アフロばばあ 1話「序章」
目からあめちゃんを取り出し、頭をかじる「アフロばばあ」がでてくる物語。
【あらすじ】
化け物が棲むと言われる、通称「怪物トンネル」で頭をかじられた女性遺体が見つかった。彼女が最後に発した言葉は、「アフロばばあ」だった。
その後、違う場所で、同時多発的に不可解な死に方をしていく人物が現れる。
目撃証言から大阪のおばちゃんのような格好をした「アフロばばあ」の存在が浮上。アフロばばあとは何者なのか。主人公柏木奈々が、謎の存在「アフロばばあ」に迫る。
■序章
目の前には、通称「怪物トンネル」が見える。
「頭の大きい化け物が住んでいる」「夜に通ってはいけない」、そう呪文のようにいわれ育った。
だが、今日は言いつけを守る気にはなれなかった。
ひどく疲れた。
実家の大きなベッドで眠りたい。
平川えりはベッドを夢見ながら、公園下にある怪物トンネルへと一歩足を踏み入れた。
じりじりと音を立てる照明の光量は乏しく、不安定だった。遊歩道から続くトンネルは、全長50メートルほどある。
昼間なら出口まで見えるのに、数メートル先しか見えない。チカチカした明かりに眼を奪われていると、平衡感覚が麻痺してくる。
遠回りをしたほうがよかっただろうか。
あまりの薄気味悪さに引き返そうとした。しかし、もう半分まで来ている。このまま行ったほうが、はやいだろう。
そう思ったときだった。
空気が動いた。トンネル内に、何者かの気配がする。
えりはトンネルの出口を目指し、走ろうと足をあげた。
しかしうまく動かない。何者かの気配は徐々に近づいてくる。
古い電灯の音と、自分の息づかい。
何者かの、足音はしなかった。
音がすれば、性別はおおよそ想像できる。
気配は、右背後からだった。確実に、近づいている。
低い音がした。
獣のうなり声のような、くぐもった音だ。少しずつ、少しずつ大きくなる。トンネルで反響し、だんだんとどこから聞こえてくるのかわからなくなる。
何者からこちらを見ているのを感じた。
「ああああ」
右の耳元で声がした。生気のない声だ。恐る恐る右側をみる。
アフロヘアのばばあが立っていた。
口には、不気味な笑みを浮かべている。眼窩は凹んでいるだけで、眼球はない。真っ黒だった。じっと見ていると、吸い込まれそうになる。
アフロヘアのばばあは、手を自分の目に突っ込んだ。黄色と黒色のまだら模様の丸いものを取り、こちらに突き出してくる。
「ああめちゃんああげる」
えりは首を振り、アフロばばあに背中を向けた。何か冷たいものが頭に触れ動く。恐怖のあまり、足がうまく動かない。
周囲を見ると、アフロばばあは消えていた。足の力が抜けて、腰を落としそうになる。
安堵したら、頭が重いことに気づいた。熱い、痛い、おかしい。えりは恐る恐る、自分の頭部をさわった。
悪寒が全身を駆け巡る。ゆっくりと振り返った。アフロばばあが頭を、かじっていた。獣のような鋭い牙で頭に穴を開け、髪の毛を引き抜いていく。
「やめて!」
アフロばばあの手から、あめが落ちた。あめは割れずに、転がっていった。
トンネル内にケータイの着信音『星に願いを』が響いた。
※2話に続く(読んだら、いいねやメッセージをいただけるとうれしいです〜!)
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