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婚約指輪 〜彼女に婚約指輪をあげたらいきなりうどんに落とされた話

 これで全てが決まる。僕はジャケットのポケットから、ずっと弄っていた箱を掴んだ。もうこのタイミングしかない。この小箱の中には僕がこの間大金をはたいて買ったものが収められている。いや、大金っていったって今から手に入れるものに比べたら大したものじゃない。だって僕は今日彼女にプロポーズしようとしているんだから。たしかに別に今日でなくてもいいという思いは何度もかすめた。彼女とはいつでも逢えるし、明日でも明後日でもいいような気がする。だけどそうやってズルズルと決断を引き伸ばしにしていたら、結局全てが流しそうめんのように海に流れて終わりになってしまう。やっぱり今日しかないんだ。奇跡的に付き合えた高嶺の花。彼女と出会えた事は奇跡でも何でもないが、二年も付き合っている事は奇跡としか言いようがない。決めるときに決めなきゃ彼女は永遠に僕から去ってしまう。

 僕は今駅前で待ち合わせをしている。今夜のために予約しておいた最高のレストラン。そこでディナーを楽しんだ後僕は彼女にこう言うだろう。

「僕と結婚してください」

 小箱をクルクル回しながら僕は考えた。ティファニーの指輪なんてありきたりかもしれない。だけど僕は婚約指輪の事はよく知らないんだ。この指輪を見せても彼女は呆れたように笑うだろう。「あなたって何も知らないのね」と。その時もう一方の手に持っていたスマホが震えた。僕は彼女のLINEだと思ってすぐにスマホを開けた。したらなんと予約したレストランからのキャンセルの連絡だった。なんでも店が停電したらしくて営業できないらしい。僕はこのあまりに幸先の悪過ぎる知らせに暗澹となった。

 いきなりやってきたこの不吉な知らせに、僕はプロポーズはまたにしようと思ったが、だけど一度決めた事を取りやめるのはやっぱりよくないと思った。このレストランが突然の停電で閉まったように、明日僕か彼女に何かあって永遠に思いを伝えられずにさようならみたいなことだって起きる。人間ちょっと先は闇。だから今しかないんだ、今!

 それから僕はLINEで彼女にレストランがキャンセルになった事を伝えたが、彼女はあっそといつものようにサバサバした返事をしてきて、それからじゃあどこ行くのと聞いてきた。そう言われてもすぐには思いつかない。僕は彼女と違い大して遊んでいるわけではないから。しばらく返事をしないでいると、彼女からじゃあはなまるうどんに行かない?とメッセージがきた。

 はなまるうどん?なんでそんなとこに行くのか。彼女とは今までファーストフードなんか行ったことがない。というか、彼女はそんなもの一番嫌いそうな人間だ。とここまで考えたところで僕は目の前が真っ暗になった。ああ、多分彼女はそろそろ僕がプロポーズしてくるはずと勘づいている。だからそうなる前にあえて予防線を張ったんだ。あなたと結婚する気なんかありませんよって。

 ああ!これは勝手な推測でしかないけど、やっぱり当たっていると思う。もうすぐ彼女直々に答えが返ってくるさ、しかも満額回答の花丸付きで。外が急激に冷えてきたように感じたけど、これは決して寒さだけのせいじゃない。僕はもしかしたら、いや確実に彼女からこう死刑宣告されるんだ。

「ブサイクなあなただったけど、二年間楽しませてもらったわ。ありがとう、そしてさようなら」

 もしかしたらこんな事はただの妄想かもしれないと人は言うかもしれない。だけど彼女とニ年近く恋人、いや今となってはそれの手軽な代用品として付き合ってきた僕には自分と彼女がいかに不釣り合いかわかるんだ。都会育ちの彼女は完璧中の完璧で本来僕なんかが近づく事すら出来ない人間だった。告白がありえない事に承諾されあの日からずっと彼女の恋人として相応しい人間になろうと努力してきた。多分彼女は僕の努力を半笑いで見ていたと思う。だけど僕は笑われてもいいから彼女と並びたかった。並んでも他人から馬鹿にされない人間になりたかった。何故なら僕が馬鹿にされるということは彼女をもバカにされる事になるからだ。

 冬の寒さは財津一郎のような厳しさで服を貫通して僕を突き刺した。今の僕の状況は落第か免職か死刑かそれら全部を合わせたよりも酷い。さよなら君が何を言おうとしてるかわかりすぎるほどわかるからこの場から去るよ、なんてカッコつけたLINE書いて逃げようと考えた。だけど人間ってのは愚かなものでこんな状況にも希望を見出してしまうんだ。彼女からの再びのまだいる?みたいな簡潔でとりあえずの確認のために送ったようなLINE。そしてしばらくして聞こえてきた聞き慣れたハイヒールの音。ああ!もう絶望的だ。

「待った?じゃあ、早速はなまるうどんにいこっか?私電車の中であそこのビルの地下にはなまるうどんあるの見つけたから」

「わかった」と僕は返事して言葉を詰まらせた。彼女はいつにもましてそっけない。はなまるうどん。そこに入った途端彼女の口から読み上げられる短い別れの宣告文。もう終わりさ。

 彼女の後をついて僕はトボトボはなまるうどんへの道を歩いた。彼女は時折呆れ顔かなんなのかそんな表情で僕を見た。僕は歩きながらさっきみたいにポケットの中のティファニーの指輪が入った小箱触って中でクルクル回した。これももう時期意味がなくなる。だけど一度もあげようとしている人に見せないのは辛いし、踏ん切りがつかなすぎる。僕は足を進める度にだんだん気分がヤケクソになっていくのを感じた。

 やがて彼女と僕ははなまるうどんに入ったが、店内は何故かすっからかんだった。僕は一瞬もう店じまいだと思い足を止めかけたが、店員が明るい声でいらっしゃいませと声をかけてきたのでそのまま足を進めた。はなまるうどんなんてこの二年間全く食べていない。いや、うどんどころかスパゲッティ以外の麺類全部だ。食べるのはオーガニックなスパゲッティだけ。何故なら彼女が好んで食べているからだ。しかし店内は本当に僕たちだけだった。これが予約していくはずだったレストランだったらどんなによかっただろう。緋色のライトにぼんやりと照らされた僕と彼女。ワインを飲んだ二人はその光にすっかり酔いしれて……。だが、この明るすぎる殺風景なはなまるうどんの店内にはそんなムードは一切ない。ただすでに全てが終わった後のような空間が虚しく広がるだけだ。

 彼女がトレーを持って僕に何が食べたいか聞いてきた。僕は何にも食う気は起きなかったが、一番安いかけうどんが食べたいと言った。すると彼女は店員にかけうどんと注文し、その後に僕を指差して「この人も同じもので」と付け加えた。本当に虚しかった。二人の終わりの舞台としてはあまりにも惨めだ。まさかかけうどんが二人が最後に食べたディナーになるなんて。

「あなた先にテーブル行ってよ。私薬味コーナーに寄ってから行くから」

 僕は自分も水を、と言いかけたが、彼女の無表情の圧に怯んで口を噤んだ。この表情は彼女が時折見せる顔だったが、今の僕にはその表情の意味がハッキリとわかる。僕は大人しく彼女のいう通りにしてトレーを持って窓際のテーブルへと向かった。

 窓からは通りが見えた。通りを歩くのは幸せそうな恋人たち。もしかしたら彼らの中に今の僕のようにプロポーズしようとしている人がいるかもしれない。だけど、僕みたいに惨めな奴は一人もいないはずだ。九分九厘断られ、その場で別れを告げられる事がわかっているのにあえてプロポーズする滑稽にも程がある男なんて僕以外にいない。カンダタみたいに一厘の希望に縋り付いて絶望に真っ逆様に落ちていくことなんて分かり切っているのに。僕は目の前のうどんか憎らしくなってきて箸を手に勢いで思いっきり啜ってやった。うどんは一瞬で空になったが味なんかどうでもよかった。単に目の前の障害を片付けてやっただけだ。僕がうどんを食べ終わった丁度その時彼女がやってきた。

「あれ?うどんもう食べ終わっちゃったの?」

「あっ、ごめん。お腹が空いてたまらなくなったんだ」

「へぇ、そうなんだ。そんなんだったらもっとメニュー頼めばよかったのに」

 笑いさえ浮かべないで彼女はこう言った。あまりにも素っ気ない対応。柱時計がナイフのように正確に時間を刻んでゆく。彼女はうどんを乗せたトレーをテーブルに置いて僕の向かい側に座った。

「ところで随分時間かかったね。薬味コーナーでなんかあったの?」

「あぁ、あったよ。店員さんがぶつかってきて私のうどんこぼしてそれでもう一回うどん作り直してもらったの。別に大した事じゃないよ」

 まるで僕にうどんを食べさせる時間を作るためだけに誰かが拵えたちょっと無理ありげな出来事。そんな話を無表情で淡々と語る彼女。僕はもうこの場から逃げ出したくなった。だけど逃げ出す前に最後のゴミを捨てなければいけない。どうせお別れなんだ。ヤケクソでこの女にコイツを突き出してやれ。タイミングなんて考えすらしなかった。ただ事を済ませて自由になりたい一心からだった。僕は彼女の目の前にポケットの小箱を突き出してこう言った。

「いきなりだけどこれを受け取ってくれ。判断は君に全部委ねるよ」

 どうにか噛まずに一気に言えた。いつも大事なとこで緊張しいの僕としては上出来すぎるほど上出来だ。彼女はへぇ〜とか言いながら小箱に目を向けた。彼女の目に僅かながら反応があった。もしかして……。

「ふ〜ん。そういうことかぁ。箱開けていい?」

「いいよ」と僕は答えた。緊張の嵐。今の僕は蜘蛛の糸を掴むカンダタそのものだ。99%の絶望と1%の希望。でも縋り付くしかないんだ。糸の上に見える微かに漏れた光に。彼女が箱から指輪抜いた。そして笑った。僕はその笑みを見て思わず立ち上がった。

「ポチャ〜ん。あっ、うどんに指輪落としちゃったぁ!どうしようぉ〜!」

 彼女は明らかにわざと指輪をどんぶりに落とした。まさか、こんな形で拒絶されるだなんて思わなかった。彼女は度々自分は性格が悪いと言っていた。僕はそれはプライドが高いだけだと考えていたが、今の彼女の態度を見てそれが言葉通りの意味だってようやく理解した。今彼女はゾッとするほど薄気味悪い笑顔で僕を見ていた。

「ねぇ、指輪がうどんの中に沈んじゃったわ。あのこれ全部食べて指輪取ってくれない?」

 僕は自分でも驚くほどの怒りを込めてうどんを見た。そして完全に頭に血が上り切ってしまった。彼女のうどんはうどんでなくうどんの形をした生ゴミだった。薬味コーナーの天かすやら生姜やら醤油をぶち込んだ食べたら即病院行きの生ゴミうどん。僕はこの生ゴミうどんで彼女が二人で過ごした二年間なんてこの程度のものでしかないものだって言っているんだって思った。彼女はその僕を煽るようにさらにこんな事を言った。

「ねぇ、食べないの?食べなきゃうどん伸びちゃうわよ。もしかしたら指輪溶けちゃったりして」

 ここでふざけるなって怒鳴りつけて店から飛び出したってよかった。彼女はからかい上手の高木さんじゃないし、僕だってからかわれ上手な人間じゃない。最低限のプライドはあるんだ。人の思いをコケにして、自分にプロポーズしてきた男の指輪を生ゴミみたいなうどんにぶち込む性悪女。今までそうやって何人も男をからかいって捨ててきたんだろう。さよならだ。僕だってこんな冗談に付き合っていられるほど寛容な人間じゃない!そう決めて立ち去ろうとして最後に彼女を見た時だった。僕は彼女がとても悲しそうな顔で僕を見ていることに気づいたのだ。

 ただ錯覚だ。ただの未練にすぎない。僕はそう思い彼女を振り切ろうとした。だけどそれは出来なかった。こんなに嫌な女でも、こんな生ゴミうどんに指輪を落とすような人間でもやっぱり彼女が好きなんだ。僕は席に座り直して目の前に置かれた生ゴミうどんをみた。どう考えたって生ゴミだ。ゴミの収集車だって回収してくれそうにないほど毒気のありそうなほどの。一体何で彼女はこんなものを僕に食べさせようとするのか。僕のプロポーズを断るためにしたのだったらまぁわかる。だけどそうじゃないとしたら、もしかして僕の愛を確かめようとしてこんな事を考えたのだとしたら、この天かすだの生姜だの醤油がぶちまけられた生ゴミうどんを完食する事で僕の愛が証明されるのだったらら。バカみたいな考えだけどそうだとしたら食べるしかない。彼女は美人だけど実は何度も男に裏切られてきたのかもしれない。それで相手の愛確かめるためにこの生ゴミうどんに指輪を入れたのかもしれない。そうだ。大体結婚は僕だけの問題じゃなくて彼女の問題でもあるのだ。僕が彼女の一生添い遂げられる男だって事を証明するためならこんなうどんさっさと食べて指輪を救い出さなきゃ。そして改めてプロポーズするんだ。結婚しようって!

 僕は彼女に向かって笑いながら箸を手に取った。彼女は目を剥いて僕を見た。いかにも信じられないといった顔だった。僕は視線を彼女から生ゴミうどんに移し吐き気に耐えながら箸でうどんの麺を掴んだ。

「あなた本気で食べる気?」

 彼女が慌てた表情で僕に声をかけてきた。僕は黙って頷き箸で挟んだうどんをゆっくりと口の中に入れた。もう破れかぶれだ。何があろうと絶対にうどんは完食してやる。ゲロだって飲み込んでやるさ。そう決意して僕はうどんを噛んだ。

 なんだこれは?うどんを一口食べた瞬間、僕は全身に妙な恍惚を感じた。それは初めて彼女と一つになった時に感じた恍惚感そのままだった。舌で溶けてゆく天かすのまさに天にも上るような極上の味と、その天かすの中から皮がむけていくように膨らんでいくうどんの雄々しい味の見事なハーモニー。生姜の玉は猛々しく主張するうどんを下から支え心地よい刺激をうどんに流し込む。醤油はそれら全てに力を与える暖かい血だ。ああ!今まで食べてきたうどん、いや高級レストランで食べたフレンチやイタリアンや中華や味のなさすぎるイギリス料理なんて問題じゃない!なんだこれはこの生ゴミうどんがこんなに美味しいだなんて!僕は指輪のことなんか忘れて無我夢中でうどんを食べた。そして一瞬にして食べ切った時、舌の異物感でようやく指輪の存在を思い出した。

「あんまり美味すぎて一瞬指輪の存在さえ忘れてたよ。このうどんびっくりするほど美味かった」

 僕は知らず知らずこう呟いていた、全くおかしな事だ。彼女がただの嫌がらせか、僕を試したのかもわからないうどんの美味さにこんなに興奮するなんて。バカバカしい話だ。笑ってくれていいんだよと僕は目の前の彼女を見たが、その瞬間僕は驚きのあまり息を止めた。

 彼女は泣いていた。泣きながらハンカチで涙を拭い、そして拭うごとにますます泣き声は大きくなりとうとう号泣してしまった。

「やっぱり、やっぱり食べてくれたんだ、天かす生姜醤油全部入りうどん。私ずっと食べてくれる人なんていないと思ってた。だって今まで付き合ってた男はみんなこのうどんを見た瞬間 さようならって私の元から立ち去って行ったし。あなたもさっきうどんを見て立ち去ろうとしたじゃない?それ見てやっぱりダメなんだって思った。でもあなたはちゃんと食べてくれた。あなたさっき言った事本当?」

「ああ、本当さ。このうどんすっごく美味いよ」

 僕がそう答えると彼女はホッとしたように笑った。その笑った顔は僕が今まで見たことのない表情だった。

「このうどん私勝手に天かす生姜醤油全部入りうどんって言ってるんだけど、実は子供の頃からずっと好きで食べてきたんだ。多分あなたすっごい誤解してると思うけど、私金持ちのお嬢様なんかじゃなくて貧乏人の家に生まれたの。その私の家の晩食のメニューだったのがこの天かす生姜醤油全部入りうどんなのよ。でも私大人になってからずっとそれ隠して生きてきた。子供の頃貧乏人だって散々いじめられたら嫌になったのよ。でも私好大人になってもこのうどんだけは捨てられなかった。このうどんだけはずっと食べてきたのよ。ごめんね、今の話聞いて私を軽蔑したでしょ?貧乏人だったくせにブランド買い漁っているバカ女。こんな天かす生姜醤油全部入りうどんみたいな生ゴミうどんが好きなくせにって!」

 二年間付き合ってきて初めてだった。彼女がこんなに僕に自分の事を語ってくれたのは。僕は彼女も自分と同じなんだって思った。僕が彼女に合わせるために無理にかっこよく自分を見せようとしていたように、彼女もまた周りに、多分付き合っていた男たちに自分を合わせていたんだ。だけど彼女は自分を偽っては決して幸せになれないことに気づいてもいたんだ。だから真に自分をわかってくれる人を確かめるために自分の好きな天かす生姜醤油全部入りうどんを出して相手が真に自分を理解し愛しているかを確かめようとしていたのだ。僕は残念ながらその思いに応えられたとはいえない。天かす生姜醤油全部入りうどんを食べるまで全くそれに気づかなかっだのだから。でも、それはこれから二人で分かち合えばいい事。僕は近くにあった吹きもので手に持っていた指輪を拭き取りもう一度彼女に差し出した。

「僕と結婚して下さい。あなたを一生幸せにします」

 この僕のさっきまで口の中に入っていた指輪を差し出しての二度目の、いやちゃんとした正式なプロポーズを聞いて彼女は急に笑い出した。

「あの、その指輪今口の中に入ってたものでしょ?それをちゃんと消毒もしないでプロポーズするってどういうつもり?前から思ってたけど、あなたっていつもカッコつけようとするけど、そうすればするほど間抜けになっちゃうのよね。だけどそういうとこが一番好きなんだけどさ」

 彼女にズバリ指摘されて恥ずかしさのあまり頭が痒くなってきた。そういえば初めて二人で過ごした夜、僕はシークレットシューズを履いていたんだっけ?部屋に入った時、彼女が僕を見るなり「高い靴履いてるのね」と聞いてきたが、それは多分値段じゃなくて靴底の事を言っていたんだ。彼女はきっと僕を笑っただろう。いやどうしようもなく間抜けだ。だけど僕は本気で君を愛しているんだよ。

「いいよ、いいよ。結婚してあげる。これからもあなたと一緒にこの天かす生姜醤油全部入りうどん食べたいからね。で、作り方なんだけどさ。まずはなまるうどんでかけうどん頼んだら、薬味コーナーにある天かすを富士山みたいに山盛りに振りかけるの。そしたら次は生姜を大さじ一杯に入れて、最後は醤油を五回まわしで入れるのなぜ五回まわしで入れるのかっていうと、それはご縁があるようにっておまじないなの。今の私たちのようにね」

 僕らは閉店時間がとっくに過ぎたはなまるうどんの店内で店員が注意してくるまで延々と天かす生姜醤全部入りうどんや、二人の未来について語り合っていた。



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