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展覧会レビュー:「第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap」「アートを楽しむ ー見る、感じる、学ぶ」「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 画家の手紙」@アーティゾン美術館

アーティゾン美術館(東京都・京橋)で行われている企画展(ダムタイプ)と常設展に行ってきました。その感想を書きます。

結論から言うと、非常に満足しました。企画展は「なんとも言えない」のが率直な感想ですが、1)常設展の完成度が高い、2)アーティゾン美術館自体の設計がいつ訪れても見やすくて素晴らしい、3)企画展と常設展含めて1,200円と安価なことが理由です。おすすめ度は★4です。
現代アートのようなパンチには欠けますが、普段アートに触れる機会が少ない人は、上質な時間を過ごすことでアートへの興味が増すと思います。

アーティゾン美術館について

入り口前にあるサイン
ビューデッキからの眺め。椅子にはコンセントもあるため親切

株式会社ブリヂストンを設立した石橋正二郎が主に収集した美術品が展示されています。2019年に美術館が革新的にリニューアルしました。
京橋駅と日本橋駅の間に位置しており、アクセスも良いです。
リニューアルして私は2回目の訪問でしたが、やはり私の好きな美術館の上位に入ることを実感しました。
●NYのMoMAを彷彿とさせる建築と館内からの景色
●質の高い常設展のコレクション
●観覧に最適なスペース(ソファーの設置)と作品間の間隔、展示数
●優しい監視委員の方々
●コインレスロッカーなど随所に細やかで親切な設計
▲傘の鍵は二重リングや紐を付けるなど対応希望(カラビナに付けるため)
企画展が何にせよ、是非行くことをおすすめする美術館です。

6階:第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap

展示室への入り口。ここからはほぼ真っ暗な空間
ターンテーブル・ユニット。微妙に聞こえないような音が出ています
LEDビデオパネルには地図のようなものが写る。足元には鏡が設置されています
レーザー装置から壁に文字が映される。どれも読めるようで読めないし、意味も捉えづらい
LEDビデオパネルには地名のようなものが写る

ヴェネチア・ビエンナーレ(ヴェネチアで2年に一度開催されている世界屈指の現代アートの祭典)に日本代表として選出された「ダムタイプ」の展示。
「ダムタイプ」はメンバーを固定しない日本のアートユニット。最近は新しく坂本龍一がプロジェクトメンバーに入り、1時間の楽曲を提供したとか。
ヴェネチア・ビエンナーレには、1956年から石橋正二郎が個人として寄付を行い、その後は財団が継続的に支援を行なっている経緯から、アーティゾン美術館でも帰国展を開催しているとのこと。美術館に行くことが好きな私にとって、ブリヂストンが大好きになりそうな取り組みだ。

「ダムタイプ」の展示については、「よくわからない」のが本音です。
真っ暗な空間にレーザーやLEDで赤い文字などが映され、館内には聞こえるか聞こえないようなサウンドがスピーカーやウーファーから流れている。
パンフレットが出口に置いてあることから、入場者の「よくわからない」という感覚を大切にしてほしいのだろう。
静謐でデジタル、鋭角でキネティックな展示は、普段の生活から離れた不思議な感覚に陥る。「時をかける少女」「攻殻機動隊」の世界のようで、日本から世界に輸出する”クールジャパン”としてはピッタリかもしれない。
ただし、そこから何か示唆を得るか?と言うとNOだが、唯一無二で不思議な感覚を研ぎ澄ます体験を得る点が収穫だと思った。

5階:アートを楽しむ ー見る、感じる、学ぶ

展示数は全部で75点あり、そのどれもが一度は聞いたことがあるような至極の作品が展示されている。何度行っても楽しめる常設展は珍しい。
通常の作品リストに加えて、3セクションごとにカラー刷りの小冊子が置かれている。この小冊子の内容が充実していて、理解に大変助かる。
アーティゾン美術館の他に、私が都内で好きな常設展は東京国立近代美術館東京都現代美術館があります。

セクションの入り口。全体的にキャプションが充実していて丁寧
青木繁「海の幸」。その左には森村泰昌のオマージュが置いてあり面白い
小出楢重「帽子をかぶった自画像」
「絵や彫刻の人になってみよう」として「帽子をかぶった自画像」になりきるグッズが置かれている。監視員の方も親切に着用を促してくれる。フォトスポットとしてのアイデアが面白い
パブロピカソ「画家とモデル」
パブロピカソ「道化師」。ピカソのブロンズ作品は珍しい
パブロピカソ「腕を組んですわるサルタンバンク」。ピカソとは思えない藤田嗣治のようなタッチの作品
アルフレッドシスレー「サン=マメス六月の朝」。印象派の中で私が好きなアーティスト。まるで私がそこにいて、現地の風や木漏れ日を感じるようなタッチが素敵
クロードモネ「睡蓮」「睡蓮の池」。観覧車には安定して人気
クロードモネ「黄昏・ヴェネツィア」。”印象派”たる所以の作品
エラール社「グランドピアノ」。カイユボット「ピアノを弾く若い男」の横に展示
ピエールオーギュストルノワール「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」。これもピアノの椅子に座っている?
5階の一部は吹き抜け構造で4階が見えるようになっている。程よく間があり快適な空間設計

4階:石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 画家の手紙

4階は、5階の延長+最後の一室で「画家の手紙」と題して、実際の手紙や、手紙に関連がある作品が展示されています(フロア全体で85点)。
5階の常設展と同様に見やすい展示設計と見応えのあるセレクション。
コロナ禍を経た「画家の手紙」と言うキュレーションも時節に合っている。

入り口。背景はカミーユコロー「ヴィル・ダヴレー」
ポールシニャック「コンカルノー海」。国立西洋美術館にある作品を見て以降、私はシニャックが好きになりました
ファインアートの他に陶磁器なども展示
漢時代の土器である「灰陶鴟鶚尊」。狐のような顔が可愛くて撮影
岸田劉生「麗子像」。他の麗子像は、東京国立近代美術館や東京国立博物館でも見られる
藤田嗣治「ドルドーニュの家」
白髪一雄「観音普陀落浄土」。みんな足を止めて盛り上がった力強い筆致を見てしまう
坂本繁ニ郎「家族への手紙」。一文目の「父さんは今イタリー!」と言うテンションに少し笑う
児島善三郎「海芋と麒麟草」。花の背景と額縁の派手派手しさが妙にマッチ
アントニー・ゴームリー「密着」のように寝そべる子供

まとめ

いかがでしたでしょうか。企画展は「よくわからない」のが本音でしたが、非日常な体験が得られました。常設展は、展示作品のクオリティ、美術館の空間設計などを含めて、非常に満足でした。
微妙に認知度も高くない美術館なので、人も多くないため快適です。
関東圏の人も、東京観光に訪れた人にも是非おすすめしたい美術館です!

補足

展覧会名:「第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap」「アートを楽しむ ー見る、感じる、学ぶ」「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 画家の手紙」
場所:アーティゾン美術館
おすすめ度:★★★★☆
会話できる度:★★★★☆
ベビーカー:ストレスフリー
会期:全て 2023年2月25日[土] - 5月14日[日]
アクセス:京橋駅から約10分
入場料(一般):web購入は1,200円(現地購入は1,500円)
事前予約:事前なしでも入れるが、事前の方が安価で、入場も確実
展覧所要時間:約1時間半
混み具合:快適
展覧撮影:全て可能
URL:https://www.artizon.museum/exhibition/detail/555
https://www.artizon.museum/exhibition/detail/65
https://www.artizon.museum/exhibition/detail/556


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