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大袈裟夫婦

 妻が家で突然の腹痛に倒れた聞いた夫は仕事をPCごと窓から飛び出して病院へと駆けつけた。そのまま走って夫は病室の前についたのだが、ドアは固く閉じられその真ん中に面会謝絶の貼り紙が貼ってあった。医師は早速夫に向かって妻の病状の説明を始めようとしたが、面会謝絶の文字に気が動転していた夫は医者をうるさいと怒鳴りつけてぶん殴って気絶させると、ドアを叩いて病室の妻に向かって叫んだ。

「おい、生きているんだろ?生きているんだったら返事しろよ!」

「ちゃんと生きてるよ。でも二度とあなたには会えない」

 夫はこの妻の答えに愕然とした。あ、会えない、二度と会えないだって?まさか死の病に罹ってしまったのか。それでお前もしかして絶望して死ぬ気じゃないんだろうな。何をやっているんだお前は。夫は看護師の制止を振り切ってドアをこじ開けようとした。

 すると気絶から目が覚めた医師が再び夫に妻の病状の説明を始めようとしたが、妻が余命幾許もないと絶望して我を忘れてしまった夫は、妻か絶望のあまり自殺しないよう必死に説得しているのに邪魔しやがって、お前の息の根を止めて黙らせてやると叫んで、今度は医師の首を絞めあげてしまった。医師は夫に必死の抵抗をし、やっと首から夫の手をもぎ取ると夫の手を掴みながら叫んだ。

「落ち着いて聞いてください!奥様はあなたが想像するような命に関わる病気じゃありません。ただの盲腸炎です。私は奥様にちゃんとバカにでもわかるように話しましたが、奥様は何か誤解されてしまったようで、面会謝絶だとか言ってもう私たちさえも病室に入れてくれなくなったのです。だから手術もできないし、どうしたらいいか……」

「ちょっと何がただの盲腸炎よ!嘘八百で騙すのもいい加減にしなさいよ!私知ってるのよ。盲腸炎の手術をしたら必ず酷い辱めを受けるって!確かに手術で盲腸炎は治るわ!だけどその後に待っているのは一日中オナラをしないか監視され続ける日々よ!地獄だわ!私こんな地獄に耐えられない!あなただってそう思うでしょ?」

 夫は妻の言葉を聞いて涙を流した。大事な妻を医師たちが手術という羞恥プレイに持ち込もうとしている。しかし彼はそれよりも遥かに重大な手術の危険性について考えていた。メタンガスは揮発性のものだ。いったん出てしまったらここにある他の揮発性の物質と化学反応して病院ごと爆発してしまうのではないか。ああ!そうなったら愛しい妻は爆発してしまう!妻を救うためにはどうすればいいのだ。とその時看護師がなんと綿とアルコールを乗せたトレーを持って妻の病室に入ろうとしているではないか。夫はゾッとして看護師の前に駆け寄って怒鳴りつけた。

「お前何やってるんだ!俺の妻は今腹ん中で今メタンガスを大量に膨らませているところなんだぞ!そんな所にアルコールなんか持ち込んだらこの病院自体爆発するじゃないか!お前は看護師のくせにそんなこともわからないのか!」

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