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豊臣秀吉の逸話集 その2

 織田信長に仕えることになった毛だらけで全身真っ黒の秀吉は木下藤吉郎という名前を授けられ、その猿とは到底思えない働きが認められて寧々という人間の奥さんまでもらった。この処置に当然家臣たちは大反対したが信長は天下統一のためには犬や猫の力でも借りたいのだ。ましてやこの猿は犬や猫とは比較にならぬほど頭のいい猿じゃぞ!悔しかったら猿回しぐらい出来るようになれ!と家臣を叱り飛ばして黙らせたのだった。藤吉郎と呼ばれるようになった猿と結婚した寧々は当たり前だが、お前みたいな獣は私の前に近寄るな!と猿が家に帰る度にいつも檻に閉じ込めたが、猿がいつも夜にウキー!と鳴いているのに母性を刺激されたのか、猿を憐れに思うようになり、使用人に命じて猿を檻から出してバナナを与えるようになった。当然猿とはセックス出来ないので子供は出来なかったが、それでも夫婦仲は良く、猿でもあんな美人と結婚できるんだと尾張中のブサイクに希望を与えたのだった。

 さて、そんな猿に信長から無理難題に等しい命令が下った。美濃侵攻にあたって墨俣に一晩で城を作れというのだ。牛みたいな柴田勝家や犬そのまんまの前田利家がせせら笑う中、藤吉郎はウキキ!とシンバルを叩いて喜んだ。藤吉郎はフウフウと鳴きながら信長の毛づくろいをし、墨俣に一夜城を見事立てて見せましょうとボディーランゲージで信長に約束したのであった。藤吉郎は猿の配下を連れて墨俣に向かったのだが、その途中で猿狩りにあって捕まってしまったのである。猿の藤吉郎と配下の猿は声を振り絞って吠えた。その声のうるささに耐えきれなかったのか独りの男が現れて猿たちを「うるせい!」と怒鳴りつけた。猿の藤吉郎はその男に見覚えがあった。なんとあの蜂須賀小六ではないか!猿は小六に気づくとウキー!と吠えて自分はあなたに命を助けられた猿だということをアピールしたのだった。小六はその聞き覚えのある猿の声聞くとハッと猿のもとに近寄り、「おんめえ生きてただべか!」と言って猿を抱きしめた。小六は猿が高そうな着物を来ていることに気づきボディーランゲージで猿に尋ねた。「どうすておめえそんなたけえ着物さ来てるだべか!」猿はウキキ!とボディーランゲージで織田信長の家臣になったことを伝えた。「そりゃすんげえだべさ!でもおめえこんなとこでなにすてるだ!ここはオラたつ墨俣猿軍団の縄張りだべさ!」猿の藤吉郎はまたまたボディーランゲージで自分が信長様に墨俣に一夜城を作るように命令されたことを伝えた。小六は興味津々でこの話を聞き、「オラもお手伝い出来ねえだべか?そすたらオラも信長様の家臣になれるだ!」と言って猿の藤吉郎に協力しようと申し出た。しかし猿の藤吉郎はもしかしたら小六の命が危ない、と猿にしてはありえないほどの思いやりを持ってウキー!と断ろうとしたがその時小六の後ろにした猿が藤吉郎に向かって飛び込んできたのであった。なんとこの猿たちは藤吉郎の家族だった。父猿、母猿、妹猿の家族三人が今こうして再開したのである。



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