カナデとウタ1
「カナデー!」
ウタの元気な声が朝の住宅街に響く。ウタは女の子、カナデは男の子。2人は幼なじみでいつも一緒に遊んでいる。しかし、ウタの方がしっかりしているので、よくお姉さんに間違えられる。
今日、2人とも小学生になる。入学式の日だ。
「はぁい」
頼りなさげな声が聞こえる。
眠そうによたよたと歩きながらカナデが家から出てきた。
大きなランドセルを背負って。
ウタはカナデを見るとにっこりと笑った。
ウタはカナデのことが好きなのだ。
カナデは、、特に何も考えてないだろう。
ウタはカナデに喋りかけた。
「カナデ!ちゃんと前見て歩かないと!」
「ウタのランドセルは、赤いね。僕のは、黒いのに。」カナデが答える。
ウタはふふっと笑って、そーだねーと言った。
完全に弟扱いしている。
2人は小学校に入っても、一緒に遊んだ。
ウタには友達がたくさんできたが、一緒にいて一番楽しいのはカナデだった。
カナデには気をつかわず、本音で喋ることができるのだった。
カナデも、ウタといると楽しそうだった。2人は仲良しだった。
ある時、いつものように2人はカナデの家で遊んでいた。
ウタのお家は共働きだ。両親が帰ってくるまで、よくカナデの家で時間を潰しているのだ。
「お邪魔しまーす!」
ウタが元気にいうと、カナデの母親がでてくる。
優しそうな目を細めて、いらっしゃい、と笑った。
2人はオセロを何回かして遊んだ。
飽きてきたので、ふとテレビをつけた。
テレビでには大きく「ミュージックステーション」のロゴが映った。ちょうど、番組が始まったばかりだった。
この番組がはじまると、そろそろウタの母親が帰ってくる。
家に帰らなきゃいけない時間だ。
ミュージックステーションでは、赤いドレスを着た女の人が1人で歌っていた。
きれいな歌声を響かせて。
こうやってみんなの前で音楽に乗せて歌えたら、なんて楽しいだろう
ウタは思った。
ウタは、ちょっと迷ってカナデにいう。
「ウタね、大きくなったら、歌手になるの」
カナデは「歌手?」と聞き返す
「うん。」
かしゅ、という言葉は最近知った
ウタは、この女の人みたいに、みんなの注目を浴びながら歌ってみたかった
ウタは歌うことがすきだった
「うーさーぎーおーいしーあーのーやーまー」
音楽の時間にならった歌を歌う
すると、カナデも入ってきた
「こーぶーなーつーりしーかーのーかーわー」
2人で歌った
カナデもきっと歌うことが好きだったのだ
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