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こじつけクラシック

 会社によく相談に乗ってくれる先輩がいる。私はその人に相談に乗ってもらったことはないけど、みんながやたらその人を話題にするので興味半分でその先輩に相談に乗ってもらうことになった。

 私は先輩に彼氏とうまくいっていないからどうしたらいいかと話した。私って男性の気持ちいまいちよくわからないんです。先輩は男性だしそれなりに経験もおありだと思うから相談できるかなって思ってと言った。したら先輩は何故か指揮棒を振るジェスチャーをしてこう言った。

「べート―ヴェンでも聞こうか。できればカラヤンの指揮がいい。それをきけば問題は解決するよ」


 その次の日にまた先輩に相談に乗ってもらった。正直に言うと昨日先輩に言われた通りにカラヤンって人が指揮しているベートーヴェンの有名な『運命』聞いたけど何一つ分からなかった。でもなんとなくまた相談したくなった。

 私は今度は会社のお局様連中とどう接していいか迷っているとはなした。したら先輩は今度はピアノを弾く仕草をしてこう言った。

「ショパンでも聞こうか。できればアルゲリッチがいいな。それを聴けば問題は解決するよ」


 そのまた翌日私はまた先輩に相談した。今度は深刻な悩みでちょっとした鬱になっていると正直に告白した。昨日先輩に教えられた通りアルゲリッチとかいうピアニストが弾いているショパンを聞いて確かにうっとりした気分になったけど、これまた何の問題の解決にもならなかった。でもやっぱり相談したくなってそれで今日もこうして悩みを打ち明けたのだ。

 先輩は何度も相槌をしながら私の話を真剣に聞いていた。そして私が話し終わった後意味不明の無調な奇声をあげてから言った。

「シェーンベルクでも聴こうか。できればブーレーズの指揮がいいな。それを聴けば問題は解決するよ」


 私は三度もクラシックがらみの回答を聞かされて完全に頭に来た。人が真剣に相談しているのにその答えはなんだ!私はその頭をひっぱたいてモーツアルトみたいなかつらを分捕って思いっきり怒鳴りつけた。

「お前はクラシックの宣伝マンかよ!」

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