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To Vodka


途絶えた日記帳の
白いページの中から
突如
神の化身の如き数頭の馬たちが駆け出して
ぼくの空に
馬蹄形の足跡を残して走り去る

外れた気象予報士や
海図を読み違えた
航海士の気持ちを知りたければ
君も馬券を買うこと
突然の稲妻と予期せぬ潮の流れが
あの5歳牝馬の
血の中にもあるから

暮れるに早い11月のメイン・レース
第四コーナーから最後の直線で
ついに明らかになるミステリーの結末に
群集は叫び、驚愕し
やがて誰もが
巨大な寂寥に散乱する
一個の漂流物になる

「長らく神の傑作(マスター・ピース)は
人間の♀と思っていたが
どうやらそれは
間違いのようで」

週末 
ぼくは競馬新聞を買い
大通りに面したカフェのテーブルで
性懲りも無く また
ダートの砂埃と
緑の芝が波打つ海に
牝馬(びじょ)の末脚を求めて

航海に出る


かつてぼくを虜にした伝説の名馬へその頃書いた詩。今日久しぶりに東京競馬場に行ったらその像の前で家族連れが写真を撮っていた。

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