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光あれ降りなくなった駅名と発車メロディ聴く眼裏に

引越しや転職、人間関係や生活スタイルの変化で、
かつてあれほど足繁く通ったのに、まるでそれが嘘のように足が遠くなる場所、というものは発生して。
その場所に行く、または通り過ぎるときに、なんとも不思議な気分になることがある。
この音が聞こえたら、慌てて飛び降りたな、とか。
その時のように身体のほうがつられて、用事がないはずの駅の発車メロディに飛び降りそうになったりする。

光あれ、と祈るように思った。

かつてここに足繁く通った自分に。
その時の理由に。
その後の自分ともう会わなくなった、これから先二度と見ることのない景色の全部に。
知る由もないけれど、君たちに、良いことがありますように。


短歌初出:「かばん」2021,7月号

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