アイリス 虹の後先:第三者視点を取り入れて

高校3年の5月にアイリスと出会った僕は次の春を迎え有名私大に進学した。

5月も半ばを過ぎた頃、同じ学科の女の子に告白されたが躊躇することなくふった。

廊下ですれ違うとき、心なしか以前より鋭い眼光を向けられている、そんな気がする。暖かい時期なのにくしゃみの回数が増えたのは悪口でも言われてるからだろうか。

少し離れた場所から声が聞こえる。

「普通さ、女の子に告白されてすぐに振るやついる?信じられないんだけど。」

ボブカットのヘアスタイルに丸みを帯びた輪郭。つぶらな瞳の女性が学食で友人相手に愚痴を吐いていた。

「分かる。分かるよ。辛いんだよね。沙耶にはもっと素敵な人が現れるって。」

告白した沙耶は友人に慰めてもらって気分を紛らわしていた。
「もっとさ、振るにしても好きな子がいるからとか、それらしい理由あるじゃん?なんなのよ、花が好きだからごめんって。私は植物以下なのかよ。」

沙耶を慰めていた友人は独特なフラれ方を聞いて、笑いを堪えるのに必死だった。
「花って何かの比喩なのかな?」
友人のうちの1人が切り出す。
「と言うと?」
沙耶が聞き返す。
「好きな人の比喩表現。」

友人の返答に沙耶は納得した。畜生。フリ方まで爽やかな男め。爽やかな容姿に一目惚れして一度食事し、二度目の食事で告白してフラれた。

自分を思って綺麗な比喩表現でフッた男に少しばかり未練が増してきた。


この女性陣の会話を柱で隠れているテーブルから僕は聞いていた。残念ながら比喩表現ではない。アイリスという花が好きなんだ。僕は彼女たちのガールズトークを死んだ魚の目をして聞いていた。

学食を後にして7号間前のベンチでお昼の読書をしていたところ、水色のワンピースを着た綺麗な女性が僕の前にやってきた。

麦わら帽子を被っても気品が損なわれることのない、むしろ被った方が品の良さが滲み出る、星のようにキラキラした眼つきをした女性だ。

彼女の第一声の切り込み具合を僕は拒絶することは不可能だった。
「はじめまして。私の名前はさゆり。あなたがお花が大好きな人?」

下手なナンパにも見える女性の質問に僕は死んだ魚の眼をしてはいと頷いた。

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