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【東京百景】護国寺の猫と喋った

東京の猫は逃げるのがどこの猫よりも早いですよね。猫に限らず全ての動物が人間を陰湿な生物だと思っているようです。

田舎じゃ駅の乗り換えを間違えて40分ぐらいホームのベンチに座ってるだけで足元には猫やらすずめやらがいるってのに。鹿や猪が出てこようもんなら私はもうノアです。方舟を作るしかない。

上京したての頃、東京と4月特有の、物事が進むスピードに「そんな馬鹿な」と思っていました。とにかく単位を落とさないように履修を組んだり、バイトはどうしようとか単位とか授業の情報得ようとお互い探り合いながら話す同級生とか。

当時私は護国寺に住んでいて首都高があるし、大通りに面していたマンションだったので網戸がススだらけなことを発見したときは、うわ私東京にいんのか、とちっぽけな優越感と自然に還りたいという相反する想いを持っていたり。

とにかく、なんかの恩恵にあやかりたいと思って、通学路にもあった五代将軍徳川綱吉がオカンのために建てた神齢山悉池院護国寺へ立ち寄りました。

さすが将軍の力、ひたすらにデカくそしてなんか多い。どこから頭を下げに行ったらいいんだろうと階段の端っこでオロオロいていると、猫がすらりと足元を通りかかりました。

とりあえず自信ないからこの方にちょっと聞いてみようと思ってついていくと、猫は一言地蔵尊の隣に座ったのです。

オッケーこのお地蔵さんね!と猫に言うと、猫は「一言地蔵だから一言におさめな」と私を見ました。

一言でそのとき抱えていた悩み事をまとめるのはとても難しかったことは覚えています。その間、猫は一度だけこちらを見て、だらっと座ってます。「どうせ数年経ったら忘れてんだから、テキトーにしなよ」とか言ってたと思います。

おっしゃる通り、何を願ったのか、たった一言の悩み事すらどんな内容だったのか全く覚えていません。あんなに悩んだのに。

そんなもんなのかもしれないですね。でも、その時の私はしっかりと今を生きていたということだと思います。現状にしっかり向き合おうとしていた。

現在も悩み事は尽きません。でも、頭の中にはあの時の猫に「テキトーにしなよ」と言わせておくことも大切だと思っています。

猫が地面に伏せました。その時桜の花びらが頭についていることに気がつきました。かわいいなと思いつつ、花びらをとってあげても猫はこちらをチラリとも見ません。しかも東京の猫のくせに、全然逃げないのです。

「おもしれー猫」とだけ言っておきました。

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