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スタートアップに「潜り込む」三つの道

一般的に「文系」に分類される経済学部出身で、シリコンバレーのスタートアップでは必ずしも評価されない「素のMBA」しか持っていない「トリプル・ネガティヴ」な自分が「(アメリカで)テクノロジーを核としたビジネス」に潜り込んでどうにか経営分野で存在基盤を確立できたのは曲がりなりにも「まず役に立つ」ことができたからです。

そんな橋頭堡となるような「最初の貢献」というか「侵入・侵襲経路」は以下の3パターン。

①「通訳基点」

まず「日本語デキマス」「日本ノ企業文化知ッテマス」で事業開発や交渉役、その実は(体の良い)「言語と行動の通訳」を売りに参画。そのビジネスの仕組みや使われるテクノロジーの説明を2言語で行う中で知識獲得しつつ「橋渡し役」の視点から信憑性ある「役立つ発言・行動」できるようになり、回される仕事が増える中で「日本以外」でも役立つことを示して水平方向に浸潤展開していく。

②「計数基点」

ファイナンス、特に投資ストーリーに即したビジネスモデルの定量化(組織内外のお金の流れ)モデル作りを請け負って、生来の凝り性を生かしてコンサルティング時代に習い覚えたシナリオ分析やリスク要因分析機能を盛り込んで経営計画・資金調達・株主説明などにおいて「余人を以て代え難し」な存在になる。その上で、社内の各専門家と「活動と目標をどう数値化し金銭として表すか」を素直に教えを乞いつつ[1]学び、各部門が「最大限働く」ために何が必要なのかを共に考えるパートナーとなる。最終的には上記モデルのオーナーとして「事業が回る仕組み」を社内で唯一(数字付きで)把握するCEOや取締役会、投資家にとって「経営上役に立つ存在」を目指す[2]。

③「ストーリー基点」

投資ピッチ、取締役会資料、場合によっては広報やメディア向け情報発信など会社の「対外向けストーリー」を作る際に情報の取りまとめとプレゼンテーション作りを買って出て、まずは「編集者」として社内上下左右から情報や資料を集める中で統一感あるフォーマットに落とし込んだりキレのある映像・言語表現に書き換える力を磨く[3]。最初は送られてきたスライドの統合・編集をしたり期限督促ばかりだけで「社内で一番遅くまで仕事している奴」になりがちではあるがその中で「提供した素材を説得力高めて会社のメッセージに組み込んでくれる奴」として認知され信用されるようになることを目指す。それを繰り返す中で「取りまとめ役」から伝えたいメッセージ・ストーリーを企画する「リーダー役」を目指す。

妙な喩え[4] ですが(日米で選挙やってるから?)政治家のポジションに準えると①は外務大臣やって「外交の顔」から「双方の内政に通じる」パス、②は大蔵/財務大臣が予算掌握して全政府機関に対し発言権拡大するパス、そして③は主席報道官から政府の実務掌握する官房長官になるようなもの、でしょうか。

自分のキャリアは①から③への緩やかな進化なのかな、と思っています。どれも基本は「面倒を引き受ける」仕事なので覚悟というか裏方仕事に「他者の能力を引き出して結果出す(糸をひく?)面白さ」を感じるようなタイプでないと通用しないかもしれません。

ただでさえ「日本依存逓減」という物好きな経路辿っているのに、そうした意味でも自分は人に勧められるような「キャリアパス」を辿ってきていません。専門スキルを一番高く買ってくれる相手に「切り売り」するのが一番手っ取り早いし殆どの人はそのほうが充実した人生になると思います。

以下ポール・グレアムのパスティーシュみたいだけど注釈。

[1] 最初は「CEOの御用聞き/ファイナンス屋に何がわかる」的な対応される覚悟が必要。上から目線ではうまく築ける関係も築けないので、「サイエンス・テクノロジー良くわからないので教えてください」を方便でなく純粋な好奇心ベースで聴くところから始めるのが有効。バイオテクノロジーの会社ではサイエンティストにお願いして白衣着てラボで一連の作業を体験させてもらったこともあります。自分のオタク性向を発揮しただけ、という見方もあり(苦笑)。

[2] ファイナンス担当はついでに会社の労務・法務・購買・コンプライアンスなどの「地味だけと大事な仕事」も引き受けざるを得ないことあるので資金調達のデューディリジェンスの時には「投資家向けデータルーム」の管理者として一層「不可欠な存在」になれる…というかならざるを得ない(笑)。

[3] 自分は経営コンサルティング出身だったので「パワーポイントは自分が一番得意です」アピールというか「自ら仕事振られに行った」記憶あり。でも本当に活きたのは「モノ書き能力」と「仕組みのビジュアル化能力」。これはコンサルティング業で培ったというよりは「伸ばした・磨いた」能力だと自負。

[4]バイオテクノロジー寄りの喩えすればどれもウィルスの細胞への侵入経路みたいなものです。①は「日本語」、②は「ファイナンス」、そして③は「プレゼンテーション」がそれぞれ細胞表面の受容体、ということになります。

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