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君が炉の中へ消えてく恭しく下ろされていく点火スイッチ

猫たちの火葬をしてくれる火葬場で

炉のスイッチを入れる時の

係の人の手が

信じられないくらい丁寧で恭しくて

それだけでホッとしたことが何度もある

小さな命に丁寧に向き合ってくれてありがとう

あの時あなたたちは確かに世界で一番尊い仕事をしてくれていました


炉の火が入る瞬間というものは、なんだかとてつもなく取り返しがつかないことをしでかしているような気持ちになる。

仮に火を入れなかったところで、もう何も変わらないのに、この世に肉体として存在した形にもう二度と触れられなくなるその分岐に立たされる瞬間で。

本当に本当に何度体験しても慣れる日は来ない。

そういう時間を、貴重な、優しい時間にしてくれる見知らぬ人がいてくれるってだけで、この世界には価値があると思う。


四四田は今、エンディング葬祭関連の仕事の付近をうろうろしてるのだけれど、だからこそ余計にそう思う。

世界ではいつも誰かが心を込めて働いてくれている。


短歌初出:「かばん」2021.2月号

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