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Ground

月光の海の
その無音の群青に
いつまでも身を浸していると
魂はいつしか
降り注ぐ光の矢から
スローに逸れて
クラゲのように
水没した古(いにしえ)の神殿を
あても無く
漂い始める

魚群は銀色の腹を見せて翻り
命は嬉々として
肉体を抜け出ようとする
この水の惑星の
圧倒的な美に犯されて
鯨よ
僕は
この甘美な死のミステリーに
もっと深くダイブしたい

頭上ではゆらゆらと
光が
出口へと手招く
浮上を試みると
海底で鳴る
鍵盤の一つ欠けた
19世紀の
古いピアノ


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