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正倉院宝物&琉球王国の文化 再現模造という至宝を知る展覧会

いま都内では、美術模造品の展覧会が、偶然にも2つ開催されています。
美術工芸が大好きなわたし さっそく出かけてきまして どちらもじっくりたっぷり観てまいりました。

え?模造品???本物じゃないもの観て 何がいいの???
ええ 確かに本物じゃないですよ、でも ある意味では 本物 なんです。いわば 模造品界の最高峰にあるものとも言えるのでは。(そんな界はないかもですが)

ということで今回は ぜひとも多くの方に知っていただきたい、そしてできれば実物をご覧いただきたい、模造復元品・再現模造品の世界のお話です。


そもそも模造復元や再現模造って何?


古い作品・資料のオリジナルを"お手本"に、その素材や製作技法・手順・技術などを綿密に調査研究した上で、オリジナルが製作された当時の作品・資料の姿に限りなく近づけて作られたもの
のことです。

例えばオリジナルの型を取って、別の素材で見た目そっくりに作る、というような、「レプリカ」とは全く異なります。
オリジナルが何を使い、どうやって作ったのか、を、できる限り詳しく調査した上で、同じ素材を探してきて、同じ技法や同じ手順に沿って、同じ色やサイズのものを、新しく作るんです。

それはつまり、いにしえの作家や職人が製作した最高傑作とも言われるような名品を、現代の名工や人間国宝と呼ばれるような作家や職人の方々が、限りなくオリジナルの通りに製作するんですよ・・・!!!

ものすっごい技術を持った方々が関わって製作しているもの、というだけで、そもそも素晴らしい品ですが、その上、歴史に残る名品を復元・再現してしまっている、という点がさらにすごいのです・・・

って、これ伝わってますでしょうか・・・(語彙力がほしい・・・)


でも、何で模造品なんて作るの?


3つの理由が挙げられるんじゃないかな、とわたしは思います。


まずは、実際に製作する過程そのものが重要な調査研究の一環だから。
まさに、調べるだけじゃなくて実際に作って確かめよう!ということですね。
オリジナルがそもそもどんなもの・状態で作られたのかを、実際にしっかりと検証することで、更なる調査研究へ繋がっているのでしょう。

次に、作品・資料そのものを歴史として引き継ぐだけでなく、製作を通して、現代の作り手の方々の技術も継承・向上させるため

"今の技術では作ることが難しい"ってフレーズ、聴いたことありませんか?
技術も文化も何でもそうですが、脈々と続いてきたもの・ことは、一度途絶えてしまうと、復活させるのが本当に難しいのです。
貴重な技術・技法が途絶えてなくなってしまわないよう、模造復元・再現という歴史に残る大仕事を通して、師匠が弟子を育て、技術技法を伝え残し、一人ひとりが技を磨いているんですね。

そして最後が、貴重な貴重な作品・資料のオリジナルを、この先の未来にもしっかりと守り伝えていくため。

いま美術館や博物館で展示されている、何百年・何千年も前から存在する作品・資料たち。時間や場所を飛び越えて、今わたしたちの目の前にあることは、本当に、奇跡以外の何ものでもありません。
脈々と守り伝えてきてくれた たくさんの人たちのおかげで、かたちや色をとどめ、いま辛うじて存在しているものばかりです。

しかし、人間が日々少しずつ老化しているように、ありとあらゆるかたちあるものも、日々劣化し、いつか壊れたり崩れたり腐ったりしますよね。

美術館や博物館に展示してあるものも、どんなに大切に扱い、空調を管理し、丁寧に厳重に保管していても、日々少しずつ劣化しています。
ちょっとでも動かそうものなら衝撃が加わり、展示すれば照明からじわりじわりとダメージを受け続けます。
シルバーはくすむし、鉄はサビます。染料も顔料も色褪せます。
本当にめちゃくちゃ気をつけていても、どこかから小さな虫が入り込んで 貴重な紙や木を食べちゃうってこともあります。(だから展示室内は飲食厳禁なんですよ)

・・・お気づきでしょうか、本当に作品や資料のことを大切に思うのなら、そもそも美術館や博物館で展示なんてしないほうがずっといいんです。

でも。それでは、保管し続ける意味がありません。
どのように素晴らしいものなのか、どんな歴史があるのか、なぜ貴重なのか、が、誰にも伝わらないなら、存在しないのとほぼ同じになってしまいます。
だから、オリジナルを展示する代わりに、模造復元・再現された作品・資料をできる限り公開して、広く多くの方々に鑑賞してもらうのです。


また、非常に残念ながら、自然災害や戦乱などさまざまな事情で、貴重なオリジナルが突然失われてたり、行方知れずになってしまうこともあります。(だからこそ、厳重に厳重に保管しておくほうが良かったりすることもあるのですが)

万が一、オリジナルが失われてしまっても、それまでの調査研究の資料や、忠実な模造復元・再現されたものが遺っていれば、何とか後世へ伝えていくことができます。


え、そんなにすごいなら、模造復元・再現されたってやつが見てみたい!!!って気持ちになってきましたでしょうか。
ということで、お待ちかね、2つの展覧会のレポートです!!!


ただいま巡回中!『よみがえる正倉院宝物 再現模造にみる天平の技』展

まずは、奈良・正倉院宝物の展覧会。
2020年7月に奈良国立博物館でスタートし、名古屋・沖縄・福岡・北海道と全国各地を巡ってきたので、すでにご覧になった方も多いかと。
現在は六本木・東京ミッドタウン内のサントリー美術館で、3月27日(日)まで開催中です。


正倉院宝物といえば、毎年秋に約1か月だけ、奈良国立博物館で公開され、大行列になることで有名。
本当に現存していることが奇跡としか言えないような品々ばかりでして、当然、滅多にお披露目なんてされません。

そこで、再現模造なのですね✨
展覧会の概要や詳細は、ぜひ公式ホームページでご覧いただくとして、わたしの考えたことを。

やはりぜひ、しかと現物を間近でご覧いただきたい。この一言に尽きます。(あと図録の購入もよろしければ。) 
そして、遠い遠い、はるか昔、天平時代に想いをはせました。この品々を1300年前の天平時代(!!!)の方々が、手に取って、愛でたり、愛用したり、日々向き合ったりしていて、それと同じものをきっと今、わたしも観ることができているなんて、すごいなぁ、と。

本当に、これ作るの超絶大変だったろうな・・・というものばかり。そして美しく、リアリティがあるのです。
合わせて展示室内で、製作の様子が映像でも流れています。これをぜひ、ぜひご覧ください。わたしは中でも、京都便利堂さんが手掛けるコロタイプ印刷の様子を、映像で知ることができて良かったです。


フライヤーの左下「模造です」って書かないと、絶対に気づけないレベル


で、考えました。「模造」って一体、何なんだろうなぁ、と。

当たり前ですが、当時の天皇の愛用品なので 最高峰のものばかりが集まってるのが正倉院宝物です。
なので、「模造」ですが、現代の名工や素晴らしい職人・企業の方々の技術を集結させ  何人もの人の手で 長い時間をかけて作られた品々ばかり。
正倉院宝物という オリジナルが存在してますけど、どれもこれも 本当に!ものすごいんです。

表現が適切かどうか怪しいのですが・・・わたしは正直、模造だということは、"まぁ事実だけど とるに足らないことだな"という気持ちになっていました。
ほんとに単純な話、作品や資料として、素晴らしい、と思ったからです。

そのもののクオリティの高さ、素材から準備するためのとんでもない苦労や奇跡的な条件、 気が遠くなるほどの製作工程の大変さ・緻密さに圧倒されました。
そして、地道に調べ続けてやっと解明させ 今回の製作までたどり着いた という 途方もない研究過程を想像し 倒れそうになりながらも 夢中になって観ていました。本当にすごいんです。素晴らしかったです。


▼音声ガイドの利用がお薦め

全ての展示にはキャプション(説明文)がついています。音声ガイドがあるのは 必見の品々のみですが、それでも目で読むより 耳で聴く方が 展示に集中できるし楽なので、ぜひ。

しかも絶対聴けない楽器の音とか、キャプションにない詳しい解説も聴けてしまえます。
ナレーションは、NHKのドキュメンタリーなどで耳なじみのある、山根アナウンサー。展示の雰囲気に本当にぴったりでした。

現地でも借りられますが、わたしはアプリからダウンロードしました。自宅でも繰り返し聴けるので、図録を開きながら繰り返し楽しんでます♪


▼グッズも素敵


わたし、茶道をしていることが大いに影響していると思いますが、正倉院文様が好きなんです。
2019年にトーハクで正倉院展が行われたときにも、あれこれグッズを買ったんですが、どれも愛用してて、買って良かったと思っています。

メガネ拭きと手鏡
メイクの時に必ず愛用中  雅な気分になれます


で、今回はまず、こちらを。

あの!五弦琵琶が!手のひらサイズに!!!
写真に撮ると、え、本物の螺鈿!?って気分になりますね
サイドもぬかりないです

2019年にトーハクで再現模造を製作するの様子の映像を観て以来、なんかもうすっかり虜でして・・・今回、おそらく当時と同じ映像が会場で流れていて、とても嬉しかったです。

で、ミニチュアを買わずにいられませんでした。
この再現度・・・。どんだけ≪螺鈿紫檀五絃琵琶≫が好きなんでしょうか。

この螺鈿紫檀五弦琵琶を模した香合を、とあるお茶席で観たことがあります。ええ、全く使う予定もないですが、いつか欲しいです・・・

トーハクで買ったキーホルダー、もったいなくて使ってません・・・


加えて今回は、この≪螺鈿箱≫グッズも。
キャンディーが入っていた手のひらサイズの缶と、A4のクリアファイルです。

キラキラしてて 美しいです・・・雅

実物は内側に細かすぎる織柄が美しい布が敷き詰められているんですが、缶やクリアファイルも忠実に再現していました。
ああ 買っちゃいますよね・・・。

かわいいです

ちなみにこの箱、本来は、大きなラピスラズリがゴロゴロついている、黒いレザーベルト用のケースなんです。
どんだけおしゃれで豪華なケースでしょうか。ベルトよりも全然派手。
展示室ではベルトも鑑賞できますので、ぜひ現地でご覧ください。


特別展『ポンペイ』展とご一緒に!
『手わざ -琉球王国の文化-』展

変わってこちらは、琉球王国の品々。
上野・東京国立博物館の平成館で3/13(日)まで開催中です。『ポンペイ』展がやってる建物の1階なので、ぜひハシゴください!無料です!!!

こちらは展示室内を撮影OKでしたので、一部だけご紹介します。


王御冠(たまんちゃーぶい) カッコいいです
紅型・花織・上布と 染織もたくさん観られます 素敵です

それぞれの作品・資料について、そもそもこれは何か、ということから、どのように製作されたのか、がコンパクトに紹介されています。

実際の材料が展示されているものも  貴重だし興味深いです


目にしたことがあるものでも、どうやって作られているのか、は案外知らないことが多いのでは。
限られたスペースですが、なるほどなぁ、へー-!と、とても学びの多い展示でした。

特に螺鈿に目がないわたしは、≪黒漆雲龍螺鈿東道盆くろうるしうんりゅうらでんとぅんだーぶん≫がもう、本当に美しくて。閉館時間が迫る中、ぎりぎりまでじーっと見つめてしまいました。

この写真では本物のもつ輝きを全く表現できてません。ぜひ現地で!!!

美術館・博物館で展示されていることの多い螺鈿装飾の品ですが、出来立てつやっつやの状態を観られる機会って、実は本当に少ないんです。
なので、輝きにみとれてしまいました。至福でした。

こちら、2/20(日)までの展示です!!!

展示室内では、パネルのキャプション(説明文)をまとめた、フルカラーのリーフレットが配布されていますので、ご興味ある方はぜひ。

琉球の文化・美へ もっと興味がわいた方はこちらも

それほど数は多くないですが、本館1Fに常設展示されているスペースがあるんです。そのままハシゴをぜひ。アイヌ文化の品々も鑑賞できますよ。

ご参考までに・・・トーハクの楽しさを勝手にご紹介した記事もあります。


特別展『体感!日本の伝統芸能文化』展もどうぞ


また、トーハクの敷地内にある、表慶館で開催中の特別展『体感!日本の伝統芸能文化』展でも、琉球王国の歌舞劇・組踊くみおどりの展示があります。


こちらの展覧会、実はわたし、前後期の2回、観に行きました。とってもとってもお薦めです。歌舞伎や文楽、能、雅楽と、日本の舞台芸術を、初心者でも、広くまるっとふれることができます。


展示室内に現れた各舞台の原寸大の再現がすごいですし、普段なら絶対に間近で見ることができないものばっかり展示されています。
例えば、歌舞伎で使われる音響の道具、お芝居の小道具や衣装、文楽の人形のしくみ、能面の裏側、舞楽のあの大きな太鼓まで。

本来は東京オリンピックのタイミングに企画された展覧会だったので、本当に予算がかかってるんですよね・・・しっかり準備された展覧会だと思いました。 『ポンペイ』展に押され気味のようで、空いてて見やすいのでぜひぜひ!!!



そして5月には 特別展「琉球」が!

そうなんです。5/3からトーハクで開催予定の 沖縄復帰50年記念 特別展「琉球」。ぜひぜひ!!!
もちろんわたしも行く予定です。歴史のことも文化のことも、まだまだ学んでいる途中なので、楽しみにしています。



まとめ

悲しいですが、正直、なかなか大きな声でお出かけをお薦めできる状況ではないですよね。重々承知しております・・・
それでもわたしは、今このとき 現地へ行かないと観られないもの のためにも、美術館・博物館を応援する意味でも、自分でできる範囲の対策を万全にした上で、一人そっと出かけ続けております・・・

ですので皆さまも、お出かけのご判断は、どうぞそれぞれの事情のもと、ご無理のない範囲でしてくださいませ。
ご自身の体調が万全なのはもちろんですが、各館の公式ホームページ等で最新情報をご確認の上、くれぐれも慎重にお願いいたします。

文化芸術が、すこしでも日々の生活のたのしみにつながったら嬉しいです。

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