見出し画像

#1『愛しあう二人に代わって』マイリー・メロイ

私はいつも本を持ち歩いている。
基本ひとり行動なので、どこに行くときも必ず本を持って行く。
最近はカフェめぐりしながら読書するのが好き。
いいのか悪いのか分からないが、人とおしゃべりするよりも、ひとりで本を読んでいた方が有意義だと感じてしまうという症状に陥ってしまっている…。

しかし、先日、本を携帯するのを忘れてしまったのだ。急遽、目に入った本屋へ入って文庫本を一冊購入した。
現在併読している多岐に及ぶにもかかわらず、さらに併読を増やした。

購入した本は、たまたま目にした村上春樹編訳の『恋しくて』という短編小説。10編のラブストーリー。
へー、いいじゃん。
実らない片思いをし、思いも何も伝えられぬまま3年近くもたったけれど、いい加減疲れ果て、ようやく自分の中で諦めがつきそうになっている私にとってはいいかもしれない…。

サーモンと春菊のガレットと共に


こういう短編小説は、収録されている順番もこだわりがあるんだろうなと思って、素直に順番に読むことにした。

ということで、最初に読んだのはマイリー・メロイ。知らない作家。

マイリー・メロイ

このストーリーを読んで「代理人結婚」という制度を知った。これは日本にはない制度。アメリカでも限られた州に存在する制度のようだ。
ということもあり、はじめは読んでいてもイマイチしっくりこなかった。

ほとんどの州は代理人を立てた結婚を認めおらず、モンタナは二重代理人結婚を認めている唯一の州だった。〔…〕この制度はモンタナが正式な州になる前にできたもので、第二次世界大戦中に兵士たちのために大いに活用された。

本文より

このように、他州にいる恋人が結婚のために、二人そろって裁判所まで出向くことが困難であるケースが生じ「代理人結婚」という制度が生まれたらしい(通常、夫婦になる二人が揃っていないと婚姻が認められない)。

主人公はウィリアム青年(インテリだけど奥手)、そして彼が絶賛片思い中のお相手は、ブライディ―(美人な感じ)。
この2人が、あるカップルの代理人になるところから物語が始まる。
結婚したいあるカップルのために、ウィリアムとブライディ―が代理として結婚するっていうわけで、こういう制度を知らなかった私から見たら、なんとも変な感じではあった…。
だって誓いのキスもしてるわけだし…。
それに、代理結婚による報酬もきちんと受け取っている。だからって、彼ら二人の間には愛情があるわけでも何でもない(ウィリアムは片思いしているわけだが)。

このウィリアムはとても奥手な男性で、ブライディーに自分の気持ちを打ち明けることはない。かといって片思いが冷めることも無く、二人の仲はまあいいけれど、それ以上には発展しない。
他のカップルの代理人結婚の依頼も引き受けていく。

この時代はイラク侵攻が始まったという背景もあり、結婚を望むが兵士であるために戦地にいる、ゆえに婚姻できない、ゆえに代理結婚、という流れでこのような依頼は多かったようだ。
こういう制度がビジネスになると思うと、悪用とかないのかなと心配になったりもする。

代理人から離れた後は、大学の勉強などに精を出し体を鍛え、彼女もできたが、ブライディーのことは常に心に引っかかっていたようだ。

彼はブライディ―のことを一度も考えずに数週間を送ることもあった。かと思えば、彼女に対する想いが心を去らないこともあったそれから電話もかかってこないし、電子メールもこないし、全く音信のない一年間があった。

本文より

こういう気持ち分かるなあ。でも全く音信のない一年間ってどうやって過ごすんだろう。私はダメだな。気持ちが冷めたりしないのかな。

そのうち、ブライディ―が結婚したという情報(代理結婚ではなくて本当の)が入ってきて、みぞおちに一撃をくらった気分になったり、いったいウィリアムは何年間片思いをし続けたのかな、なんて思ったら、私の約3年の気持ちを伝えられない片思い、こういうこともおかしいことではないんだなと思えた。

しかし、なんだかんだブライディ―の結婚生活はうまくいかず、離婚することになる。
結局、最後はウィリアムとブライディ―はうまくいくことになるんだけれど、なんだか唐突感があってかなり戸惑った。

私が感じたのは、ブライディ―はウィリアムの気持ちを昔から知っていて、ウィリアムは単にリスクヘッジ的な存在だったんじゃないかなと。笑。
結局、最後まで残っていたウィリアムを手に入れたんじゃないの?っていう感が否めない。残り物にはなんとか、って言うし。
それでも、ウィリアムは長年の片思いが叶って幸せを手に入れたんだから、まぁよかったね。

ちなみに、村上春樹は「ストレートな短編小説」と述べていたけれど、「リスクヘッジの対象になったウィリアム」って見えたかな。

こんな感じで、一篇ずつゆっくり読んでいこうと思う。


この記事が参加している募集

海外文学のススメ

恋愛小説が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?