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2024.4.6 ジェイムス・テイラーのコンサートを見に行った。


 有明の東京ガーデンシアターにジェイムス・テイラー(以下、J・T)のコンサートを見に行った。こうして外タレ(という言葉はもう死語か?)のコンサートを見に行くのは誰の、何時ぶりだろうか?思いだせない。初めての会場は音が良く、席も思ったより見やすい場所で控えめに言って最高だった。J・Tも御年76歳。声が衰えたというような記事を何かで読んだが、あれは衰えたというのではなく深みが増したと言うのだよ。

バンドメンバーはジミー・ジョンソン(b)、ディーン・パークス(g)、スティーブ・ガット(dr)、ケヴィン・ヘイズ(Key)、アンドレア・ゾン(Fid.vo)、ケイト・マルコウイッツ(vo)、ドリアン・ホリー(vo)の面々。

 青を基調とした背景のステージにこのアメリカ音楽界の巨人(と言ってももう良いだろう)はステージ右袖からトコトコと歩いて現れた。実際に背が高いのでステージ映えがする。そして彼が椅子に座りアルペジオをつま弾いた瞬間にここがとんでもなく音が良い会場なのが分かった。

初めて来ました。音が良い!

 今回はアジア、オーストラリア、ニュージーランド、ハワイ等を回るツアーで、今日のこの東京がその初日。前半、演奏がやや固い印象を受けたが、それはギクシャクしているというのではなく"律儀"といった風。そして間のMCが朴訥としていながら品とユーモアがあって、英語をもっと勉強しておけばと早速に後悔した。こちとら何を言っているか察することができる程度のヒアリング力。友人だったジョン・ベル―シの死について語られ、紹介された『That why I'm here』の件、もっとちゃんと話が分かれば、と思った。

 演奏も会場も『Country Road』あたりから固さが取れて、その後はもうネット動画などで見られる、例のJ・Tのコンサート。自分と息子が座った席の後ろはアジア系アメリカ人(多分)の方々で、その後、一曲ごとに合唱していた。彼のネット動画、DVD等でも良く客席にカメラが向けられていて、客は皆一緒に歌っている。アメリカ人がいかにJ・Tの歌を愛しているかが分かるところだが、自分の後ろはその再現だった。『Handy Man』『Mexico』『Steamroller Blues』『Carolina in my mind』『How sweet it is』(順不同)等、知った曲が出るとおお!と自然に声が出てしまい、後ろからの歌声も聞こえて来て暖かい空間だった。

最後までキャップを買うか迷い、買わず。

 今回のこの一夜限りのコンサートのコピーに"変わらないから新しい"と言うのがある。それを見て、自分は以前、フランスの女流作家フランソワーズ・サガンとマルグリッド・デュラスを比較して、デュラスを、その声色の多様さを味わう作家、サガンを、一つの声で最初の天才を歌い続けた作家、と書いたことを思い出した。

みゆきとユーミン: ペンギン・ビート急行 (cocolog-nifty.com)

そしてJ・Tはその後者なのではないか、と思った。それをさらに強く思わせたのはやはり『Fire and rain 』。

幼なじみスザンヌ・シュナ―の自死、自身のドラッグ禍への自罰感、バンドでの挫折などを綴ったこの曲が彼の最初の天才。そして"もう一度、きみに会えると思っていたよ、スザンヌ"という最後のフレーズに、これまで世界中のどれだけの人がそれぞれの思いを重ねたのだろうかと思った。そして同曲の、"一人の友達も見つけられない孤独な日々"といラインへの返答としてキャロル・キングが書いた"You've got friend"を。

 後半に彼の奥様がコーラスに加わったあたりから自分にはある期待があって、それは故・小沢征爾氏のこと。J・Tは奥様を通じて故人と友人同士だったのは有名な話。

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 自分は最後に前半に語られたジョン・ベル―シの墓前でアカペラで歌われたと言う『That lonesome road』が歌われるのではないかと勝手に思った。だがそれが思い過ごしのようにステージは進んで、アンコールがあり、聴衆ももう彼を解放してあげようという雰囲気になりかけた頃、J・Tがメンバーに「あと一曲だけ・・・」のように耳打ちし、人差し指を一本立てているのがスクリーンに映し出されるを見た。

 やはり小沢氏に捧げる曲。だがそれは『That lonesome road』ではなかっく、ギターとコーラスによる『You can close your eyes』。まるで美しい讃美歌のようだった。

 帰り、駅へと続く帰り客に混ざって歩きながら、高校2年生の時、訳も分からず見た(それを機に自分の教祖(笑)となる)スティービー・ワンダーのコンサートのことを思い出していた。ジャンルはまるで違うが、人間の善性に対する強い信頼をを基にした音楽というところは同じ。多幸感で周りの皆が笑っていた。暖かく、素晴らしいコンサートだった。もし、一夜限りでなく日本でまだツアーをやるようだったら追っかけになってしまいそうだった。それだと金がいくらあっても足りないけど。笑。また来てほしい。
 
 今回はツアーパンフというのは無く、グッズはTシャツ、CD、レコードのみ。息子がTシャツを買った。自分はライブCD2枚組。サブスクでも聞けるのかもしれないが、今回来日記念盤として中川五郎さんが歌詞対訳を完全リライトしているのでそれで。しばらくはこれを聞いて、読んでいよう。

今回の正式なセットリストが欲しい。

息子の、です。

PS. さっき正式にセットリストが発表されているのを見つけた。

【一部】
Something in the way she moves
Rainy Day Man
That's why I'm here
Yellow and rose
Anywhere like heaven
Never die young
Country road
Sweet Baby James
Handy Man
Long ago and far away
Sun on the moon

【二部】
Carolina in my mind
Mexico
Steamroller blues
Fire and rain
Up on the roof
Shower the people
You've got a friend
How sweet it is

【アンコール】
Shed a little light
Your smiling face
You can close your eyes

↓ またセットリストも最近はこういうのもあるのね。便利になったもんだ。

James Taylor Concert Setlist at TOKYO GARDEN THEATER, Tokyo on April 6, 2024 | setlist.fm


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