ゆめにあらわれたきみをだきしめると すっと、わたしのなかにおさまった いらい きみはわたしを でたりはいっ

          いつもよあけにもどってくるきみ

          Just passing trough~to Hans Coper

          古代美術に触れ その作者にまで想いを馳せる人は稀だ まるで宇宙の創生から すでにそこに在ったかのような 慎ましやかな 作品(もの)たち 一体、これまでどれだけの人間が この星を 通り過ぎて行ったことだろう? 無名性に没し その歓喜や苦難の  一切を語らずに     ☆ How?の前に Why? 人はとり憑かれたピアノの調律師のように 幻の絶対音程に近づこうとする※ と  ハンス・コパーは言った だが 聴診器をあて探り当てたのは 狂った音階ではなく 不思議な形をした 自身

          Just passing trough~to Hans Coper

          手、あるいは静止した惑星 to Lucie Rie

          轆轤(ろくろ)を楽器にして 独自のフォルムを奏で続けた手 <いや、違う アルビオン・ミューズの 自宅兼工房のキッチンで ケーキとコーヒーを準備する 老女のありふれた手 > 轆轤の回転は 惑星の自転に似ている その時 作品を仕上げる彼女の手は 創世記の神の それに似ている <鉢や花器の形をした無数の星々> 伝統とは拒否するものではなく 服従するものでもない それは生活の道具の中に 常に新しく在るべきもの 敬愛した物理学者への オマージュである造形と 元素記号による暗号化

          手、あるいは静止した惑星 to Lucie Rie

          花とカメラ T.Sに

          美しいものを見るためには 身をかがめねばならない フンコロガシのフォルムに見惚れた アンリ・ファーブルのように   だが君が残すのは 書物ではなく一枚の写真 多分 野の花を引き抜いてしまわぬために カメラは発明された 低く咲く花の色を 地の鎖から 空に放すために 冬の朝 霜の白さの隙間から シャッターを切る音が聞こえる かがむとそれは  花が瞬きする音だ シャッタースピード1/125  絞り5.6 花は君のカメラを 美しいと思っている 美しいものを見るためには 空を見

          花とカメラ T.Sに

          さよなら

          年老いた太陽が いつまでも水平線に触れずにいる 時計は止まったままで ぼくら ずっと夕暮れの中にいる あの時 きみにさよならを言って良かった 二人が知らなければならなかったことは 二人でいたら  きっと知り得なかったことだから あの時 きみにさよならを言って良かった 賑やかなお喋りを止めなければ 貝殻の音楽に  二人は耳を澄ますこともなかったから 白紙のページの砂の上の 幾筋もの足跡がつくる幾何学模様 上空を飛ぶカモメは そこに どんな物語を 読み取とることもしない

           市街地の真ん中の  発掘現場に  古い溝が出てきた  大人の背丈より  深く  飛び越えられぬほどに  広い    古代の  防御のための溝だというが  内側にいる人を  外に出れないようにするための  溝を  掘ったこともある  隔離のための溝と  防御のための溝は  似ていた  その違いは  どちらが  内側で  どちらが  外側なのか  による    権力者にとって  右側から左側への  越境者にとっては  右側が内側で  左側が外側  左側から右側への