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圏論

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#圏論

客観的科学の側をどうレベルアップすると、主観が扱えるようになるのか?

客観的科学の側をどうレベルアップすると、主観が扱えるようになるのか?

Moonshot 9 というプロジェクトは「こころゆたかな社会の実現」というのを目指している。で、私は山田真希子さんのプロジェクトの一員として、多少プロジェクトに関わっている。そこで運営しているSlackで出た話がちょっとおもしろい。

Moonshot9のタイトルとウェブサイトは以下の通り。Moonshot Goal9: Realization of a mentally healthy and

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時限公開販売最後。クオリアと報告の関係性は「随伴」関係? 現象的な意識とアクセス意識の関係性への新しい見方とそこから生まれるあらたな実験パラダイム。

時限公開販売最後。クオリアと報告の関係性は「随伴」関係? 現象的な意識とアクセス意識の関係性への新しい見方とそこから生まれるあらたな実験パラダイム。

(最後は一気に5章から7章までを載せます)5. クオリアと報告の関係性は「随伴」と捉えられるか?4章では、圏論における重要な結論である米田の補題と、それにインスパイアされてデザインした心理物理実験として考えられる例を紹介した。

5章では、圏論が明らかにしたもう一つの重要概念である「随伴関係」を意識研究者や認知科学者に紹介する。「随伴」とは、2つの圏の間にある関係性である。圏論で正式に定義される他

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時限販売その2! 4章: クオリア同士の関係性からクオリアを特徴づける:米田の補題

時限販売その2! 4章: クオリア同士の関係性からクオリアを特徴づける:米田の補題

(4章は、圏論の簡単な解説も入っています)

クオリアを特徴づけるとは一体どういうことか?
クオリアを構造的に特徴づけるとは、一体どういうことだろうか? クオリアという言葉は、少なくとも「狭義」と「広義」、2つの用法がある。[Balduzzi 2009, Kanai 2010]

狭い意味でのクオリアとは、赤いリンゴの「赤さ」を指す場合である。ある一瞬の意識経験におけるなんらかの場所や、意識にのぼ

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初有料記事!(時限公開・販売) タイトル:クオリア構造と情報構造の関係性を圏論的に理解する

以下に載せるのは、「認知科学講座」というシリーズ本をが東京大学出版会から刊行になる予定の本に載せる予定の私が執筆した一章です(いつ出版になる予定なのかは知りません)。

編集は以下の方々:横澤一彦さん(知覚)、川合伸幸さん(比較認知)、嶋田総太郎さん(身体性認知、認知神経科学)と鈴木宏昭さん(認知科学)。

本そのものは、3200円くらいになるらしいです。(一冊に以下のような章が8−9章あります)

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数学者じゃない人が圏論を学ぶ時の勘どころ その2 ー 圏論における図の書き順について

数学者じゃない人が圏論を学ぶ時の勘どころ その2 ー 圏論における図の書き順について

今週Monashでのシンポジウムで、「随伴 Adjunction」という圏論の概念が、意識研究に使えるのでは? というトークを行った。そのトークスライドを準備している時にいくつか気づきがあったのでNoteにまとめておきます。

書き順なしでの随伴の説明まず書き順なしに随伴を説明してみる。それがこのNoteの最初の図だ。
目標は、2つの圏が随伴関係にあるとはどういうことかを説明すること。

ここでは

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数学者じゃない人が圏論を学ぶ時の勘どころ ー 圏論に独特の「定義」

数学者じゃない人が圏論を学ぶ時の勘どころ ー 圏論に独特の「定義」

結論から言おう。私がこれまでジワジワと圏論を学んできた中で「ここ大事!」と思う圏論の勘所の一つは、圏論における概念は「原子模型」みたいなもの(上の図)。原子はそれ自体が他とどうつながるかが重要。水素Hは1本、酸素Oは2本、炭素Cは4本の足を持つ。

同じように圏論の概念はそのものそれだけではなくて、それが他とどうつながるかをあわせた定義になっている。

なので、「積」の定義(上の右の図)は、「A

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