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Jポップ視点でみた、チェインスモーカーズ「Closer」型の音楽展開について

二回目の投稿です。今回は今さら感があるかもしれませんが、チェインスモーカーズの「Closer ft. Halsey」(2016年)について。長いこと「なぜこの曲はいいのだろう?」と考え続けた結果、私はメロディやコード進行よりも、構造におもしろさがあると思い至りました。

多くのEDM系楽曲や、アレッシア・カーラとゼッドの「Stay」など、同じ構造を持つ楽曲はたくさんありますが、便宜上「Closer型」と呼ばせてください。これは数年前から海外でよく聴かれるようになった形式ですが、Jポップの様式美とも縁のある、技ありな楽曲展開だと思えてなりません。

それについて「ヴァース」や「コーラス」、「フック」、「ビルドアップ」などの言葉を使わず、日本のポップス的な視点から説明していきます。

まず「Clorer」の構造は、

<イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ→ドロップ>

でワンコーラスとなっています。EDMになくてはならないドロップというセクションは、メロディの強い間奏のこと。ここをいかに聴かせるかが、プロデューサーの腕の見せどころです。

同じ形の比較例として、三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEの「R.Y.U.S.E.I.」を聴いてください。

世界的なフェス『ULTRA JAPAN』が日本で初開催され、国内でEDM人気が高まった2014年リリースの当曲は、

<イントロ→AメロBメロサビドロップ>

でワンコーラスになっており、Closer型と一致します。しかし「Closer」の方がすっきりしていて、クールな感じ。もう一度、楽曲の重心(=楽曲の盛りあがり)がどこにあるかを考えながら、両曲を比較してみます。

「R.Y.U.S.E.I.」
<InABサビ(重心)ドロップ(重心)>

「Closer」
<InABサビドロップ(重心)>

サビとドロップ両方に重心を乗せた「R.Y.U.S.E.I.」に対し、「Closer」はドロップのみ。力点をひとつに絞ることによって、わびさびともいえるメリハリを出しています。

盛り上がるはずのサビでリズムを消し、熱量を落とす、いわば「わびサビ」。似た効果を持つ構成として、Jポップの様式には「落ちサビ」があります。
これは楽曲最後のサビの前に、静かなサビをはさんで緊張感を作り出す手法のこと。

noteは時間指定による再生ができず、申し訳ないのですが、東京事変の「群青日和」がそうです(サビ始まりと落ちサビがほぼ同じなのでわかりやすいかと)。

Jポップ楽曲の最終フックである「落ちサビ」をワンコーラス内に使用している点で、Closer型の進行は新鮮でした。

さらに「Closer」のドロップは、サビからイントロへのループに近い作用もあります。例として宇多田ヒカル「Automatic」を聴いてみてください。

ワンコーラスの構成は、

<In→A→B→サビ(重心)>

です。特にサビからイントロにループする瞬間は、歌からシンセに旋律が交換される「Closer」のドロップに近い。

2コーラス目までの構成を含めて比較すると、

「Automatic」
<In→A→B→サビ(重心)>

ループ→<In→A→B→サビ(重心)

「Closer」
<InAB→わびサビドロップ(重心)>
ループ→<AB→わびサビドロップ(重心)

となりますが、聴感上「Automatic」のループと「Closer」のサビ→ドロップの機能は同じ。ドロップが架空のイントロとして機能し、再度Aメロに引き戻す役割になっています。

つまりCloser型の進行は、

<InAB→わびサビ>
ループ→<ドロップ(重心)
AB→わびサビ>

に聴こえるのです。まるでドロップがイントロのフリをしているような。しかもJポップの様式美「落ちサビ」を使うことで、イントロに重心がある。

これは従来のJポップ的な価値観を崩していて、興味深い構成でした。「サビで盛り上がらずに、イントロで盛り上がろうぜ」という考え方ですから。

この方法論はジャンル問わず通用するものなので、個人的にはこの展開を使う、日本産のロックバンドとか出てきてほしいなと思っています。もしかしたら、もういるのかもしれませんけれど。

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ゆとり第一世代・音楽家/記者。 山梨県笛吹市出身の笛吹き(サキソフォン)です。 ヘヴニーズ所属。演奏や取材、企画、MCとか色々とやってます

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